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全てを無に帰す者




 遺跡の奥深く、禍々しい空間が広がっていた。天井も壁も見えないほどの闇が広がる中、その中心に“それ”はいた。


 ――災厄の王。


 王の黒きオーラが辺りを満たし、ただ立っているだけで空間そのものを支配していた。レイたちは剣を握る手が震えるのを感じる。


 「くっ……なんだ、この威圧感……!」


 グレイが歯を食いしばる。Sランク冒険者である彼ですら、まともに動くことすらできないほどの強大なプレッシャーだった。


 「……お前たちが、封印を解いた者か」


 低く響く声。それだけで空気が振動するような錯覚を覚える。王はゆっくりと手を上げると、その掌に黒き炎を灯した。


 「ならば、その罪をもって贄となれ」


 その瞬間、セレネが動いた。サキュバスクイーンとしての強大な魔力を駆使し、精神干渉の術式を王に向けて放つ。


 「ならば、私の魅了を受けてもらうわ……!」


 しかし、王は微動だにしない。次の瞬間、セレネの魔力はまるで弾かれるように逆流し、彼女は吹き飛ばされた。


 「――っ!」


 壁に激突し、セレネが呻く。


 「セレネ!」


 ラスティが叫び、次の瞬間には地を蹴って王へと突進した。獣人の彼女は、その驚異的な身体能力で一瞬にして間合いを詰める。しかし――


 「甘い」


 王の背後から無数の黒き触手が伸び、ラスティの身体を絡め取った。


 「ぐっ……!」


 そのまま床に叩きつけられ、動けなくなる。


 「くそっ……!」


 グレイとカナルがすかさず連携し、剣技と魔法の連撃を叩き込む。しかし、王のオーラがすべてを打ち消し、攻撃は届かなかった。


 レイも動いた。自身のスキル《収納》を使い、王のオーラを吸収しようと試みる。しかし――


 「……駄目だ、吸収できない!?」


 収納の力が発動しない。王の存在そのものが、この空間に根付いているかのようだった。


 戦況は、圧倒的に不利だった。 





――――――


 「我が力の片鱗を見せよう」


 王が手を振るうと、巨大な黒き刃が生み出された。それが振り下ろされると、地面が裂け、闇が広がる。


 レイたちは分断され、個々に追い詰められた。


 「っ……まずい……!」


 瀕死のセレネが呟く。「このままでは……」と絶望に沈む。


 その時――


 「ここから先へは行かせぬ!」


 闇の中から、巨大な影が現れた。それは奈落の門番。封印を守るために存在する番人だった。


奈落の門番が、その巨体を闇の中から現した。身を包む黒い甲冑は長年の戦いの傷跡を刻み、両手には巨大な戦斧を握っている。彼の瞳には燃えるような青い光が宿っていた。


 「……貴様が、封印を破った災厄の王か」


 低く響く声が空間を震わせる。


 王は一瞥しただけで、門番の本質を見抜いた。


 「封印を守るために生まれた存在……か。哀れなものだ」


「黙れッ!!!!」


 王が片手を上げると、空間が歪み、無数の黒き槍が生み出される。それらが門番を貫こうと降り注いだ。


 「ぐっ……!」


 門番は戦斧を振るい、迫りくる槍を弾く。しかし、数が多すぎた。一本、また一本と槍が甲冑を貫き、黒き血が地面に滴る。


 それでも門番は一歩も引かなかった。


 「お前を……ここで止める。それが……我の使命……!」


 血を吐きながらも、門番は渾身の一撃を振るった。大気が震え、衝撃波が王に向かって走る。しかし――


 「無駄だ」


 王は指を弾くだけで、その衝撃を掻き消した。そして、黒き触手を放ち、門番の身体を締め上げる。


 「ぐっ……がぁ……!」


 門番の身体が宙に浮き、次第に軋む音が響く。


王は門番の正体を理解しながらも、その強大な力を前に余裕を崩さなかった。


 門番の攻撃は王に次々と弾かれ、ついには膝をつく。しかし、それでも彼は言った。



 (駄目だ……このままでは……)


門番は王へと立ち向かい、激戦を繰り広げる。その力は王に劣るものの、確かに時間を稼いでいた。


 意識が遠のく中、彼はレイたちの姿を見た。皆、傷つきながらも立ち上がろうとしている。しかし、まだ決定的な力が足りない。


 ならば――


 門番は最後の力を振り絞り、触手を振りほどくと、全身から青白い炎を噴き上げた。それは門番が持ちうるありったけの魔力が込められていた。


「そんなに魔力を渡したら,お前の体は!?」


 「私は…………いいッ!!お前の力を解放しろ……!! 奴を討てッ…!


