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仲間の為に  作者: 天楓
第二章
5/23

旅のはじまり


テクテク・・・


テクテク・・・


『お母様、町が見えてきたよ?』


「そうね・・・」


『顔色悪いけど大丈夫?頑張って。』


「・・・えぇ」


周りが芝生(しばふ)ばかりな上、建物がひとつもなかったのでお母様と私は一時間かけて歩き、やっと町が見える所までたどりついた。


テクテク・・・


テクテク・・・


テクテク・・・


ガヤガヤ・・・


『騒がしくなってきたわ。』


そこから再び長い間歩き続け、町の入り口についた。


バタンッ


『!?!?』


『お母様!!』


音のする方を見るとお母様が倒れていた。


『真っ青だわ。早くどこかで休ませなくちゃ。でもどうしたらいいの・・・?』


「お嬢さん、どうしたんだい?」


私が困っていると優しそうな顔をしたおじさんが話しかけてきた。


『あ、あのお母様が倒れちゃってどこか休めるところはないですか??』


「そりゃ大変だな。ついておいで。」


『は、はい』


優しそうな顔のおじさんはお母様を抱き上げ、連れて行ってくれた。


部屋の中で私の前に横たわっているお母様は先ほどより顔色が良くなっていた。


と言うのもさっき私が治癒(ちゆ)の魔術をかけたからだ。


『はぁ・・・早く目を覚ましてよ、お母様・・・』


体力を回復させたのに目が覚めないのは きっと精神的なことだろう。龍牙(りょうが)が死に、村は崩壊(ほうかい)、身体が弱い上、神通力の使い過ぎと長旅だ。病まないはずがない。


(無理させちゃったなぁ・・・)


