深淵の守護者
無限奈落・最下層の扉の向こうへ
長き戦いの果てに、レイたちはついに迷宮の最下層へと辿り着いた。目の前にそびえ立つのは、巨大な黒鉄の門。
扉の向こうに広がるのは、まるで異世界のような光景だった。
広大な空間が広がり、天井は闇に溶けて見えないほど高く、無数の巨大な鎖が空間を縦横無尽に交差している。その鎖はまるで生き物のように蠢き、時折、闇の中から現れては別の鎖へと絡みつき、重々しい音を響かせる。
中心には黒曜石のような材質でできた巨大な祭壇が鎮座し、祭壇の上には奇妙な魔法陣が刻まれていた。そこから放たれる禍々しいオーラが、まるで世界そのものを侵食するかのように空間を歪ませている。
「ここは……一体?」カナルが震える声でつぶやく。
「ただの最下層の一部とは思えないわね。」セレネが冷静に周囲を見渡す。
「罠の気配はないが……あの祭壇、放っておくわけにはいかないな。」グレイが剣を抜きながら言った。
レイは周囲を確認しながら、慎重に足を進めた。収納スキルを駆使し、いつでも対応できるように装備やアイテムを準備する。ラスティは先陣を切り、素早く周囲の様子を探る。
〈祭壇の封印〉
それを守護するのは、数多の冒険者を退けてきた奈落の門番だった。
祭壇の前に立つと、魔法陣が微かに輝きを増した。すると、闇の中から声が響いた。
「……愚かな者たちよ。――いや、むしろ賞賛すべきか。ここまで辿り着くとは……」
空間が震え、黒い霧が渦巻くように集まり、一つの人影を形作る。その姿は黒き甲冑を纏った男――だが、その顔には表情がなく、ただ深淵のような虚無が広がっていた。
「お前は……?」ラスティが警戒しながら拳を握る。
「我は『奈落の番人』。この門を護る者。」
「門だと? このでかい鎖が門とでもいうのか?
レイが疑問を抱くと、番人はゆっくりと頷いた。
「この先には、奈落の真なる最奥がある。そして、そこには……絶対に解き放ってはならぬ存在が封じられている。」
その言葉に、場の空気が一層張り詰める。
「それってつまり……」カナルが不安げに言葉を続ける。「この先にいる存在は、黒騎士や黄金騎士よりも強いってこと……?」
「あやつらは所詮、戦闘用に作られてはいない。」
番人が静かに言う。
「我の力をもってしても、あの存在を倒すことはできぬ。――――――だが……。お前たちがこの地に辿り着いた以上、試練を受ける資格はある。」
番人が手をかざすと、魔法陣がさらに強く輝き、空間が歪んだ。すると、四方から黒き影が現れた。それは過去に奈落へと挑み、敗れた者たちの亡霊だった。かつての英雄、勇者、魔導士――その魂は闇に染まり、今はただ戦うことしか知らぬ存在となっていた。
「ここでお前たちが試される。もしこの戦いに勝てれば、お前たちは先へ進む資格を得るだろう。」
「望むところだ……!」ラスティが前に出る。
「気をつけて、ただの敵じゃない。」セレネが魔力を込める。
「全力でいくぞ!」グレイが剣を構える。
――――――戦いが始まった。
全身を漆黒の鎧に覆われた門番は、レイたちを睨みつけるように立ちはだかる。だが、怯まない。剣を握りしめるグレイ、魔力を溢れさせるセレネ、拳を構えるラスティ、冷静に状況を見極めるカナル、そして――収納の力を駆使するレイ達は即座に戦闘体制につく。
亡霊たちは圧倒的な力を持っている。元はSランク、あるいはそれ以上の実力を持っていた者たちが、死を超えてなお戦い続けている。彼らの攻撃は鋭く、速く、そして迷いがなかった。
しかし、レイたちはそれに怯むことなく戦った。
ラスティは持ち前の身体能力を活かし、超高速の拳撃で敵を圧倒する。セレネは魅了と幻術を駆使し、敵の意識を揺さぶる。グレイは剣技と魔法を織り交ぜ、冷静に敵を討ち、カナルは補佐として適切な指示を出しながら戦場を支配した。
レイは収納スキルを活かし、状況に応じて必要な武器やアイテムを取り出し、仲間をサポートする。さらに、彼自身も戦闘に加わり、絶妙なタイミングで攻撃を仕掛ける。
戦いは熾烈を極めたが、ついに最後の亡霊を撃破した。
亡霊たちが消えゆくと、祭壇の魔法陣が光を放ち、番人がゆっくりと頷いた。
ついに門番の動きが鈍ったその瞬間、レイたちは全力で叩き伏せ、ついにその巨体を沈黙させた。
――だが、門番は立ち上がることなく、静かに口を開いた。
「見事だ……お前たちには、先へ進む資格がある。お前たちがここまで辿り着き、我を打つほどの力を持つのであれば……災厄の王を封じる力になれるやもしれぬ……」
奈落の門番は、元より封印の守護者だった。彼はレイたちを試し、真にこの戦いを託すべき者かを見極めていたのだ。
そして今、彼は己の力を彼らに貸すと誓った。
門が軋みを上げながら開かれる。
その奥に待つのは、世界を滅ぼす力を持つ災厄の王――
そう言うと、祭壇の後ろにあった壁がゆっくりと開き、さらに奥へと続く階段が現れた。その先からは、ただならぬ気配が漂っている。
「……行くしかないな。」グレイが呟く。
「どんな相手が待ってるのかしら。」セレネが微笑む。
