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仲間の為に  作者: 天楓
第一章
2/23

魔物

フォン・・・


『やっぱり何回見ても同じ未来なんだね。』


そう、今見た未来はお母様が何者かに殺され、お父様は敵と戦って散り逝くものだった。 最近魔物が出没することもあったがお父様はとても強く負けることは一度もなかった。だから初めに見たこの未来は夢かと思った。 でも何回みても同じものが見えるということはいつかはこの日が来るということを告げていた。 だから私は夜遅くまで睡眠時間を削って魔術の力を増幅させていたのだった。


翌日、朝早く私は村の中心に向かった。 時間が早いためまだ誰もいない。この力は体力を激しく消費するが強い結界を張るには仕方のないことだった。


『この辺でいっか。』


私はそこに立ち魔術用の杖を構え、唱えた。


『天の神よ、この白百合柚姫(しらゆりゆずき)(あるじ)に仕えるもの達よ、わが村を守る為に力を貸せ』


天祓(てんき)翔主泉(しょうしゅせん)!!』


そう叫ぶと天龍と水龍が出てきて透明な膜ができた後、水で覆われた膜が張られた。


『はぁはぁ・・・これで防御壁は完・・・璧・・・』


柚姫(ゆずき)が倒れてるとこちらに向かって来る影があった。


「おい!柚姫(ゆずき)おい!!」


『お父・・・様?』


そこに来たのは柚姫(ゆずき)の父だった。

「ああ 。お前ここで何を?顔が真っ青だぞ!!」


『大丈夫だよ・・・。』


そう言った後私は意識を手放したーー








「まだ目が覚めないのですか?」


「あぁ。・・・珍しくお前に言わずに出ていったみたいだな。」


「はい。」


(お父様とお母様の声・・・)


バッ


「やっと目が覚めたか」


柚姫(ゆずき)、大丈夫?」


『うん。私何故家にいるの?』


「お前がいなくて探しに行ったら、倒れてて急いで俺が運んだんだ。」


『そっか。ありがとう』


「にしても何故あんな所にいたの?」


『・・・ただの散歩だよ?』


「じゃあ何故魔術の杖なんか持ち歩いてたんだ?」


『魔物に出会った時に対処する為よ。』


「・・・ならいい。だが一つだけ忠告しておく。」


父は真剣な顔で柚姫(ゆずき)を見つめて言った。


「魔物を見たらすぐに逃げろ。対処しようなんて思うな。無理はするなよ?」


『ッッ!!ありがとう。お父様。』


(防御壁のことばれてたのね。でも大丈夫。きっと・・・)


「おう」


そう言った後二人は出ていった --



翌朝---


「よし、神社の方はお前に頼むな。魔物が出没したようだから行ってくる。身体に気をつけてな。」


「えぇ。貴方も御武運を。」


「あぁ。」


『今日はどの辺りに行くの?』


「北の村の端だ」


『そう。気をつけてね』


「おう!」

この和やかな日があの日だとは柚姫(ゆずき)も思いもしなかったーーー   




-北の村-


シャー


ヒュン


フォン


「神主様!!今回の魔物は弓矢も魔術も効きません。このままじゃ皆死んでしまいます!!!」


「チッ。一旦撤退するぞ。」


「「「はい。」」」


そういうと柚姫の父・龍牙(りょうが)は魔術用の杖を構え、唱えた。


「時の神よ、白百合龍牙(しらゆりりょうが)(あるじ)に仕えるものよ、目前の敵の時を止める為に力を貸せ」


時祓(じき)白主叉(はくしゅしゃ)!!」


龍牙(りょうが)がそう叫ぶと魔物の動きが止まった。


「この魔術は一時的にしか持たん。一時間内に戻って退治再開だ。いいな。」


「「「承知しました。」」」


龍牙(りょうが)一行は急ぎ神社に戻ったのだったーー





-神社にて-


「只今帰ったぞ。」


『お帰りー☆怪我大丈夫?』


「こんなのかすり傷だ。燐は?」


『お母様ももう来るよ。』


そんな話をしていると柚姫(ゆずき)の母・(りん)がきた。


「お帰りなさい。今日は早く帰ってきたのですね」


「・・・魔物が強くてな、作戦を練りに帰って

きたんだ。柚姫(ゆずき)、俺と一緒にお前も来てくれないか?」


『・・・・・・』


(まさか・・・いやそんなはずは・・・ないよ ね?)


