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ぽかぽかした昼前。草花がそよ風に揺れ、木漏れ日が地面を照らす。
そんな風景の一角。木々の陰になった茂みの中に、どす黒く変色した血にまみれた一匹の大きな狐が横たわっていた。
銀の毛並みもすっかり荒れ果て、切り傷や刺し傷が至る所にできていた。自慢であろうその大きな耳も今や力なく萎れていた。
思い出すのは、人々が向ける怒りと憎しみの目。特別、自分が悪事を働いたとは思わない…いや、この怪我を負ったのも、自分が原因だから、あながち間違いではないのかもしれない。
闇夜に紛れあちこち走り回り、追い詰められては攻防を繰り返した。命からがら町から逃げ出し、ひたすら走り通した。気づけばすっかり日はのぼり、全身傷だらけ。幸いなのは、つるし上げられて死なずに済むことか。
もとより、生に対する執着が強いわけではない、が、あんな奴らに衆目の面前で殺されるのはまっぴらだ。
本当はもう少し遠くに逃げておきたい。
けど、さすがに体力の限界。少し休まないと。
大きな狐は、痛みに耐えるようにしながら小さく伸びをし、そっと全身の力を抜いていった。
休日の八時過ぎ。
ベッドに寝ころびながら、お気に入りのネット小説を確認する。更新が確認出来たら、新規開拓するために、検索キーワードをあれこれ考えていた。
自分も異世界に行って、小説の主人公よろしく冒険してみたい。きれいな女の人や、エルフ、そして獣っ子たちと触れ合いたい。
そんなことが起こりうるとは到底考えていないけれど、やっぱりあこがれは捨てられなくて。
「もうこんな時間か」
時計を確認し、出かける用意をする。
今日は久しぶりに帰ってきた友達と会う予定だ。
ジーンズに長袖シャツ。財布とスマホ。
男は扉を開け、いつも通りの日常生活に戻っていった。
小さな川のほとりで一人の男が倒れていた。
やがて男は、まぶしそうに眼を開けながら体を起こす。
「どこ…ここ…」
男はそう、つぶやくしかなかった。周りを見渡せば、小川と森…と、青い空。
先ほどまで自分のいた環境と違いすぎるため、頭の中が混乱してくる。
呆然と佇む男の頬を、そよ風が撫でる。
落ち着け、深呼吸だ。
数回深く深呼吸。もう一度あたりを見回す。
きれいな花、見たことのない植物。澄んだ空気、清々しい青空。気が付いたら知らない場所…。これらを足し合わせて導かれる答えはなにか。
男の脳内は、次第に混乱から、歓喜へと変わっていく。
もしかしなくても、来ちゃった!?異世界に!?
結論を出すにはやや早急だと思うが、男の中ではすでに結論が出ていた。そうなれば、男のやることはただ一つ。
「いよっしゃああああああ!!来てやったぜぇぇぇ!!」
空に向かって大声で叫んだ。人生でこれほど叫んだことはない、というほど叫んだ。
しかし、男は失念していた。ここが、想像する通りの異世界ならば、危険度は現代のそれと比較できない。
しかも、知らない植生、現代の知識がまるで通用しない世界。これから訪れる数々の困難を想像できないでいた。