変わらぬ未来
ボロボロで倒れている仲間達。その周りには血の海が広がっていた。
その残虐な光景に私の頭の中は真っ白になった。
『何で・・・こんなことに・・・』
柚姫は泣いていた。
「柚姫・・・」
このままじゃ私が防御壁作った意味が無いじゃない・・・!!』
「魔物を見た時から思っていたことなんだが柚姫が張った結界が効かないのは何故だ?俺から見てもこの結界は強力なのに・・・
まさか」
『っ・・・お父様』
「俺の推測が合ってるならこいつらはもしかして・・・」
『もしかして・・・』
「『異世界からの魔物??』」
同時に発した言葉に二人は顔を見合わせた。
『でも、何で?』
「誰かがこの世界に干渉してるのかもしれない。」
ハッ
『お母様が危ない!!』
「何だって!?燐が危ないってどういうことだ?」
『訳は帰ってから。急いで戻らな きゃ!!お父様、行くよ。』
「あ?あぁ。」
柚姫達は嫌な胸騒ぎを感じながら急いで神社へ向かった。
タッタッタッタッタ・・・・
ハァハァハァハァ・・・・
俺達は息を乱しながら走った。
バタンッ
ガラッ
「燐、無事か!?」
「!?!?龍牙、柚姫どうかしたのですか?」
急いで襖を開ければ驚いた妻の姿があった。
ギュッ
俺は燐を抱きしめた。
「良かった。柚姫がお前が危ないって言ったから嫌な予感がして急いで戻ってきたんだ。」
「そうだったのですか。大丈夫です。それより他の皆さんはどうしてらっしゃるのですか?」
「それは・・・」
俺は言葉に詰まった。すると
『魔物はどんな攻撃を受けてもすぐに回復してピンピンしてたの。それで皆頑張ってたんだけどやられて・・グスッ・・・皆死んじゃった・・・』
泣きながら部屋に入ってきた柚姫がいた。俺は悲しい思いをいつまでもしてる訳にはいかないので柚姫の頭を撫でながら話を続けた。
「俺達が魔術で攻撃しても何ともないのを見るとそいつらは異世界の魔物なんじゃねぇかと思うんだ。今までそんな体質のやつ出てこなかったし姿形も見たことがねぇ。」
「それで異世界の魔物だと思ったのですね。」
『うん。お父様は異世界からこの世界に干渉してるんじゃないかって』
そこまで説明すると何故か燐が立ち上がり「少しお待ちくださいな」といい何処かに行った。
ガチャンッ
俺達は何かと思い、音のする方に行くと燐が倒れていた。
「燐!!」
『お母様!?』
倒れている燐に近づけば血が胸の辺りから出ていて床に血が溜まっていた。瀕死の状態だった。
「・・・柚姫、治せるか?」
『やってみる。』
燐を横たわらし、柚姫に任せた。治るかどうか・・・
そんなことを考えていると背後に[人ではない何か]の気配がしたので俺はそっちに振り向いた。
何だこの気配はーーーーさっきの魔物ではない・・・
俺はすぐに臨時態勢をとった。だが俺は目を見開いた。
理由は・・・そいつは顔は三つ目で黒く毛が長い鳥で体が花のような形をした異形の魔物だったから。
「何だ・・・?この化け物は。こんなやつが燐をやったってのか?」
拍子抜けして立ちつくしていたら奴から何か飛んできた。
俺はとっさに剣ではじいた。その物体を見ると毒針だった。
「柚姫、燐の状態は!?」
『毒がもう全身に回ってるみたい。でも解毒剤は飲ませたから時間があれば血を止めれる。お父様もうちょっと頑張って!!』
「こっちは心配しなくていいからお前は早く血を止めてくれ。」
『了解。』
ドカッ
バキッ
「ぐっ・・・」
(何だこの力は・・・)
ドンッ
ヒュッ
「??がっ・・・かはっ」
(ハァハァ・・・血の味がする・・・)
『お父様!!』
お腹を見ると先の尖った蔓が刺さっていて相手と繋がっていた。
「これに燐はやられたのか。くそっ!! 不意打ち喰らっちまった。目が回る・・・」
俺がそんなことをつぶやいてると
「龍牙・・・?」
燐が目を覚ました。
「燐!!大丈夫か?」
「はい。」
「良かった・・・」
俺は燐の方を向いていた上に魔物に背を向けていたので気づかなかった。
すぐ後ろで蔓を構えていたことに・・・
最初に気づいたのは私だった。
『お父様!!』
とっさに防御の魔術を唱えた。
『木の神よ、この白百合 柚姫を主に仕えるものよ、わが父を守る為に力を貸せ』
「柚姫!?」
『木祓・実壌薇!!』
すると大地から木が沢山出てきて父を守った。
スルッ
一本目はやっつけたが他の蔓は通り抜けてきた。
全ては一瞬だった・・・他の蔓が父を貫き、私が蔓を切り落とすのは。
「ぐはっうわあああああああ!!!」
