トレニア
(一週間後)
「一週間も外に出るの我慢させて悪かったわね。」
『ううん。気にしないで。それよりもう身体は大丈夫なの?』
「ええ。十分に休んだおかげで良くなったわ。」
『そっか。じゃあ外に出てみようか。竜次さん、秋宮さんに出かけると伝えてくれない?』
「承知した。」
シュタッ
「!!・・・柚姫、竜次さんって?」
秋宮さんに伝言を伝える為に秋宮さんを呼んだことに驚いた母に私は竜次さんの事を説明した。
『ーーーっていう訳なの。』
「話はわかったわ。後で肩掛けのこと神門さんにお礼言わなきゃね。」
『うん』
コンコン
『どうぞ。』
「失礼する。秋宮殿をお連れした。」
『ありがとう。』
「燐様、もう身体はよろしいのですか?」
「ええ。ご迷惑おかけしました。神門さんも肩掛けありがとうございます。」
「いや、礼を言われる事はしていないが気持ちだけ受け取っておく。」
「そうしてくださいな。」
「では、私達は仕度をしたら玄関にいますので用意が整いましたらお越しください。」
『わかりました。』
「失礼します。」
「失礼する。」
ガラッ
スー
二人が出て行ったあと私達も仕度しにかかったーー
『お待たせしました。』
「迷いませんでしたか?」
「ええ。この建物はわかりやすくとても広いんですね。」
「ああ。」
「さ、行きましょうか。案内します。」
『ありがとうございます。』
「お願いします。」
「あ、どういう所に行きたいとかありますか?」
「いえ。」
「秋宮殿、あそこに行くのはどうだろう。」
「それはいいわね。この国の象徴にもなっているし、国の中心だものね。」
「ああ」
『あの・・・どこに行くんですか?』
「秘密だ。ついてくればわかる。」
『わかった。』
テクテク・・・
テクテク・・・
柚姫と燐は何処に行くかもわからぬまま竜次達についていったーー
テクテク・・・
テクテク・・・
シーン・・・
テクテク・・・
テクテク・・・
『結構遠いのね。』
「ああ。この国は広い故こうして歩かなければならぬのでな。すまぬ。」
『気にしなくていいよ。』
「もう着きますのでお疲れでしょうが頑張って下さい。」
「はい。」
テクテク・・・
「あれです。」
長い道のりを歩き、秋宮さんが指した方向を見るとーー
サーーー
『噴水??』
「綺麗・・・」
柚姫と燐が見たものは太陽の光と沢山の色にあてられたとても美しい噴水だった。
「美しいでしょう?」
「ええ」
『まるで幻みたい。』
「この噴水は別名【幻崇水】 といってな年に一度拝みに集まるんだ。 」
「何故ですか?」
「この噴水に神が宿っていて平和の神と拝まれているんです。」
『へえ。』
「貴女方の国では何かこういうのはなかったのですか?」
「賑やかで盛んな国でしたがそういうのは何も・・・」
「そうでしたか。でも行ってみたいです。貴女方の国に。」
(お父様・・・)
【行ってみたい】という言葉に私達が表情を暗くしたことに気づいた竜次は
「秋宮殿。」
「あ、ごめんなさい!」
『いえ、良いんです。・・・私達の国は滅んでしまってるんです。それでこちらの世界に・・・』
「移動したのか。」
「はい。」
「そうでしたか・・・すみません」
『別に気にすることはありません。他国に行きたいと思うのは当然のことです。 』
ザワザワ
「『!!!(何か近づいてくる)』」
「なんか木がざわついてきましたね。」
「あぁ。秋宮殿馬を用意してくる。柚姫殿、少々頼む。」
『了解。』
タンッ
パカパカ
「連れてきたぞ。秋宮殿乗ってくれ」
『お母様も。』
「「え?」」
『「早く!!」』
二人の声に秋宮さんと燐は急いで乗った。
「早馬だ。しっかり手綱を持っていろ」
「は、はい!!」
「お二人は?」
『後からちゃんと追いつきます。』
「することがあるのでな。では。」
パシンッ
ヒヒーン
パカッパカ
『さてと、やりますか』
その一言を境に私は紐を懐から出し髪を下の方でまとめた。
「その髪紐・・・・」
『出かける時って言ってたから』
「何故門前でつけなかったのだ?」
『貴方がくれたものだから貴方の前でつけたかったの。』
「///・・・礼をいう」
『どういたしまして。さ、のんびりしてる場合ではないよ』
「あぁ。ニ、三十人程・・・囲まれたな」
『先に馬で逃がして良かった。人の足では追いつかれる可能性があるし』
「お前達余裕だな・・・俺達に囲まれてるのに平気で喋るぐらいに」
『ふふっ。久しぶりにやりますか』
「久しぶりなのか?」
『うん。ずっと魔術だけだったから。』
「剣は使わなかったのか?」
『相手は雑魚じゃなかったからね』
「じゃあ今回は楽だな」
『うん』
「何ぺちゃくちゃ喋ってんだこの野郎!!」
ブンッ
ヒョイ
ブンッ
ヒョイッ
「何してる、さっさとやれ!」
「チッ。全員でかかれー!!」
チラッ
「おい」
『あちゃー。了解☆』
バキッ
ガッ
キンッ
一言と目線で二人は倒しにいった---
ガキッ
キン
キン
ドサ
ドサドサ
『ふぅ。終わったねー』
「あぁ」
『さ、帰ろう?』
「とどめは刺さないのか?」
『え?』
「全員気絶させただけだ。また追ってく
るかもしれぬぞ。」
竜次の言う通り二人は気絶させただけで誰の命も取ってはいなかった。
『別にいいんじゃない?雑魚だし』
「そうか。」
『うん。行こう?お母様達も心配だし。』
「あぁ。馬を連れてこよう」
『よろしく。』
パッパカパッパカ
パッパカパッパカ
「も、もう馬を歩かせません?息があがってるようですし、私も疲れました。」
「あ、ごめんなさい。そうですね」
パッカパッカ
パッカパッカ
「にしてもあの者達は何者でしょうか・・・」
「大丈夫ですよ。心配しなくても柚姫さんも竜次さんも」
「ありがとうございます。」
「さ、行きましょう」
「はい」
<一時間後>
『ただいまー!!』
「今戻った。」
「お帰り柚姫。お帰りなさい、竜次さん」
「大丈夫でした?」
『はい。余裕でした。』
「弱かったしな」
(シャラン・・・)
『!!・・・お母様』
「・・・コクッ、わかったわ。」
「どうした?」
『もう行かなくちゃ・・・』
「柚姫、何か必要なものはない?」
『あ、時計を買いにいくわ。』
「何故時計なのですか?」
『旅に必要なんです。』
「俺が一緒にいこう」
『いや、母と私二人でいいわ。もしもの為に秋宮さんの傍にいて?』
「・・・承知した。」
「何か話がよくわからないんですけど説明してくださらない?」
『私は夢見なんです。』
「夢見って何ですか?」
「未来を予知する能力がある人のことです。」
『そして自らの魔術でも見れるですが、たまに頭の中で走馬灯のように映るんです。そうなった時は急ぎその世界に行かなければならないのです。』
「あんた達の世界では夢見が沢山いるのか?」
「いえ、柚姫だけです。そろそろ行きましょう、柚姫」
『うん。話はこれでおしまいです。んじゃ行ってきます。』