想い
<書斎にて>
「柚姫殿は強い。手合わせ願おうか・・・可愛いし美人だがあの武器の数、只者じゃ無いはずだ。」
竜次がそんなことを心に秘めているなど彼女は知る由もなかった。
<部屋にて>
同じ頃ーー
『この国にいくら護衛の忍がいるとしてもあの未来がいつかもわからない・・・ だったらその未来が来る日までに強くなってお父様の時ように繰り返さないようにしなきゃ。
本当だったらお母様は日本でお父様より早くに誰かにやられて死んでいる筈だったんだから・・・』
彼女が見た未来では母は誰かにやられて死ぬとき父がいた。しかし現実は違って、母は生きている。ようするに未来が変わったのだ。その為に彼女は強くなる決意をした。
これからの為にーーー
<綿糸場にて>
俺は働いている一人に声をかけた。
「すまぬが淡い色の肩掛けと白の長い布と・・・」
「と?」
(そういえば燐殿は髪をまとめていたが柚姫殿はまとめていなかったな。)
髪留めを一つずつくれぬか。」
「わかりました。髪留めは好いた女子へ贈り物でございますか?」
「違う。人から頼まれたのだ。」
「そうですか。これは失礼。少々お待ちを」
「あぁ。」
「神門様、髪留めは何色が良いでしょう。」
「なんでも良いといわれたんだが・・・」
「どのような容姿を?」
「髪は長く、胸下までだ。金髪で眼は橙。」
「でしたら白で両端は赤でどうでしょ う?」
「白で両端は赤か。ふむ。じゃあそれにしよう。」
了承を得ると彼女は全て袋に入れ渡してくれた。
「代金はいくらだ。」
「今日は全て無料にいたします。その代わりまた何かございましたらお越しください。」
「すまない。邪魔をした。」
礼をいい俺はその場をあとにした。
(彼女はどんな顔をするだろうか・・・)
行きと違う気分で竜次は帰ったーー
柚姫は竜次が頼んだ物を取ってくるまで魔術で武器の強化をしていた。
フォン
『これで大丈夫ね。さてと、何しようかな・・・』
柚姫が暇を持て余していると
シュタッ
竜次が戻ってきた。
『お帰りなさい。』
「今帰った。」
『頼んだ物は?』
「貰ってきた。すまぬ。遅くなった」
柚姫
『別に遅くないよ。ありがとう』
「そうか。礼を言われる事はしていない。」
そう良いながら竜次は袋をに渡した。
「薄桃色にしたのだが良かったか?」
『えぇ。良く似合うわ。母の好きな色だし。』
「良かった。・・・柚姫殿。」
『ん?何?』
「髪どめは持っているのか?」
『いえ、持ってないわ。どうして?』
柚姫が疑問に思ってると竜次はさっきより小さな袋を懐から取り出した。
「これ、お前にやる」
『え?』
「開けてみろ。」
『うん。』
『あっ・・・』
袋を開けてみると両端が赤く、白く少し太い平らな髪紐が入っていた。
『ありがとう。』
「あ、あぁ/////」
『さっきの遅くなったってもしかしてこの為に?』
「その容姿のままでも別に構わないが戦う時に邪魔になるだろうと思ってな・・・」
『ありがとう!!』
「ああ。喜んでくれて良かった。・・・にしても剣の布だけで良かったのか?外に出るのに寒くないのか?」
そう。柚姫の世界は秋だったが、 ここトレニアは冬だった。
『大丈夫よ。耐寒用の服持ってるから。 』
「そうか。」
『ねぇ、竜次さん。もう少し日がたったら外に出るんだけどその時一緒に来てくれない?案内は秋宮さんに頼むけど護衛として。』
「俺がいなくてもお前は強い。なのに何故?」
『ほめてくれてありがとう。でも一人は守れても二人は難しいわ。だからもしもの時にお願い。』
「承知した。何か気にかかることがあったらすぐ呼んでくれ。」
『えぇ。』
「外に出るとき髪紐をつけてきてくれないか?」
『わかったわ。約束ね。』
それをつけてくれる事楽しみにしている、といったまま煙のように去っていった。