「どうした?具合でも悪いのか?」


『っ!!ううん。待ってて今用意してくるから!!』


焦りを感じながら柚姫(ゆずき)は部屋を飛び出した。


『えーと・・・暗器と剣を装着して、あと鎖帷子(くさりかたびら)と魔術用の杖ね・・・』


「おーい、まだか?」


『わっ!いつからお父様そこにいたの?』


「お前が暗器だとか何とか言ってるらへんからだ。」


柚姫(ゆずき)の父は笑いながら話していたがふと真剣な顔をして柚姫(ゆずき)の近くにきた


柚姫(ゆずき)は父の行動に珍しく驚いたが冷静を装いながら聞いてみた。


『・・・今日はどうしたの?いつもなら下でお母様とまだ話してるのに。』


「いや、お前があの時黙ってたから心配になってな。(りん)とはもう話してきた」


『そう。何でもないよ?』


「・・・・・・・・」


『お父様?』


父は真剣な顔をして私を見つめてきた。


「・・・・・・・・」


『・・・・・・・・』


「・・・・・・・・」


『・・・・・・・・』


父と私の間に数分間の沈黙が落ちた後、父は話しかけてきた。


柚姫(ゆずき)。何か隠してるだろう」






柚姫(ゆずき)。何か隠してるだろう」


ピク


考え事をしていた柚姫(ゆずき)は思わぬ言葉に反応を示してしまった。そして柚姫(ゆずき)の反応を父は見逃すはずがなかった。


「やっぱりな。」


『・・・どうしてわかったの。私一度もそんな態度とってないけど。』


「あぁ。だがお前、未来が見えるだろう?俺や(りん)と違って。」


『うん・・・』


父は頭を垂れ、そのまま言葉を続けた。


「少し前からだ、お前が休めと言っても聞かずに勉強をすると言い始めたのは。 少しは寝てるはずなのに朝になって顔を合わせると元気に振る舞ってはいるが顔色が悪く疲れた顔をしている。」


『・・・・・・・・』


「それから何日かたった後、お前は(りん)に言わずに出ていった。その事を知らない俺が神社の仕事をひとくぎりして家に戻って一息つこうとしたんだ。だが、お前がいない。部屋に行ってもいない。そこで(りん)に聞いたんだ。何処にいるのか、とな。


しかし(りん)も知らないことに俺はなにかしら胸騒ぎがした。いつも一言かけるかメモを残して出かけるのに今日はそれがないと。何かあったのかと」


『・・・・・・・・・』


父はそこで垂れていた頭をあげてずっと黙っている柚姫(ゆずき)に問いかけた。


「お前、あの日の朝町の中央にいたよな?」


『うん』


「俺は急いでお前を探してたんだ。だがふと空の方を見ると龍がいた。何が言いたいかわかるよな?」


『何の魔術を使っていたか』


「そうだ。俺がお前を見つけた時お前は真っ青な顔をして倒れていた。あの時お前の使った魔術は相当体力を消費するものなんじゃないのか?」


『・・・その通りよ。あの魔術は私自身が作り出したもの。一か八かでやったから体が慣れてない上に強力だからお父様の言う通り体力の消費は激しいわ。』


「ったく。何で俺達がいないところで無理しやがる。」


『当たり前のことよ。お父様達に心配かけたくないからよ。それに編み出してる所を見たらお父様怒るでしょ?』


「はぁ。怒るに決まってるだろう?


お前はーー柚姫(ゆずき)は俺と燐の大事な一人娘だからな。」


『////////』


「ははっ。照れるな照れるな。」


『お父様がそんなこと言うから悪いんじゃん』


「まぁそれはおいといて・・・結局何の魔術を使ったんだ?」


『防御の魔術よ。』


「何でそんなことする必要があったんだ?」


『・・・・・・』






『・・・・・・』


私は正直に言っていいのか、迷った。


「無理にいう必要はねぇ。だが一つだけ聞かせてくれ。」


「お前が魔術を使ったことに未来は関係あるのか?」


『うん。』


今の私にはその一言しか言えなかった。


「そっか。それじゃあ話も終わったことだし、お前に一つ土産だ。腕、出せ。」


私は戸惑いながら腕を出した。


シャラン・・・


『??』


「これはお守りだ。お前今日誕生日だろ?」


そういって腕にはめられたのはブレスレットだった。


「このお守りは俺が魔術の結晶で作ったんだ。これはお前がピンチの時に願った世界に飛べる。他の仲間がいる時はそいつらと手さえ繋がっていたら一緒にいけるからな。だが、これは回数が決まってる。三回までだ。

