新たな仲間
「全身が痛い……」
特級スキルを使った俺は、反動で地面に倒れていた。
全身が軋むように痛んでいる。
なにしろ肉体の構成を書き換えてまで放つスキルだ。
そうでなければ発動できないし、負荷にも耐えられない。
場合によってはそのまま死ぬこともあるから、生きてただけラッキーと考えるべきなんだろう。
「サスガご主人、無茶をするナ……」
弱々しいパンドラの声が響く。
魔剣も刃が欠けてボロボロになっていた。
向こうにも相当な負荷がかかったようだ。
むしろ魔剣に負荷が分散したことで俺の命が助かったのかもな。
「無茶をさせてすまなかったな」
「マッタクだ。コノ埋め合わせは後でしてモラウからナ」
「わかったよ」
かなり無茶をしたという自覚はある。
それくらいの権利はあるだろう。
「……ヒヒッ、約束したからナ」
わずかに嬉しそうな声が響く。
なんだかパンドラの性格が微妙に変わったように感じるのは気のせいだろうか。
「特別な絆」とやらが生まれてからのような気もするが……。
埋め合わせって、いったいなにをさせられるんだろうか。
「なにモンスターなんかとイチャイチャしてるのよ」
エリーが俺の頭上に立ちはだかり、ちょっと怒ったような目で見下ろしてきた。
「イチャイチャっていうか、死にかけて動けないんだが……」
「ポーションを持ってきましたわよ御主人様。さっさと飲みなさい」
ポーションのフタを開けて、俺の顔に振りかけようとする。
鬼かな。
「……指の一本も動かない」
「はあ?」
「自分じゃ飲めそうもない。だからエリーが口移しで飲ませてくれ」
「は、はあ!? なんでそうなるのよ!!」
「それ以外に方法はなさそうなんだ」
もちろん嘘だ。
指一本動かないのは本当だが、口はこうして動くからな。
普通に流し込んでもらえれば自分で飲むことはできる。
でも、なあ?
なんかご主人様のこと見下ろしてるし、ここはちょっと再教育も兼ねてな?
「あーこのままだと動けないまま衰弱死してしまいそうだなー。どこかの心優しい女の子が俺のことを助けてくれないかなー」
「……………………………………………………わかったわよ」
……。
…………。
……………………。
「よっしゃフッカーーーーつ!!」
「ポーション飲んだだけでいきなりそんな元気になるわけないでしょ!」
「そういっても、実際なったんだからな。飲ませ方がよかったのかもしれないなあ」
「………………ば、バカ!!」
「ご主人たちは仲がいいナ」
「そ、そういうんじゃないわよ! アタシはイクスの奴隷だから、しかたなく命令に従っただけなんだからね!」
「オイラもポーションを欲しいんだがナ」
「どこに口があるのよ。これでいい?」
ポーションを魔剣の刃に直接ぶっかける。
確かに口なんて無いけど、もうちょっと優しくしてあげてもいいんじゃないか。
「うむ、おかげで回復したナ。アリガトウ」
それでいいのかー。
そうやって俺たちが騒いでいると、やがて倒れていたダンジョンマスターが目を覚ました。
一度は俺の特級スキルで真っ二つにしたものの、その体はとっくに再生している。
ただ意識は失っていたので放置しておいたんだ。
一応動けないようにロープで縛ってはあるが、ダンジョンマスター相手にどれほど意味があるのかはわからないな。
とはいえ引きちぎって逃げ出すようなことはなかった。
ダンジョンマスターはすぐに状況を把握したらしく、そのままの状態でたずねてくる。
「なぜ殺さなかった」
「むしろどうやったら殺せるのか教えて欲しいんだが」
切っても再生するし、全身を粉々にしても平然としてるし、弱点とかないのかこいつ。
とはいえレーヴァテインは破壊したから、戦力はかなり落ちたはずだろう。
意識を失い倒れたのも、その反動なのかもしれない。
「奴隷王のことを知ってるんだろ。そのことを聞きたいんだよ」
「あの男か……」
その声は侮蔑を含むような、だけどどこか懐かしむような、そんな声だった。
「あの男のなにが知りたい」
