夜明け
【町】
パカパカ パカパカ
私達は歩くと距離があったので馬に乗ってきた。
『確かあそこの店だわ。』
「ねぇ、柚姫、この国は大丈夫よね?」
『・・・・・』
「他の世界に行かなければならないという事は国が滅ぶ事だと龍牙がいってたわ。」
『・・・・・』
「どうするの?」
『どうしようもないのよ・・・』
「どういうこと?」
『あの人達はもう死んでいるから・・・』
「そんな!?」
『この国に着く寸前夢を見たの。お父様が言っていた異世界の何かが干渉してくる夢を。
そいつらは黒い服着て人間のような感じだけど、動きが人間じゃなかった。そしてあの人達を殺し、この国を滅ぼして・・・』
「滅ぼして?」
『お父様がやったようにこの国を滅ぼす以前の状態に戻した。』
「じゃあ秋宮さんや竜次さんは・・・この国の皆はもう亡くなっているというの!?」
『そういうことになるわ。』
「でも何故わざわざ?」
『私達、いえ、私はこの結末をこれから見るの。』
「そんな辛い事がわかっていながらこの国に冷静でいられたの?」
『だってお母様を休ませたかったし、あいつ等の情報を掴みたかったからね。』
「ありがとう。」
『ううん。』
「それで何の為に?」
『たまに感じる視線から思うに、私達を殺すためか、精神的に壊すつもりね。』
「じゃあ・・・」
『そう。今私達はあいつ等の手中にいて遊ばれているわけ。』
「・・・質問していい?」
『ん?』
「この世界が滅んだらここで手に入れたものはどうなるの?」
『どうもしないわ。ここで生きた人は無に還るけど私達は生きているから身につけてる限り消えることは無いから心配しないで。』
「・・・わかったわ。行きましょう]
『うん』
【店】
カラカラ・・・
『おじさん、懐中時計ありますか?』
「ちょいと待っててくれや。」
『はい。』
パタパタ
「これなんかどうだい?」
『そうね。これにする。』
「買ってくれてありがとよ!!」
『おいくらですか?』
「1090円だが、珍しいもん買ってくれたから970円でいいわ。」
『そんなっ・・・』
「いいってことよ。」
『ありがとう。』
「おうよ。ありがとさん」
柚姫達は悲しさと嬉しさが混ざった心で これか見るであろう悲惨な光景の場所に帰っていくのだったーー
.
同時刻竜次達は---
「柚姫さん達は大丈夫かしら・・・」
「心配しなくても柚姫殿は強いから何かあっても対処できる」
「ならいいけどそれにしても遅すぎるわ。」
「(はぁ・・・)そんなに心配なら俺
ドーン!! ドーン!!
何だ?」
ガタガタ
「外を見てくる。ここを動くな」
「はい!」
【町】
「なんだこれは・・・
一体何が起こったんだ・・・
夢でも見てるのか?」
明るい声が飛び交っていて皆の元気な姿が見えていたはずだった---
しかし
地面は所々黒く焦げ血の海が広がっていた---
はっとして周りを見れば沢山の人が倒れていた。
「秋宮殿!!」
竜次は状況把握した後急ぎ宿に戻ったのだった。
【宿】
「少しならいいよね?」
秋宮は少し窓を開けた。目に映ったのはーーー
(黒い服・・・人間じゃないような感じだけど、人間よね?)
秋宮がつぶやいていると黒い服の者達は分散し、異常な速さでその場にいた人達を殺し始めた。
「ひっ。」
秋宮はガタガタ震えだした。
「竜次さん・・・柚姫さん・・・燐様・・・助けて・・・たす・・・」
バン!!
「きゃっ。」
「秋宮殿、無事か!?」
「あ・・・はい。あの、柚姫さん達は?」
「見なかった。はぁ・・・何なんだ、あいつらは。町もひどいことになっていた。」
「怪我は?」
「怪我?あぁ大丈夫だ。心配ない。裏道通ったからな。」
「そう、良かった。お2人は大丈夫でしょうか・・・。」
ーその頃ー
柚姫と燐は宿までくる道の悲惨な様子に心を痛めていたーーー
「何なの?これ・・・」
「お母様、目を閉じてて。移動するよ。 」
「う、うん」
シュン
柚姫達は転移した。
フォン
ダダダダダダ
カキン
「くっ。移動したのにこっちにもいるなんて!!