そして貫いただけならまだしも切り落とした蔓がお父様の体を引き裂いたのだ。
『お父様・・・っ』
私は武神全ての力を使い、唱えた。
『神々よ、この白百合 柚姫を主に
仕える武神全てのもの達よ、各々の武器で敵を滅せよ』
『天地漸祓・衝扇砲!!』
ビリビリッ ドガガガガガガッ ザンッ グサグサッ
私の攻撃は全て魔物に当たり、魔物は消滅した。
『はぁはぁ・・・消えた・・・?』
「・・・柚姫・・・」
『お父様!今治すから頑張って。』
私はできるだけのことをしようと思い治療した。
「柚姫、やめ・・・ろ・・・無駄・・・だ」
『いやだ!!あきらめない』
私は泣きながら一生懸命治療した。だが、流れる血は止まることをしらない・・・
「燐・・・そこにいるのか・・・?」
「はい。・・・私が見えないのですか?」
「あぁ・・・さっきの・・・攻・・・撃を受け・・・ た時の毒・・・が回ってきた・・・のか目・・・が 見えなくなって・・・いるら・・・し・・・い」
その言葉を聞いた燐は悲しい顔をした。
「燐・・・」
「はい。」
「俺・・・が死ん・・・だら別・・・の世界・・・へ行け」
「わかりました。言う通りに致します。 」
父と母の話が見えない私はそのことに疑問に思った。
『何で??』
「龍牙が死ぬということはこの村の結界が消えて村が滅ぶということです。」
私は言葉を失った。
「この村はな・・・滅ん・・・でる・・・ ん・・・だ」
『!!!!!!』
「そして滅んでいた村を龍牙は結界で元に戻したの」
「その・・・俺が・・・このあり・・・ 様だ。
ってことは後は・・・言わな く・・・てもわかる・・・だろ・・・かはっ」
『お父様!!血が・・・』
「り・・・ん・・・っ・・・ゆずき を・・・たの・・・んだ・・・ぞ」
龍牙はそういいながら瞼を閉じた。
『お父様!!・・・っねぇ目を開けてよお父様ーーーー!!!』
揺すってもお父様は二度と目を開けることは無かった・・・
私は涙が止まらなかった。
「柚姫、龍牙の言うとおりにしましょ う。」
『っっ・・・お母様、この村が滅んだらお父様の身体も消えてしまうの?』
「・・・そうね」
お母様は消えそうな声で答えてくれた。
『一つ頼んでいい??』
「いいわよ。できるお願いなら。」
『別の世界に行くときにお父様を連れてってもいい?別の世界だけどちゃんと葬ってあげたいの。』
お母様は驚いた表情をした。
「わかったわ。でも一人増えるから普通に別世界へ飛ぶより力を使うから飛んだあと体力の消費が激しいわ。それでもいいの?」
『うん。どんな魔術を使えばいいの?』
「私も神通力使うけど、魔法陣を書いて別の世界へ飛ぶ魔術を唱えるの。でもさっきの攻撃で相当疲れてるでしょう? ちょっと待ってて。」
そう言って部屋の引き出しから何かを取り出した。
それはペンダントだった。
「これを魔法陣の上に立った時につけて。これは体力の消費を減らしてくれるの。」
『このペンダントはお父様がお母様にあげた大切なものじゃない。それにこれはお母様がつけておいた方がいいわ。神通力を使う事はお母様の身体に負担をかけるんだから。』
「柚姫、ありがとう。でも・・・」
『でも、じゃないの。いいからお母様が持ってて。』
「しょうがないわね。わかったわ。柚姫はどうするの?」
『私は魔法陣をもう一つ書くわ。大丈夫よ、お母様のペンダントと同じ効果だから。』
「大丈夫??」
『大丈夫よ。さ、行く用意をしましょ??』
「・・・いつの間にこんなにしっかりしたのかしらね。」
『ん?何か言った??』
「何でもないわ。」
ゴゴゴゴゴッ
「・・・結界が消えたみたいね。時間がないわ」
『そうみたい。急がなきゃ!!』
「えぇ。」
私達は急いで用意をし始めたのだったーーー
ゴゴゴゴゴゴッ
カキカキ・・・コトッ
地響きの中、私は魔法陣を書き終えたのでお母様に声をかけた。
『お母様、そっちは準備できた??』
「えぇ。」
『了解。お父様、どうしたらいい??』
「二人で抱えましょう。」
『わかった。じゃあ移動するね。』
「えぇ。」
『転の神よ、この白百合 柚姫と白百合 龍牙を主に仕えるもの達よ、異世界へと移る為に力を貸せ』
『転渡・意叶秦!!』
ポウッ
唱えると私の魔法陣が光りだした。
「亞其而譽於笈彌」
お母様が胸の前で手を合わせ唱えるとお母様の魔法陣が光りだした。
「龍牙と手をつないでて。私とも。」
『うん。』
ギュッ
「行くよ。」
『うん。』
パァッ
私達を包み込むように一瞬光った後、私達の姿は消えたーー