 彼の叫びが、レイの耳に届いた。


 



 


 


⸻――


レイの全身が熱を帯びる。門番の最後の力が、自分に託されたのを感じた。


 レイの体が光に包まれる。


 「収納とは……ただ仕舞うだけの力じゃない」


 レイは溢れそうな魔力の濁流をなんとか抑えようと前意識を魔力操作へと向ける。


そして、――――本能で理解した。収納スキルには、新たな側面があった。


 吸収した力を解放する力――それこそが、《収納解放》。


 ずっと、そう思い込んでいた。しかし、今は違う。


 「収納とは、存在を隔離する力……ならば!」


 レイは王の攻撃に向かって手をかざした。王の黒きオーラが迫る――しかし、それはレイの手のひらに触れた瞬間、渦を巻くように消えていった。


 レイは王の攻撃をすべて吸収し始めた。


 「な……に?」


 王が初めて驚愕の声を上げる。


 レイの収納スキルが、攻撃を“飲み込んで”いた。


 「収納解放――!!」


 レイが叫ぶと、彼の周囲に今まで吸収した攻撃のエネルギーが溢れ出し、逆流を始めた。まるで濁流のように王へと向かう。


 王の黒き触手が千切れ、闇が霧散する。


 「この力は……何だ……!?」


 レイはゆっくりと王を見据えた。



 王が困惑し、硬直する。


そして、闇のオーラがレイ達を包むこみ、傷を癒した。






 「ラスティ!」


 「おうっ!」


レイの吸収により、空間を支配していた闇の瘴気は消えさった。こうなれば――――“魔法”も使える



 ラスティが渾身の一撃を叩き込み、セレネが魔力で王を弱体化。グレイとカナルが連携し、王の動きを封じた。


 そして――


 「収納解放! 暗黒螺旋!!!!」


 レイが吸収したすべての力を解き放つ。形をなるべる鋭く、そして太く。


そして空間を飲み込むほど形を大きく膨張させると、

急激に螺旋状のように形を変形させた。



――――刹那


“““““ゴォォォォォォォォオオオオオオオオオオ””””



 王の体が飲み込まれ、空間ごと消滅する。


 「馬鹿な……こんな力が……! ふざけるなぁァァァァあああああああああァ………………………」





 


 王の消滅と共に、遺跡は崩壊を始めた。


 門番が微笑む。――――――いや、微笑んでいるように見えるだけだが。


元々レイ達との戦闘で消耗していた体に、災厄の王での傷、そしてレイに魔力を分けたことにより、身体が徐々に消滅してきている。


 「よくやった……。これ…………で、わたし……も、安心…………して……眠れる……。ありがとう………。ああ、主人様、いま……、そちらへ……、向かい………………ま、す」


(主人とは門番の使え主のことだろうか、全てを知ることができなかった。だが、せめてもの気持ちで埋葬をしてやりたい。)


レイは収納で唯一消滅せずに残っていた、指輪とマントを近くの場所へと埋め、黙祷した。




――――よし、帰ろう。








(待て。最後にお主に教えておくべきことがある。)

 


「ッ?!?!」




(レイ、お前にしか聞こえん。お主も知っているだろうが、世界最難関ダンジョンとはいわば、大天災級の魔王を封印するためのダンジョンじゃ。


 だから封印している魔王達から栄養(魔力)を吸い取りダンジョンを拡張させている。


 だが、当然魔王達も大人しく封印されているわけでない。徐々にダンジョンへと適応し、封印を破るつもりじゃ。


封印が破られる前に、ダンジョンコアを破壊すれば―――魔王を殺せる。世界の滅亡を防ぐことができるのじゃ。この世界はお主に託す。そして、久しく会えていない…………他の守護者にもよろしく伝えてくれい…達者でな)


そういうと、完全に気配がなくなった。


(まさか、魔王を封印するためのダンジョンが世界最難関ダンジョンだったとは…。だが、この世界は終わらせないッ!! 俺が必ず、全部の魔王を倒して見せるッ)






 

無事にこれにて完結です。読んでくださった読者の皆様のおかげで完結まで持っていくことができました。ありがとうございます!


この作品の完結と同時に、新作を投稿します。

この作品での反省点などを踏まえて、かなり質の高い作品になったと自負しております。



後悔はさせません!ぜひ一話だけでも読みに来てくださると嬉しいです。よろしくお願いします!!

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