「そいつも俺と同じ<奴隷化>のスキルを持ってたんだろ。俺はまだこのスキルのことも良くわかってないからな。その辺りの話を聞きたいんだ」
「スキルについては私から話せることはない。私もあの男の奴隷だっただけからな」
「それでもいいさ。どういう人だったのかとか、どういう生活を送っていたのかとか、そういうことを知れるだけでも十分だ」
「……少し長い話になる。ここで話すことでもないだろう」
「そうか。まあ、後で落ち着いてからでもいいよ」
「いずれにしろ、<奴隷化>のスキルは強力だ。この私を凌駕するなど、尋常ではない。使用にはよく注意することだ」
「いやお前全然本気じゃなかっただろう」
ダンジョンマスターは明らかに手を抜いて戦っていた。
もしも本気を出していたら、俺たちなんか1秒ともたなかったはずだ。
「そうだな……おそらく私は、これ以上生きたくはないのだろう。人類を滅ぼす。そんな望みしか持てない自分は、これ以上……」
「そうか。だったらちょうどいい。俺の奴隷になってくれないか」
「……奴隷王というのはみな人の話を聞かないものなのか?」
「えっ、そんなことはない……と思うぞ。俺なんて全然普通だし」
「いや、イクスはイクスで結構アレよ」
「ソウダナ。ご主人はちょっとアレだナ」
エリーとパンドラが口をそろえた。
「えっ、アレってどれだよ」
俺はかなり普通寄りの人間だろ?
パンドラはともかく、エリーにまで言われるのはちょっとショックなんだが。
「奴隷か、いいだろう。その方が余計なことを考えずに気が楽かもしれないしな……。ただし条件がある。人も魔物も、お互い干渉することなく暮らせる世界を作ると約束してほしい」
「わかった。いいぞ」
「……ずいぶん簡単に答えるな」
「もとからそのつもりだったしな。少なくとも俺は世界中のモンスターを滅ぼそうだとか考えてはいないよ」
「ずいぶん優しいご主人様ですこと」
エリーはずいぶん不満そうだ。
モンスターは全て人間の敵だと思ってるからな。
「お前の言葉が口約束ではないとどう証明する」
「証明か……。そうだな。じゃあ<ギアス>を使おう」
「なに……?」
俺とダンジョンマスターの手に紋章が現れる。
それは契約の証。
それに向かって誓った契約は、絶対遵守の力が働く。
「人も魔物も、お互いが争い合うことなく暮らせる世界を作る。そのためにダンジョンマスターは俺の奴隷となって力を貸してほしい」
「……<ギアス>の契約は絶対だ。履行できなければ厳しい罰に襲われる。それをわかっているのか?」
「履行すればいいんだろ? まあ普通は難しいかもな。でも、俺にはこのスキルがある」
空を見上げると、すぐにワイバーンのドレイクが飛び降りてきた。
首筋を撫でてやると、嬉しそうに鳴き声を上げる。
「きゅいぃっ!」
「俺なら人と魔物が共に暮らせる国を作れるはずだ」
「サスガご主人だな。それくらいでないとコッチも手の貸しがいがないけどナ」
「かつての奴隷王もそうだったんだろ? 仲間が多いほど力が増えるなら、そうするはずだ。人も魔物も同じ命なんだ。一緒に暮らせる国があってもいい。友達にだってなれるかもしれないだろ」
「──……」
そのとき、ダンジョンマスターの怜悧な顔にわずかだが変化があった。
まるで遠い日の何かを思い出すような……。
「……そうだな。少なくとも、私とアンはそうだった……」
というわけでダンジョンマスターが俺の奴隷になった。
「そういや名前はどうしようか」
「そうねえ……」
エリーが考えはじめる。
ヤバイ、エリーに任せたらまたロクな名前をつけないぞ。
だけどその前にダンジョンマスターがつぶやく。
「シェイド」
そう答えるその表情はどこか寂しそうでもあり、どこか誇らしげでもあった。
「それが、私の人間としての唯一の名前だ」
これでダンジョンマスター戦も一区切りです。
思ったよりも長くなってしまいました。
次回は多分新しい街に着いてからの話になると思います。
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