「気を引き締めろ、まだ終わりじゃない。」ラスティが拳を握る。
レイは仲間たちを見渡し、静かに頷いた。
「行こう。」
こうして、レイたちは奈落の真なる最奥へと足を踏み入れた。
〈奈落の真なる最奥へ〉
レイたちは慎重に階段を下りた。
一歩進むごとに、空気が変化していくのを感じる。ただの闇ではない。これは、何かが存在する証――否、それ自体が意思を持つ闇だ。まるで彼らを観察し、試し、飲み込もうとしているかのようだった。
「……嫌な感じがするわね。」セレネが眉をひそめる。
「今まで戦ってきた強敵たちよりも、遥かに底知れない気配を感じる。」グレイが低く呟いた。
「この先にいるのが、その“封印されし存在”ってことか?」ラスティが警戒しながら拳を握る。
カナルは震えながらも、冷静に魔力の流れを観察していた。
「魔力が異常に濃い……まるで、この空間自体が魔法生物みたい。」
その言葉を裏付けるように、壁や床がゆっくりと脈動する。まるで生き物の体内にいるかのような感覚だった。
しかし、彼らは足を止めなかった。
そしてついに、奈落の最奥へと辿り着いた。
そこは、広大な空間だった。
黒曜石の柱がいくつも立ち並び、中央には巨大な魔法陣が刻まれている。魔法陣の中央には、漆黒の棺が鎮座していた。まるで世界の中心に存在するかのような、圧倒的な威圧感を放っている。
そして、棺の周囲には六つの巨大な鎖が張り巡らされ、封印を維持していた。それらの鎖は赤黒い光を放ち、まるで鼓動するかのように波打っている。
「……これが封印か。」レイが呟く。
「間違いない。この棺の中に、何かがいる。」グレイが剣を構えた。
その瞬間、空間が震えた。
――ズン……ズン……ズン……
重々しい音が響く。まるで何かが目覚めようとしているかのようだった。
すると、突然、番人の声が再び響いた。
「ここまできてしまったか……」
振り向くと、先ほど戦った番人が再び姿を現していた。だが、その姿は朽ちかけている。まるで、先ほどの戦いによって力を失い、今にも消え去ろうとしているかのようだった。
「お前たちに最後の忠告をしよう……この封印は破ってはいかん。私とてもやつの封印で精一杯だったんじゃ
「誰も破るなんて言ってないわよ。」セレネが冷静に答える。
「だが、この存在は自ら封印を破ろうとしている。」
番人が棺を見つめる。
「この封印は、もう限界だ……」
その言葉に、全員の表情が一変する。
「じゃあ、このままだと……」カナルが青ざめた顔で言う。「中の存在が目覚めてしまうの?」
番人は静かに頷いた。
「封印を強化する術はないのか?」レイが尋ねる。
「……ない。長い時を経て、この封印は朽ち果てつつある。そして、目覚めようとしている者は、かつてこの世界を滅ぼしかけた災厄の王……」
「災厄の王……?」ラスティが驚きの声を上げる。
「奈落の底に封じられた最強の存在か。」グレイが剣を握りしめる。
その時だった。
ゴゴゴゴゴ……ッ!!
地響きが鳴り響き、封印の鎖が一つ、砕け散った。
〈災厄の王の復活〉
「まずい……!」
番人が叫ぶと同時に、棺の蓋がわずかに持ち上がり、そこから黒き腕が突き出された。
その腕は、闇そのもの。光を吸い込み、存在そのものを塗りつぶすような、異質なものだった。
「……ついに、この時が来たか。」
闇の中から、低く響く声が漏れ出る。その声は、レイたちの心を直接揺さぶるような、不吉な響きを持っていた。
そして、棺の蓋が完全に吹き飛び、中から一人の男が姿を現した。
彼の姿は、人間のようでありながら、どこか異質だった。漆黒の鎧に身を包み、背には無数の黒き触手のようなものが蠢いている。顔には仮面をつけており、その隙間から覗く目は、底知れぬ闇の色をしていた。
「……長き時を経て、ようやく自由を得た……」
男はゆっくりと立ち上がると、レイたちを見下ろし、冷たい声で呟いた。
「お前たちが、この時代の勇者か?」
その言葉に、全員が一斉に戦闘態勢を取る。
「そういうことになるな。」グレイが前に出る。
「貴様をここから出すわけにはいかない!」ラスティが拳を構える。
男は微かに笑い、その手をゆっくりと持ち上げた。
「ならば、試してやろう。」
その瞬間、闇が爆発的に広がった。
圧倒的な魔力が空間を支配し、レイたちの動きを封じるように絡みつく。
「くっ……!」レイが必死に抗う。
「これが……災厄の王の力……!?」カナルが悲鳴を上げる。
「こんなの……これまでの敵とは比べものにならない……!」セレネが歯を食いしばる。
しかし、レイは冷静だった。
「……やるしかない。」
彼は収納スキルを駆使し、最強の装備を取り出した。
「……みんな、ここで終わらせるぞ!」
「おうよ!」ラスティが拳を握りしめる。
「覚悟はできてるわ。」セレネが微笑む。
「……やるしかないな。」グレイが剣を構える。
―――災厄の王との最終決戦が始まった。
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よろしくお願いします。
遂に次話で完結です!!




