迷宮の王座に座すもの
迷宮の王座に座すもの
合流した彼らは、より深層へと進んでいく。
次第にモンスターの強さは増していき、迷宮の構造も複雑化していった。
「――ここが、フロアボスの間か」
グレイが低く呟く。
目の前には広大な大広間が広がっていた。今までの迷宮の構造とは一線を画し、壁や天井は黒曜石のような漆黒の石でできており、鈍い光を放っている。巨大な燭台に灯る青白い炎が、不気味に影を踊らせていた。
「なんか……雰囲気違うよね」
ピンク髪の少女、カナルが不安そうに辺りを見回す。彼女はこの異様な空気を察知し、僅かに身を縮めていた。
「今までのフロアと明らかに違うな……これは、ただの階層主じゃないかもしれねぇぞ」
獣人のラスティが鼻を鳴らし、警戒の色を浮かべる。彼女の野生の勘が、危険を告げていた。
「まさか、レイドボスってこと?」
カナルが尋ねると、グレイは頷いた。
「この圧倒的なプレッシャー……少なくとも、今まで相手にしてきたフロアボスとは比べ物にならねぇ。まるで……部屋全体が意志を持ってるみてぇな感覚だ」
「ふふ……面白そうじゃない?」
セレネは艶やかな微笑みを浮かべている。妖艶な雰囲気をまといながらも、その瞳には獲物を見つけたかのような興味が宿っている。
「さて……どうする、リーダー?」
全員の視線が、レイへと集まる。彼は”収納”という特殊スキルを持ち、数多の魔道具を使いこなす戦闘の要だ。
「……行くしかないだろう」
レイは冷静に答え、ゆっくりと足を踏み出した。
◆◇◆
部屋の中央には巨大な玉座があった。辺りを見渡すが、何もない。
その直後――――――
「避けろ!(んじゃ!)」
グレイとラスティの声をきき、横へと全力で回避を行った。
ズドォン!!
突然、巨大な魔法石が天井から落下し、地面へと突き刺さる。赤黒く光を放った直後――――地面に魔法陣が浮かび上がり始めた。
じわじわと空間中へ魔法陣が広がったかと思った直後、発光した。
――――――――目を開けるとそこには
「……“黒騎士”か」
グレイが呟く。
黒騎士――それはこの迷宮に存在する特異なモンスターであり、幾多の冒険者を葬ってきた存在。
「これは……ちょっと骨が折れそうね」
セレネが苦笑しながら言う。
「まぁ、ぶちのめせばいいだけの話じゃ」
ラスティが拳を握りしめる。
身の丈三メートルを超える漆黒の鎧を纏い、頭には二本の湾曲した角を持つ。その姿はまるで悪魔の王のようであり、ただ存在するだけで空間が軋むような錯覚を覚えた。
「……来たか」
低く、地響きのような声が響く。
「貴様らは愚かなる挑戦者か。それとも、運命に導かれし者か。フッ……ならば試すとしよう。ここを通るに相応しいか否か――!」
玉座の主がゆっくりと立ち上がった瞬間、空気が一変した。
ゴゴゴゴゴ……!
部屋全体が震え、黒い霧のような魔力が渦巻く。それが形を成し、十を超える漆黒の騎士が現れた。
「雑魚から片付けるか……!」
ラスティが低く唸り、一瞬で距離を詰める。その俊敏さは尋常ではなく、まるで稲妻が駆けるかのような動きだった。
「はぁっ!!」
その拳が一体の騎士を砕く。しかし、倒したはずの騎士が黒い霧となり、再び形を成した。
「……なるほどな」
レイが鋭い視線を向ける。
「この騎士たち、倒しても無限に再生する……つまり、本体を倒さない限り意味がない」
「ふふ、それなら……私の出番ね」
セレネが笑い、艶やかな指先を宙に滑らせる。
「――【魅了の眼差し】」
紫紺の瞳が妖しく輝くと、騎士たちの動きが一瞬止まる。彼女の魔力は相手の精神を揺さぶる力を持つ。しかし――
「クク……我が眷属に、貴様の魔力は通じぬ」
玉座の主が指を鳴らすと、騎士たちは再び動き出した。
「ちっ……やっぱり本体をどうにかしないとダメか」
「ならば俺がやる」
グレイが剣を振り上げ、玉座の主へと突進する。しかし――
ズンッ!!
