封印指定剣技と新たな相棒
封印指定剣技。
それは上級スキルのさらに上、特級スキルと呼ばれるスキルだ。
特定の条件でのみ修得できる超強力な一撃必殺のスキル。
エリーと、ある上級ダンジョンを探索していたとき、たまたま手に入れたアイテムが特級スキルの修得アイテムだった。
最初は気付かなかったんだが、荷物持ちだった俺がそれを手にしたことで覚えてしまったんだ。
しかしあまりに強力なため、普段は使用できないように封印されていた。
対象だけじゃなくて周囲まで巻き込んで破壊しかねないし、なにより使用した本人に激しい負荷がかかる。
未熟な者が使用すれば反動で命を落としかねない。
一度試しに使ってみたんだが、スキルの発動中に意識を失ってしまった。
そして起きたのは三日後だった。
おかげで目を覚ました直後からエリーに使えないだの何だの散々いびられた。
けど、あれってよく考えたら、起きるまでずっと側にいてくれたってことなんだよな……。
まあそれはともかく、危険なので封印されている。
それが特級スキルだ。
しかしそのぶん威力は圧倒的だ。
発動に失敗したにもかかわらず、地上で放たれたその一撃はダンジョンの10階層まで届いていたという。
しかも今は魔剣グラムがある。
ダンジョンマスターといえどもタダではすまないだろう。
だが。
「決め手にかけるな……」
これでも倒せるかどうか。
それだけのプレッシャーを相手から感じていた。
そのとき、ダンジョンマスターが言っていたことを思い出す。
奴はレーヴァテインに「目を覚ませ」といっていた。
俺のスキルが封印されているように、魔剣にも隠された力が封じられているのではないだろうか。
「パンドラ。どうだ」
話しかけると魔剣が震え、すぐに答えが返ってくる。
「我にもわからナイ。コノ剣は人間が持っていたモノを真似しているだけだカラナ」
「それもそうか」
あくまでもこの魔剣は、パンドラが擬態しているだけだからな。
しかし、だが、とパンドラが続けた。
「新たな力を解放するならデキルかもしれナイ」
「それはどういう意味だ」
「ご主人とあの女が特別な絆で結ばれているように、我とご主人も強い絆で結ばれれば、新しい力を解放できるようになるハズだ」
「そう言われてもな……」
エリーとの「特別な絆」は、なんというか、夜にベッドの上で育んだものだ。パンドラと同じことをするわけにはいかない。
「自由をクレ。今はご主人の命令がないと姿を変えられないガ、我の意志で自由に姿を変え、自由に行動できるようにしてホシイ」
「自由に? それだけでいいのか?」
「奴隷を自由にすることハ、それだけ信頼してイルということダ。いきなり自由にしていいのか不安もあるだろうケド、今は目の前の敵をどうにかしないと我もご主人も死ぬのだから……」
「わかった。いいぞ」
「多少のリスクは覚悟で……っていいのカヨ!」
「もちろんだ。何か問題があるのか?」
「イヤ普通はご主人の方が気にするダロ……裏切られるカモしれないトカ……」
「裏切るつもりがあるのか?」
「もちろんないガ……」
「だろうな。それくらいは俺にもわかってるよ」
短い間ではあるが、何度か一緒に戦った仲だ。
それくらいは信頼しているさ。
だけど、なぜだかパンドラから絶句するような気配があった。
「人間を騙して襲うモンスターだぞ、普通は怖がるダロ……なのに簡単に信頼してるナンテ……ずっと気にしてた我がバカみたいではないカ……」
「よくわからんがそれでいいな」
<奴隷化>による奴隷の契約変更は念じるだけでできる。
今までは俺の命令に絶対服従だったが、パンドラに自由に姿を変える権利を与え、自由に行動もできるようにする。
とたんに、手の中の魔剣が踊るように跳ねる。
「ま、イイカ。これで自由になったんダ。相応の働きはしないトナ!」
手の中の魔剣が形を変える。
より大きく、より禍々しく変わっていくと同時に、力が溢れてくるのも感じた。
これが本当の魔剣グラムの力──。
いや、違うか。
生まれ変わった剣を手に俺は立ち上がる。
「いくぞ、魔剣パンドラ」
「……ヒヒッ、いいなソレ」
手にした剣から笑う声が聞こえる。
同時に、掴んだ手のひらを通じで莫大な力が流れ込んでくるのを感じた。
これが新たな絆による力、という奴なんだろうか。
そして確信した。
今の俺に切れない物はない。
「封印指定剣技・解放」
『封印解除・完了。使用申請・完了。肉体構成改造・完了。特級封印スキル・発動準備──完了』
脳内に言葉が流れていく。
力の解放は一瞬。その一瞬のために、肉体すらも改造する恐るべきスキル。
前はここで倒れてしまった。
だけど今は、心強い相棒がいる。
力強く握りしめると、応えるように力強いエネルギーが流れ込んでくる。
全身にみなぎる力が俺の魂を燃やし尽くす。
この一撃を放てれば死んでもいい。
その覚悟と共に発動する必死の一撃。
封印指定の禁じられた技。
絶技。
「──秘剣《刹那一閃》」
一筋の光が世界を分断する。
それは時空を超越した一撃。
因果を超え、過去に向けて放たれる一閃は、避けることも防ぐことも不可能な必殺の一撃だ。
閃光と共にダンジョンマスターの体が真っ二つになる。
神剣レーヴァテインの刀身が、音もなく根元から切り落とされた。
「神剣すらも……。その力、やはりお前は……」
その言葉を残して、ダンジョンマスターの体が再び地に落ちた。