結晶に色が三つだけついてるだろう?一回飛ぶごとに色は消えていくからわかるだろう。」


父の説明を聞きながらブレスレットをみれば紫、赤、青の三色がついていて残りは透明だった。


「ちゃんとつけとけよ。」


『ありがとう、お父様。大事にするわ。 』


「あぁ。今日もよろしくな」


『うん。』


「あらあら相変わらず仲がいいわね。」


そういって部屋にきたのは柚姫(ゆずき)の母だった。


『お母様!!』


「はい。私からもプレゼントよ。今日で19歳でしょ?」


『うん』


龍牙(りょうが)、ブレスレットは左腕でも大丈夫??」


「??ああ。」


『何か関係あるの?』


「ええ。これは右手につけないと意味が無いのよ。」


『そうなんだ。』


「これを右手の小指につけて。」


そういってくれたのは金色の指輪だった。


『ありがとう、お母様。これってもしかして・・・』


「その通りよ。この指輪は私が霊力で作ったものよ。これでも巫女の端くれだもの。」


燐はウインクしていった。


『ありがとう。これは何かあるの?ブレスレットみたいに。なんか不躾(ぶしつけ)で悪いんだけど。』


「この指輪は額に指輪を当てて欲しい武器を祈ってその後手を開くの。そうしたら手のひらに出てくるわ。」


『へぇー。了解☆』


「そろそろ時間だな。柚姫(ゆずき)行くぞ。」


『うん。お母様行って来るね!!』


「くれぐれも気をつけてね。ご武運を。 」


「あぁ。」


『うん。』


返事をした後二人は仲間と共に戦場に赴いたのだったーー



神社を離れ再び柚姫(ゆずき)を含めた龍牙(りょうが)一行は 魔物と対峙した。


パキパキ・・・パリン!!


龍牙が唱えた魔術が解けた。


「おい、お前ら来るぞ!!」


「「「はい!!」」」


柚姫(ゆずき)、俺の傍から離れるな。」


『うん。』


皆は一斉に攻撃した。


『地の神よ、この白百合柚姫(しらゆりゆずき)(あるじ)に仕えるもの達よ、敵を穴に落とす為に力を貸せ』


地祓(ぢき)穴沼軌(けっしょうき)!!』


柚姫(ゆずき)が唱えると地面に穴が開き魔物が沈んでいった。


「今だ、矢を撃ち込め!!」


龍牙(りょうが)の掛け声で魔物に矢を撃ち込み皮膚に刺さった・・・はずだった。


『え・・・・』


刺さったはずなのに魔物の傷はすぐに修復された。


ザワザワ


「傷がねぇ・・・さっきは跳ね返ってくるだけだったんだが・・・


柚姫(ゆずき)、あれは見間違いか?」


お父様もその現状に目を見開いていた。


『ううん。あれは現実よ』


「だよな。」


『フォーメーションしてみる?』


「しょうがねぇ。やってみるか・・・」


「水の神よ、この白百合 龍牙(しらゆり りょうが)(あるじ)に仕えるものよ、力を貸せ」


『雷の神よ、この白百合 柚姫(しらゆり ゆずき)(あるじ)に仕えるものよ、力を貸せ』


水祓(すいき)阿魅蔦(あみちょう)!!」


龍牙(りょうが)が唱えると水鳥が現れ魔物に酸性雨を降らした。


雷祓(らいき)爾来苑(じらいえん)!!』


柚姫(ゆずき)が唱えると雷虎が現れ魔物に雷を落とした。


「強くなったな。」


『お父様も相変わらずだね。』


二人で褒め合ってると背後で叫び声がした。


「うわぁ!!」


「か、神主・・・様・・・」


『皆、どうしたの??』


サァー


(煙で見えない!!)


煙が静まるのを見届け、柚姫(ゆずき)は様子を見ようとした。


だが、


「待て!!」


龍牙(りょうが)に引っ張られ進めなかった。何故行かせないのか父に聞きたかったが父の目が見開いてたのでどうしたのかとそちらの方角を見れば・・・・


『皆??い、いやだ・・・いや---!!』


その方角で見たものはさっきまで一緒にいた仲間達の遺体と今だピンピンしている魔物だった。


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