空飛ぶメロンパン
メロンパンが空を飛んでる。
「何故だ。」
私は思わず呟いてしまった。
メロンパンはプカプカと海に浮かぶブイの様に空を泳ぎ、私の目の前までやってきた。
大きさも見た目も普通のメロンパンだ。しかし、少し違ったところは、そのメロンパンには小さな窓があった。
私は小指で小さく、トントントン、とノックした。数秒後、ガチャ、と窓が開いた。
「メロンパンはいかがですか?」
ひょっこり顔を出したのは、ふわふわのパン生地の様な毛並みをしていて、猫の様な可愛い耳を生やした見たこともない、白い生き物だった。
「あなたメロンパンを売っているの?」
私は朝食を買いに行くのが面倒だな、と思い、ベランダで一服しているところだったので、丁度お腹が空いていた。別段メロンパンが大好き、という訳でもないのだが売っているのなら買ってみようかな、という感じだ。
「メロンパンを売っています。」
白い生物はヒマワリの様な笑顔で答えた。
「じゃあ、一つ頂こうかしら。」
と言いつつ私は、このふわふわの生き物から買うメロンパンは衛生上大丈夫なのだろうか、と考えていた。
「はい。今回は無料であげます。手を出してください。」
そう言って白い生き物はビー玉くらいのベージュ色した塊を私の手の平に乗せた。
「あら。メロンパンじゃないの?」
私は予想外の出来事に、マヌケな声を隠しきれなかった。
「これはメロンパンのタネです。植えるとメロンパンがなります。それでは。」
そう言うと、白い生き物は、ペコリ、とお辞儀をして窓を閉めた。
そして、メロンパンは、プカプカと優雅に空を泳ぎ、雲の中に消えていった。
私は植木鉢にタネを植えたところで、いつ芽が出るのか聞いておけば良かったな、と思った。
そろそろ本格的にお腹が空いてきたので、朝食を買いに出かけようと思う。
今日はメロンパンにしようかな、と考えながら、私はふわふわした白い雲を、ぼーっと眺めていた。