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時間を手に

「自分の言葉がどう伝わるかを気にするのは大事だよな。

 いいこと言っても、ちゃんと伝わらないと台無しになるし、

 下手したら逆の意味で伝わったりするしな。

 言葉の選び方と、会話の流れを把握する理解力が大事ってわけだ。

 あかねはそのことをちゃんと分かってる。

 あとはそれをうまくしてけばいいのさ。」


「最後のとこは嬉しいけど、

 まだまだ出来てないって事の方が大きくて、喜べないよ。

 そんな凄く重要な事をさらっと言えるなんてさ、私にとっては凄い事なのに、

 まるで当たり前の事の様に言われるとさ、自分がちっちゃく見えるもの。」


「そら、仕方ないだろ、30年近い時間差を一気に飛び越えるつもりか?」


「30年はないもん。

 一気にできるとは思ってないけどさ、感じる差が大きいのは嫌なの、

 小さい方がいい。自分が子供だって感じちゃうからさぁ。」


大人になりたい衝動ってことか。大人を間近に見て、早くそうなりたいと。

比べて自分の幼さを感じてしまうのが嫌なのかもな。そういうのあったなぁ。


「あのな、気持ちは分からんでもないが、

 インストールしてバージョンアップってわけには、いかないからな。

 自力で、少しずつ入力して、更新していくしか方法はないんだ。

 焦らなくても、あかねは優秀だぞ。同世代の子よりは、相当な。」


「他の子との差なんてどうでもいいんだよ。

 私が見てるのはカクさんとの差なんだよ。

 その差が大きいのが嫌なんだってば!」


「そうか、なら尚更、更新を繰り返すしかないな。

 手伝ってやるから、それで機嫌治せ。」


そのくらいの事はしてもいいだろう。

成長したいっていうなら、手伝ってやるべきだしな。


「やった! 約束だよ。途中でやーめたとかナシだからねっ。」


「わかったよ。けど、途中ってどこだよ。じゃあ、最後はどこなんだよ。」


「! そ、それは… 最後は最後だよ! 私がカクさんに追い付くまでだよ。

 それまでは止めたらダメだからねっ!」


「かぁー、30年かかっちまうじゃねぇか。それ。」


「そんなに掛からないもん! あ、や、それでいいや。

 うん、やっぱりそのくらいの時間が必要だよね。」


「どっちだよ。まぁなるべく早めにな。」


「それはカクさんの教え方次第じゃない?」


「違うだろう? あかねの努力次第だろう! あかねが言い出したんだろう。」


「違わないよ。手伝うって言い出したのはカクさんだよ?」


「ぐっ、確かに手伝うと言ったのは俺だけど、

 教え方より本人の頑張りの方が重要だろ?」


「モチベーションを上げるのは教える側の仕事だと思いまーす。」


「一理あるな… まあいい。ここは折れておいてやろう。」


「ふふっ、カクさん、優しいね。」


「はいはい、俺の主張を押し通す場面じゃないからな。

 あかねの成長が優先事項だしな。」


「よしっ契約成立ね。」

こういう時、本当にいい顔するんだよなぁ。会心の笑顔とでもいうんだろうか。


「じゃあ、早速アドバイスをしてやろう。焦らないこと。これ大事。

 気持ちばかり先走ると、周りが見えなくなっちまうし、

 勝手な思い込みとかするからな。」


「それ分かるかも。

 勝手な思い込みって、冷静に考えたら違うって事でするもんだよね。

 特に人伝に聞いた話とか、本人に確かめないで信じちゃうとかさぁ。」


「そうだぞぉ、俺の話だって、自分でもう一回調べてみるくらいの方がいいぞ。

 ウソ付いてるかもしれないからな。」


「警戒心だね。ちゃんと覚えてるよ。

 そういえばさ、カクさんに言われてから、意識するようになって、

 クラスメートの態度とか見てるけど、警戒心て、みんな持ってないよね。」


「そうだろうなぁ、社会人だって、あんまりいないからなぁ。」


「自分が危険な目に合うって事を想像できない人が多いんだね。

 それはね、わかったよ。カクさんの言ってた通りなんだなって思ったよ。」


「お、確認したんだな、偉いエライ。

 さっそくバージョンアップしてるじゃないか。」


「そりゃ確認するよ。

 だってさ、カクさんが私の事を心配して言ってくれたことだしね。

 対人関係だけじゃなくて、事故とかにも合いたくなかったしさ。

 折角教えてくれたのに、台無しにするのイヤだったから。」


「知識や情報も感情と一緒だと、覚えるし忘れないもんだよな。」


「あ、それも分かるかも。すっごい楽しい時はさ、聞いた話とか忘れないけど、

 つまんない時は全然覚えてないんだよねぇ。」


「気持ちの籠った言葉は届きやすくなる。

 というか、聞く側には伝わって来やすい。

 だからこそ、言った人の考えてるのと違う意味で取られる事も多い。

 特にすぐに決め付ける人や、話を聞かないタイプの人にはな。」


「言う人も、聞く人も感情が影響するってことね。

 言われてみれば、確かにそうかも。

 そういう風に意識したことなかったけど。」


「ちなみに、言葉は音楽とセットだと、言葉だけより更に覚えやすい。

 だから、名曲ってやつの歌詞はみんなが覚えてるのさ。」


「しかもいい曲だなぁって感じて聴いてるから、効果が倍増するってワケね!

