1:前々々世
自分の名前を忘れた何て言ったら人はどう思うだろう。
記憶喪失?惚けてるだけ?いやいや、きっと言えない事情があるんだろ?そんな風に思われるのが普通だろう。
いや名前は何とか覚えてるんだよ、忘れたのは苗字のほうだけ。だって前世のその前の前、前々々世の事なんだもん。
さて、そんな前々々世の俺はというと、ヘイセイ生まれの日本男児で名前はユキノリ、おそらく、多分。
周囲からそんな名前で呼ばれていた気がする。親の顔すら思い出せないんだ。親不孝でゴメンよ。どうでもいい事は覚えてるのに、フレミングの法則とか・・・、あれ右手の法則だっけ、左手の法則だっけ?どっちもあるんだっけ?細かい部分は忘れた。
覚えてる事と言えば、兎に角自分の体が弱かった事だ。
学校の風景も友達の顔も思い出そうとするたびに、病院のベットの周りが浮かんでくる。シルエットしか思い出せない小さな影は、お見舞いに来てくれた友達かもしれない。思い出せなくてごめんよ。
後覚えてる事と言えば、本。
沢山の本を読んだ。
アクションや冒険小説の下りを微かに覚えている。漫画も好きだった。異世界転生モノだって読んだ事がある。やはり体を動かしたいという欲望があったんだと思う。叶わないなら自分の思う冒険をいつか書きたい、そんな風に考えてた辺りで自分の前々々世は終わりを告げた。
前々世辛すぎなのでは?