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帝都アンダーグラウンド

 帝国の城が落下する。

 小さな山ほどもありそうな巨大建築物が、丸ごと大地に飲み込まれていく。


 その様子を城の中にいる俺は見ることができないが、帝国の住民からは見えているはずだ。

 ある意味この世の終わりみたいな光景になっているはずだ。

 今頃は騒然としているだろう。


「一体なにが起こっている!?」


 帝王が慌てて周囲の様子を確認する。

 おそらくは分裂体を駆使して情報を集めているはずだ。

 もっとも、どんなに確認してもわからないだろう。


 太陽の光を遮られて辺りは暗くなり、城の周囲はそそり立つ巨大な壁に囲まれている。


「どこだここは? 転移魔法か? いや、この大きさを丸ごとなんて不可能……。それにこの浮遊感……。城ごとどこかに落ちているとしか……。なんなんだ……貴様一体なにをしたんだ!?」


「それは……」


 言い終えるより先に、落下による凄まじい衝撃が地面を突き上げた。


「ぐあっ!」

「ぐうっ!」


 受け身なんて取れるはずもなく、俺たちは地面の上に投げ出される。


「いてて……。ようやく着いたみたいだな」


「どこだここは。余をどこに連れて行こうというのだ」


「ダンジョンだよ」


「……どういう意味だ?」


「信じられないと思うけど、ここはダンジョンの中だ」


「ダンジョン、だと? 余を馬鹿にしておるのか?」


「城一つを丸々飲み込めるほど超広大な部屋を作り、その入り口を城の真下に出現させた。その結果、城は入り口を通ってダンジョンの中に落ちてきたんだ」


「世迷い言を……!」


 まあ信じられなくとも無理はない。

 俺だって今だに信じられない。


「こんなことをしてどうしようというのだ」


「帝王が何人に分裂しているかわからないが、全員閉じ込めてしまえば取り合えずその点を心配する必要はなくなるだろう」


 帝王が無数に分裂するなら、全部まとめて閉じ込めちゃえばいいじゃない。

 そう言い出したのがエリーだ。

 そこまではわかるんだけど、居場所を探ったりとか細々としたことは面倒だから城ごとダンジョンに落とせばいいじゃないって、その発想どうなの。人間じゃないよ。


 さすがの俺もそんなこと不可能だろうって思ったんだけど、シェイドも準備すればできるとか言い出したし、実際こうしてできてるんだからな。

 さすが魔王。なんでもありだ。

 やっぱ人間じゃないわこいつら。


 王城は落ちた衝撃で一部が崩れたが、大部分がその形を残していた。


 事前に、ダンジョンの床に落下衝撃用の魔法陣を描いておいたからな。

 そのおかげだろう。

 まさか本当に使うとは思わなかったけど、念のために準備しておいてよかった。


 エリーたちに城の外で陽動の騒ぎを起こしてもらったとはいえ、城の中にはまだまだ多くの人が残っている。

 その人たちまで全員潰れてしまうのは、いくらなんでも酷すぎるからな。



 この作戦は、城の中に帝王の分裂体が全員いるということが前提条件だ。

 一人でも城の外にいたら意味がないからな。

 だから絶対に成功するとはいえなかった。


 しかし。


 分裂体は魔力でつながっているため、それぞれが遠く離れることはできない。

 どこかに司令塔となっている分裂体がいるはずであり、それは帝国内で一番安全な城の中の可能性が高い。

 俺との戦いで多くの分裂体を作り出したため、他の分裂体が減った。

 そして最後に、奇襲をかけるため意識リソースを使った結果、大部分の分裂体が維持できなくなった。


 これらを総合して考えた結果、あの瞬間に限り、すべての分裂体が城の中にいる可能性は高いと判断したんだ。

 もちろん絶対じゃない。

 だけど帝王を倒すのに確実な方法は存在しなかった。

 どこかで賭けに出なければならなかったんだ。


 その賭けに勝ったのかどうか。

 それは帝王の表情を見ればわかる。


「おのれ、やってくれたな……!」


 怒りの形相で睨みつけてくる。

 その顔を見れば作戦の成功は明らかだった。


「マスター、作戦は成功か?」


 ダンジョン内はシェイドが好きに移動できる。入り口も作り放題だ。

 シェイドが俺の横に現れてきた。


「そうみたいだな」


「ふーん、こいつが帝王なの?」


「これが新しいペットですか? あまり趣味じゃありませんわね」


 エリーやシェルロットもダンジョンの入り口を通じてやってきた。

 これでこっちは勢揃いだ。


 もはや帝王に勝ち目なんてないが、それでも睨みつけてきた。


「一体なにをしたのかわからないが、これで勝ったと思うでないぞ……!」


 そう言い出した奴はだいたい負けなんだよなあ。


「余の分裂体を全て見つけ出すことは不可能だ。それともここに一生閉じ込めておくつもりか? ここには余だけではない一般市民も大勢おる。戦争を止めようという奴が、まさか無関係な市民を犠牲にするはずはないだろう」


「え、なんで?」


 エリーが不思議そうにつぶやいた。


「戦争で何万と死ぬのを止められるなら、ここでせいぜい数百人が死ぬくらい大した犠牲じゃないでしょ。むしろその程度で済むなんて英雄じゃない」


「人間など愚か者の集まりだ。何人死のうと問題ない」


「ここの人間はつまらないからナー。オイラも構わないゾ」


「全員家畜にしてペット牧場を作りましょう。調教して御主人様に絶対服従させるのです。もちろんそこには私も……ふふ……」


「な……」


 帝王が絶句する。


「なんなんだお前らは……戦争を止めに来たのではないのか……!?」


 悪いな帝王様。

 うちのパーティーはこうなんだよ……。 


「ええと、心配しなくても一般人を犠牲にするつもりはないよ」


「心配してるわけではないが……。そもそもそんなこと不可能だ。この広大な城をすべて捜索するつもりか? それに余の擬態は完璧だ。見破ることはできん」


 帝王は自信満々だったが、それについては考えがある。

 多分一発で全員見つけられるだろう。

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― 新着の感想 ―
[一言] ダンジョン内ならダンジョンマスターの力で把握できそう
[一言] まさかこんな手があったとは?!
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