「少しよろしいですか?」


柚姫(ゆずき)がもの思いにふけっていると借りた宿の女将(おかみ)さんらしい人が(ふすま)ごしに声をかけてきた。


『はい。』


私が返事をするとその人は入ってきた。


「お嬢さんも少し休んだらどうですか? お母さんもまだ目が覚めないようですし。」


その言葉に私は少し考えてから


『じゃあお言葉に甘えて休ませてもらいます。あ、布団は自分でやるのでいいです。』


「そんな、私がさせていただきます。」


『いえ、させてください。』


私が強く言うと彼女は渋々了承(しぶしぶりょうしょう)した。


「・・・わかりました。何かあったら呼んでください。」


『はい。ありがとうございます。』


「では。」


そういった後彼女は(ふすま)を開け出て行った。


『私も少し休もう・・・』


つぶやき、目を閉じると私の意識は暗闇に沈んでいったーーー。




目覚めると私はお母様の横に寝かされていた。


何故(なぜ)?と頭に(はてな)マークを浮かべていると・・・


コンコン


『?はい。』


「入ってもよろしいですか。」


私は断る要素がなかったので入室を許可した。


『どうぞ。』


「失礼します。」


一言発したあと入ってきて(ふすま)を閉め、自己紹介してきた。


「おはようございます。この度あなた方のお世話を承りしました、秋宮 紫穂(あきみや しほ)と申します。よろしくお願い致します。」


『ご丁寧にありがとうございます。私は白百合 柚姫(しらゆり ゆずき)といいます。こちらは母の(りん)です。こちらこそよろしくお願いします。』


白百合(しらゆり)さんですね。何か必要なものがあればおっしゃって下さい。」


柚姫(ゆずき)でいいです。一つお聞きしたいことがあるんです。』


「何でしょう?」


『ふとんを敷き私を寝かしたのは誰ですか?』


「それは私です。私が仲間に頼んでやってもらったんです。いけませんでしたか?」


『いえ、駄目というわけではないんです。ただ・・・』


「ただ?」


『(魔術用)杖や剣、暗器などが枕元に置いてあったので誰がはずしたのかと思いまして。』


「この国では護衛の忍がいるんです。」


『忍なら私の世界にもいるけど・・・護衛って?』


「この国は古来より(いくさ)が多発しておりました。」


(いくさ)・・・』


「しかし時代が変わり戦は終焉(しゅうえん)を迎え 人々に安息な時代が来て今のように平和になりました。でも差別のあるこの国では盗みを働く(やから)がいるのです。」


『それで忍を雇い護衛させているのね。 どうりで殺意は無いけど屋根裏に数人の気配(けはい)があったわけね。』


私が【気配(けはい)】という言葉を出すと秋宮さんは驚いた表情をした。


「!!!・・・貴方は気配(けはい)がわかるんですね。」


『はい。お話はよくわかりました。もう一つお聞きします。』


「はい。」


私は警戒の色を見せ、少し声を低くし(とげ)を含ませ質問した。


『暗器をわざわざはずしたのは私達が何者かわからない上に抵抗すると思ったからですか。』


しかし彼女は平然と答えた。


「いえ、座った態勢で寝てらっしゃると身体に負担かけますし、つけたままだと寝心地が悪いと思ったからです。」


私は彼女の返答に拍子(ひょうし)抜けした。


『本当に?』


「はい。なので装着したまま歩いて結構ですよ。」


『そうですか。』


私は少しほっとした。するとお母様が目を覚ました。


「ん・・・柚姫(ゆずき)?」


『そうよ。気分はどう?』


「今の所は大丈夫。・・・その人は?」


秋宮 紫穂(あきみや しほ)さんよ。私達の世話係だっ て。』


「よろしくお願い致します。白湯お飲みになりますか?」


「こちらこそよろしくお願い致します。 あ、はい。お願いできますか?」


「かしこまりました。柚姫(ゆずき)さんはいかがなされますか?」


『んーーーじゃあ日本茶下さい。』


「ニホンチャ?・・・煎茶のことでございますか?」


『はい。・・・日本茶って言わないんですか?』


「申し訳ございませんが聞いた事ないです。」


『そうですか。じゃ煎茶ください。』


「かしこまりました。すぐにお持ちいたします。」


スッ


パタン


彼女が出て行ったので二人だけになっ た。


『本当に別世界なんだ・・・後で秋宮さんに色々聞いてみよう。今何年かわからないし何処(どこ)かもわからないし。』


「そうね。まずはここの事を知ってからの方が動きやすそうだし、此処(ここ)に何日いるかわからないものね。」


『うん。』


話をしていると秋宮(あきみや)さんが戻ってきた。


「失礼します。」


『どうぞ。』


「お熱いのでお気をつけください。」


「ありがとうございます。・・・本当どこの世界でも白湯って落ち着きますね。 」


「はい。ん?・・・【どこの世界でも】ってもしかしてなんですがお二方は別の世界から来られたのですか?」


『はい。あの・・・今は何年ですか?私達の世界は258年なんですけど・・・』


すると彼女は驚き、目をぱちくりさせながらも答えてくれた。


「え!!・・・今は592年ですよ?」


「『592年!?』」


私達は334年も未来に来てしまったらしい。


『もう一つ。此処はどこですか?私達は日本に住んでいたんですけど。』


「ニホン・・・?あぁ、さっきも言っていましたね。この国は【トレニア】。温和という意味です。」


『聞いた事無いわ・・・どんな国なんだろう。』


「トレニア・・・とてもいい国なのですね。」


「はい。(りん)様の体調が良くなったら外に出てみますか?案内いたします。」


『そうします。ありがとうございます。 』


「重ねがさねすみません。」


「気にしなくていいですよ。ではまた後ほど朝餉(あさげ)を持って参ります。お腹すいたでしょうから。」


『ありがとうございます。』


「失礼します。」


彼女はそういって出て行ったーーー






朝餉(あさげ)を食べ終えて数刻たった後、お母様は寝てしまった。私はこの世界の事をもっと知りたくなり、天井にいる(しのび)を呼んだ。


『そこにいるんでしょう?(しのび)さん』


シュタッ


音と共に(しのび)さんは天井から降りてきた。


「何でしょうか。」


『あなた、名は?』


「俺は・・・」


『まだ名乗ってなかったわね。私は白百合 柚姫(しらゆり ゆずき)。敬語じゃなくていいわ。その方が話しやすいし。』


「そうか・・・じゃあ素で話させてもらう。俺は神門(みかど) 竜次(りゅうじ) だ。よろしく頼む。」


『ふふ。よろしく。』


「何故笑う?」


『いや、そっちの方がやっぱり合うわ。 』


「よ、よくわからないが・・・何か頼みがあるのだろう?白百合殿。」


『えぇ。それと柚姫(ゆずき)でいいわ。』


「承知した。して何をすれば良いのだ?」


『私達が別世界から来たことは秋宮(あきみや)さんから聞いた?』


「あぁ。この国の資料が欲しいのか。」


『話が早いわね。機密文書(きみつぶんしょ)以外でこの国の歴史や文字が練習できる簡単な本とか書斎(しょさい)からとってきてくれない?』


「ようは勉強したいんだろう?何故自分で行かないんだ?案内してやるのに。」


『お母様を見とかなきゃいけないし・・・行って戻ってくるのにどのくらいかかる?』


「まぁ十分弱というところだな。」


『十分弱か・・・ついでにもう一つ頼んでいい?』


「かまわないが・・・。」


『肩掛けと布を一枚持ってきてくれない?』


「承知した。何色がいいんだ?」


『え?』


(りん)殿と柚姫(ゆずき)殿のだ。(りん)殿には肩掛け、 柚姫(ゆずき)殿には剣を隠す布だろ?」


『!?・・・よくわかったわね。そうね、肩掛けには淡い色がいいわ。私は白でいいわ。』


「承知した。あと神門(みかど)ではなく竜次(りゅうじ)でいい。」


神門(みかど)さんは・・・竜次(りゅうじ)さんは優しいのね。』


「!!/////////。優しくなんか無い!!」


『照れない照れない。(笑)さ、いってらっしゃい。』


「・・・言って来る。」


シュタッ


さすが忍と思わせる程あっという間に行ってしまった。


『早いわね。クスッ。さてこちらもやること終わらせましょ。』


柚姫(ゆずき)は母の様子を見ながら机に身体を向けたのだったーーー









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