それになんて強い力なの。・・・ 馬!!」
ヒュー
柚姫は魔術で馬を呼び寄せた。
「お母様、早く馬に乗って!!」
「柚姫は?」
「先行ってて。後で追いかけるから!!」
「わかったわ。気をつけて。」
「んじゃ、道をあけるよ!!
『真空の神よ、この白百合 柚姫を主に仕えるものよ、道をあける為に力を貸せ』
『真祓・紅楼!!』
ビリリリ ドガガガ
一つ唱えると燐の前方の敵が真横に吹っ飛ばされた。
『地の神よ、この白百合 柚姫を主に仕えるものよ、お母様の盾になる為に力を貸せ
『鏡祓・鐘黎!!』
キーン
唱えると柚姫の前に壁ができた。
(二つ一度に使うとさすがに疲れる・・・)
「追え!!」
柚姫が命令すると魔術が走っていく燐を追っていった。
「さてと片付けますか・・・」
そう言い、柚姫は隠していた剣の布をはずしたのだったーーー
ー二刻後ー
「ふぅ。疲れた・・・ってお母様大丈夫かな。」
シュン
柚姫は宿まで移動した。
【宿】
一方、竜次達は苦戦していた。
「はぁはぁ・・・秋宮殿、下がっていろ。
・・・こいつら、何故倒れないんだ・・・」
竜次は致命傷は受けていないものの、全身傷だらけの上、体力の限界だった。
バッ
(!!・・・もう駄目だ・・・)
相手が腕を上げ、竜次があきらめた時ーーー・・・
ガンガンガン!! バン!!
「竜次さん、秋宮さん無事!?」
壊した壁から出てきたのは母と共に帰ってきた柚姫の姿だった。
「柚姫殿!!無事だったか。良かった。 」
「もう限界でしょ?代わるわ。お母様も下がってて。・・・その様子だと相手の弱点はなさそうね。」
「ああ。ただ剣が通用しないんだ・・・」
「そう・・・だったら剣以外なら倒せるのね?」
「そうだな。後は頼む。」
「了解☆」
少し会話したあと後ろに下がり、治療をした。
(ひどい傷だわ。こんな傷で秋宮さんを守りながら戦うなんて・・・)
「許さない・・・」
「秋宮?」
空気が変わったので柚姫を見れば何やら柚姫の背後に黒いものが漂っていた。 その黒いものに竜次は寒気がした。
「・・・・・・・」
「柚姫?」
「・・・・・ない」
「・・・・さない」
「許さない!!!」
ボキッ バキッ
柚姫は物凄い形相で手を鳴らしながら相手を睨んだーー
『よくも私の仲間をボロボロにしてくれたなぁ』
『覚悟しろ!!』
そう・・・柚姫は普段は冷静だが【キレる】と怖い上、言葉遣いが変わるのだ!!
「秋宮殿、あれ柚姫だよな?」
「はい・・・でも」
((別人に見える・・・))
2人揃って同じ事思ったのだが、燐は
「久しぶりに見たわ(笑)」
と涼しげな顔をしていたのであったーーーー
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『全員、まとめてきなさい!!』
「-------------!!」
相手がかかってきたのと同時に両手を合わせ唱えた。
『滅祓・空蝶宝来!!』
ドカンッ
柚姫が唱えた途端、数匹の蝶が舞い、物凄い広範囲で爆発したーーー
『ふぅ。すっきりした^^』
「柚姫殿・・・」
『ん?何?』
「いや、なんでもない。」
『そう。手当てするわ』
「あぁ。頼む」
(言えない・・・別人に見えるなどと言えば怒るかもしれぬしあの様な柚姫は見たくないからな)
竜次がそんなことを思ってるとは知らずに柚姫は竜次の手当てをしていたのであったーー
.
『さ、終わったわよ。』
「あぁ。すまぬ。」
『気にしないで。』
「・・・ありがとう」
『うん^^』
「もう行くのか?」
『そうね。もう夜明けだから行かなきゃ。お母様準備は?』
「できてるわ。」
『秋宮さん、竜次さん今までお世話になりました。』
「ありがとうございました。お元気で。」
「こちらこそありがとうございました。」
「こちらも世話になった。身体に気をつけてな。」
『じゃあ行くね。転渡・紫麗鴉』
フォン
挨拶もそこそこに転移をし柚姫と燐は呼ばれた世界へと消えたーーー
残酷な未来が待っている柚姫・・・
それを知りつつ行動するも時既に遅し。
悪魔の手の上で遊ばれるのはいつまでか・・・