黒い剣が振り下ろされ、グレイの攻撃を受け止めた。その剛剣は圧倒的な重さを誇り、まるで大地そのものを叩きつけるかのような威圧感を放っている。
レイが鋭く息を吐きながら、収納スキルから瞬時に取り出したポーションを飲み干す。彼の傷がみるみる塞がるが、黒騎士の猛攻は止まらない。
このダンジョンの深層で待ち受けていたレイドボス——《黒騎士》は、強靭な肉体と魔法耐性を兼ね備えた、まさに絶望的な敵だった。
「恐れる必要はないわ」
セレネが妖艶に微笑みながら、しなやかな指先で魔力を操る。彼女の魅了の魔眼はすでに黒騎士には通じない。それでも、サキュパスクイーンとしての強大な魔力は健在だ。
「カナル! サポートを!」
グレイの声に、カナルが迅速に反応する。彼女の補助魔法が発動し、仲間たちの動きが一段と鋭くなる。
「これでどうだッ!」
ラスティが唸りながら黒騎士に飛びかかる。彼女の拳が闇を切り裂き、衝撃波が周囲を震わせる。その圧倒的な身体能力は、黒騎士の鎧を軋ませるほどだった。
——だが、黒騎士はまだ倒れない。
「ぐっ……!」
「中々の腕前だ……だが、貴様達では私を倒すことはできぬ」
グレイが押し込まれそうになるその瞬間――
「グレイ! 少し下がって!」
レイが前に出る。彼の手には、一つの魔道具が握られていた。
「【封印の魔晶】――発動」
青白い光が瞬き、空間が震える。その光が黒騎士たちを包み込み、動きを鈍らせた。
「今のうちに……!」
グレイが渾身の一撃を繰り出す。剣が閃き、玉座の主の胴体を深々と切り裂いた。
――ズバァン!!
「ぐぅ……!」
玉座の主が膝をつき、黒い霧が噴き出す。
―――だが
「……ふ、フハハハ……。見事だ。冒険者達よ…だが。まだ、私には届かない――――」
「こいつッ……!」
「まずい……!」
レイが察知した。黒騎士の魔力が急激に膨れ上がる。そして、その兜の奥から不気味な声が響いた。
「……最終解放」
瞬間——黒騎士の鎧がひび割れ、中から異形の腕が伸びた。
「っ!?」
その腕は黒い炎をまとい、まるで獲物を絡め取る蛇のようにラスティへ襲いかかる。彼女は寸前で回避したものの、炎の余波だけで地面が焼け焦げた。
「黒騎士の本気……!」
グレイの顔が険しくなる。最終解放——これはボスモンスターが追い詰められた時に発動する最後の切り札。
「こいつ……まだこんな力を隠していたのか……!」
レイが歯を食いしばる。
黒騎士の魔力は明らかに段違いだった。動きも素早くなり、攻撃の一撃一撃が先ほどまでとは別次元の威力を持っている。
「舐めるなよ!雑魚どもガァァァ
「まるで……闇そのものだな」
カナルが冷静に分析する。
黒騎士は闇の力を極限まで高め、周囲に黒い霧を放っている。その霧が触れたものは徐々に魔力を奪われ、動きが鈍くなる。
「このままじゃジリ貧……!」
ラスティが焦る。
「仕掛けるぞ!」
グレイの号令とともに、全員が一斉に動いた。
ラスティ が正面から突撃し、黒騎士の意識を引きつける。セレネ は闇の霧をかき消す魔法を発動し、カナル はそれを補助する。レイ は黒騎士の隙をついて、最大火力の一撃を狙う。
そして——
「決めるぞ!」
グレイの剣が光をまとい、黒騎士の胸を貫いた。
黒騎士が断末魔の叫びをあげ、剣圧で砂埃が舞う。
「――甘いな、小僧」
砂埃の間から、手が伸びてくる。
「――?!」
反撃を予測していなかったグレイはなすすべもなく。
その手がグレイを貫いた。
――だが。
「――――にせ…もの、か……」
セレネの魅惑魔法による幻覚に、黒騎士はまんまと引っかかった。
最後の気力を振り絞っての一撃だったのか、彼の巨体がゆっくりと崩れ落ちた。
◆◇◆
静寂が戻った広間。
「やった……?」
カナルが呟くと、レイが頷く。
「……ああ。倒したみたいだ」
そして、部屋の奥に新たな階段が現れた。
「これで、先へ進めるな」
グレイが俺の方に腕をかけてくる。
「……次は、もっと強い敵が待っているかもしれねぇな。見事だったぜレイ」
「ふふ、楽しみね」
セレネが妖艶に微笑んだ。
「ご主人達なら問題ないのじゃ!」
「じゃあ、ここで休憩をした後、降るとしますか」
「これはどうする?」
黒騎士の遺品である一振りの剣だった。
「……これは?」
レイが剣を拾い上げると、剣から囁くような声が聞こえた。
「……次の王を選ぶ時が来た」
その瞬間、ダンジョン全体が揺れた——
「「「「「?!」」」」」
全員がまた何かあるのか警戒したが、その後は特に異変が起きるわけでもなかった。
「ここでしばらくのんびり身体を休めたら、下へ降りよう」
そう告げると、各々休憩の準備に取り掛かった。
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