 ねぇカクさんはさ、どうしてそういう事が分かるの? 何かで読んだの?」


「んー。理由を考えるのが好きなんだよ。なんでもかんでも。

 この人は何故、今この行動をする? 何を考えてその選択をした? 

 こっちの方がいいのに。って

 そんな事を考えるようになって、それからからなぁ。」


「それって、恋愛から? それとも仕事から?いくつぐらいの時から?」


「最初は仕事かなぁ、仕事ってさ、効率が良い方がいいんだよ。

 で、俺から見て、効率の悪い選択を態々しているなぁって

 見ていて考えるようになったかな。3年目くらいか、25歳とかかなぁ。」

 

「本人に聞いたりした?」


「後輩とかには聞いた。教える立場だと聞きやすいしな。

 こうした方が効率がいいと思わないかってさ。

 上司や先輩にはダメ出ししてるみたいになるから、あまり聞けなかった。」


「あまりって事は、聞いたこともあるんだ?」


「あぁ、すごく尊敬できる人でな、仕事もできる。その人には聞いた。

 いい意味で単純な興味で。

 この人なら態々効率の悪い選択はしないはずなのにって思ったからさ。」


「そしたらなんて返ってきたの?」


「よく見てんなって、驚かれたよ。

 その人は次の次の仕事の事を見据えてたんだよ。

 だから傍から見ていた俺には、分からなかったってわけさ。」


「その人もすごいけど、 … 気付いたカクさんもすごいと思うよ。」


「ま、その時にこういう物の見方もアリなんだなって思ったのは確かだな。」


「仕事以外ではどうだったの?」


「仕事以外かぁ、自分の気持ちとかは分析してたな。

 なんで、今、俺はこんなに幸せな気持ちなんだろう。

 なんで、今、俺はこんなに頑張れるんだろう。

 なんで、今、俺はこんなに落ち込んでるんだろう。

 なんで、今、俺はこんなに無気力なんだろう。

 とかかな。これやってるとさ、自分の事ちょっとわかってくるんだよ。」


「それ私もやってみる! どうやったらいい? コツとかは?」


「どうって言ってもな、自分と会話する感じ? 

 ずいぶん幸せそうだな、どうした?って、自分に聞いてみる。

 あぁ、すげー好きな人ができたんだよって返ってくる。

 あぁ、だから幸せなんだ、で、どこが気に入ってるんだ?ってさ。

 それをやってくと、より細かい事まで分析できていくんだよ。」


「それで、それで?」


「友達に聞くみたいに自分に聞いてやるんだよ。切っ掛けはなんだったか、

 なんて言われた時嬉しかったか、どう感じたのかって。その答えを考えると、

 あぁ、そうか、自分はこう感じていたんだなって気付いたりするんだよ。」


「私はねぇ、

 なるべくたくさんの君を知りたい。って言われたのが嬉しかったんだぁ。」


「人間誰しも承認欲求ってのがあるからな。」


「私の名前を綺麗って言ってくれたのも、

 大好きだって言ってくれたのも嬉しかった。」


「実際、美しい名前だと思うぞ。

 音の響きも、漢字も、意味も、花言葉だって。」


「花言葉も覚えててくれたんだ?」


「あぁ、あかねの気持ちそのものだろう? 『私を思って』。」


「!! な、なんでそう、お、思ったのかな?」


「単純な話、ほぼすべての女性は、誰かに思ってもらいたいんじゃないか。

 もちろん誰でもいいわけではないだろうが。純愛要素はみんな好きだろ?

 特に10代女子にそう思わない子がいるとは考えにくい。

 ましてや、自分を主人公にした小説を書いて欲しいと、

 それを言える子が思われたいと思ってないなんて、、

 ほぼ有り得んだろうよ。」


「それにな、誰だって自分の事を、

 誰かに見ていて欲しいって思って生きているんだよ。

 あかねだってそうだろ?」


「うん。見ていて欲しい。知っていて欲しいって思いあるよ。

 私のことを理解してくれてるって、そう思える人が側にいて欲しい。」

 

「そう、みんな思っていることだから、そう言っていいんだよ。

 親しい人にはね。

 この人に見ていて欲しいと思えた人がいたら、

 素直にその思いを伝えればいいんだよ。あ、でも

 あかねの年齢でそれ言っちゃうと、告白してるのと同じになっちゃうか。」


「好きじゃない人に見ていて欲しいなんて、思わないよ…」


「確かに、そうだな。

 好きでもない奴から、見てるよなんて言われるのは嫌だよな。」


「カクさんはどうなの?」


「どうってどれがだよ。」


「誰かに見ていて欲しいって、思わないの? 見ていて欲しい相手はいないの?

 見られてイヤな相手はいないの?」


「俺にはいるもの。昔っからの仲間が。なんでも知ってる仲間がさ。」


「羨ましいな。その人達も、カクさんも。

 私にはそこまで言い切れる相手はいないから…」


「何言ってんだよ! 今はまだいなくてもいいんだよ。これから作るんだよ。

 俺の仲間だってみんな高校の同級生なんだぜ? 

 ここから続いていく相手が現れるんだよ。」


「どうしたらそんな風に思い合えるようになるの? 

 カクさんはどうしてきたの?」


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― 新着の感想 ―
[良い点] ほのかな想いを気付いてもらえないあかね心情。 [気になる点] >こういう時、本当にいい顔するんだよなぁ。会心の笑顔とでもいうんだろうか。 こういう文章がセリフの間にもっともっと欲しい。 …
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