表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/33

第32話 その後の世界へ

 ゼムドは、六人の魔族たちが待っているアジトの場所へ向かっていた。


 空を飛びながら考える。


 そういえば、数日前にキエティとホテルで長話をしたが、最後にキエティは何故か大声を上げて、地面にへばりついていた。

 ただ、観察した感じでは何か外傷があったわけではない。

 放っておいてもいいだろう。


 あの女は喜怒哀楽が大きい。


 ちょっと何かあると、怒ったり笑ったりする。

 自分にとって、そのような感情は戦闘においては邪魔になるので必要ないと思っているが、まぁ、あれが人族の良さなのだろう。


 そんなことよりも六人をどうするかが問題だ。


 今後自分は、龍種の住まう場所へ向かう必要がある。

 ファルデザートにあの場で自ら龍の地へ赴く、と告げたが、その前にあの六人を何とかしなければいけない。

 そんなことを考えつつ、六人のいる場所へ向かっていく。


 六人がいる場所が見えてくる。

 気配を辿って飛んでみたが、いつもアジトがある場所に六人はいたが、アジトの〝建物〟が無くなっていた。

 六人は円を囲むようにして座っており、六人の円の中央には何か石が積まれていた。

 着地してから、六人に話しかける?


「建物を壊したのか?」


 これに、アザドムドが即答した。


「おめーのせいで壊れたんだよ」


 意味が分からない。 

 ケリドが説明し始める。


「闘神様が魔力を放出した際に、建物の中に六人ともいたのですが、魔力放出に合わせてそちらへ急行したために、私たちの魔力で建物を壊してしまいました。申し訳ありません」

 ケリドは話し終えて頭を下げた。


「……別にいい」


 ゼムドは、そう返事をして、それより気になっていることを尋ねる。


「お前たちが囲んでいるその石はなんだ? アザドムドは食べているようだが、旨いのか?」


「これはアザドムドさんが拾ってきた毒の魔石になります。私とミホさんとガルドロストさんは好きではないのですが、他の三人は好んで時々食べているようです。闘神様も一つどうですか?」


 そう言ってケリドが魔石をピッと、指で弾いて放り投げてくる。

 魔石を弾いた速度は時速二〇〇キロを超えているだろう。

 ゼムドはそれを指二本でキャッチして、食べてみることにする。


「旨くないな。何がいいんだ?」


「けっ、おめーにはそれの良さも分からねーのか。お前も堕ちたもんだな」


 アザドムドは機嫌が悪そうだ。

 そういえば、こいつはキエティに少し似ている気もする。

 怒りっぽい。 


「お前たちに話がある。よく聞いて欲しい」


 そう言って、全員の注意をこちらに向ける。

 アザドムドだけはこちらを見ずに、毒の魔石を口に放り込んでいる。


「お前たちにも人族の文化を学んでもらいたい。ただ、お前たちが人族の街へ近づけば、人が死ぬ。人を殺さないような訓練をしばらくしてもらいたい」


「私はゼムド様がそうしろと仰るならその通りにしますよ」


 エスカがそう言う。エスカの意見を聞いたケリドが話し出す。


「私も構いません。むしろ、闘神様が人族に興味を持たれたというのがとても興味深いので、是非とも自ら、人族の街を訪れてみたいと思っていました」


「拙者も同様でござる。ゼムド殿があれほど魔力を放出して、人を守ったことに興味が湧いたでござる。是非出かけてみたい」


 ケリドとワダマルは興味ありそうだ。


「私は興味ないわー。なんか強いのがいるなら行ってもいいけど、興味ないわー」


「俺も興味ねぇ。弱い奴は嫌いだ」


 ミホとアザドムドは人族に興味がないらしい。

 ガルドロストに聞く。


「おまえはどうだガルドロスト、人族に興味はあるか?」


 ガシャンガシャンと頷いている。人族に興味があるらしい。


「ケリド、お前はこの六人の中では一番問題を起こさないだろう。おまえは今すぐ連れていきたいが、その前にやってもらいたいことがある。

 残りの五人が人族の国へ行って、問題を起こさないように教育してほしい。おまえは獣族に定期的に会いに行っているだろう? それができるようなレベルにこの五人を教育してほしい」


「分かりました。私が人族に連れて行っても問題ないような魔力レベルを五人にお教え致します」


 それでは、二人を説得するか、と思う。


「ミホ、お前の言う通り強い奴は確かにいない。しかし、人の文化には多様性がある。俺も当初何も興味がなかったが、それでも今は人の国へ行って良かったと思っている。

 お前は強い奴にしか興味がないようだが、もしかするとそれより面白いことが人の国にあるかもしれない。一緒に来る気はないか?」


「う~ん、そんなことよりゼムド今闘ってよ。なんかこの前のゼムド見てたら、なんとなく闘いたくなってきたんだけど」


 ミホはやはり興味が無いか、そう思う。

 アザドムドはこちらを見ずに、また、毒の魔石を口へ放り込んでいる。

〝仕方ない。少し手荒な真似をしてみるか〟


 次の瞬間だった。


 座っていたミホに一気に重力の魔法を掛けた。

 ミホの首を折るつもりで重力を掛けると、一瞬ミホの目から光が無くなり気絶したように見えた。

 が、次の瞬間、ミホの瞳孔が開いたまま赤くなりこちらを見返してくる。

 かなり強い重力を掛けているが、今の一瞬で首を折ることができなかった。


 ミホに重力魔法を掛けた瞬間に、残りの五人は一気に魔力を放出して、今まで座っていた場所からから距離を取っている。

 残り五人も完全に戦闘態勢だ。


 ミホは力が強い。何の種族か分からないが、下手に近づくと手に負えない。

 距離を取って、重力を掛けていく。耐えているようだが、ミホの皮膚が変色し始める。

 毛細血管が破裂しているのだろう。力をさらに加えると、口からも血が流れてきた。

 この段階で、さらに強く首に向かって重力を掛け、そのままミホの首をへし折った。


 この時、動いた者が一人いた。


 ワダマルだった。


 瞬間的にゼムドの懐に入って鞘からの一線を放ってきた。

 ゼムドは重力を使った移動で、一気にワダマルの真横へ移動する。

 そして人差し指と中指をワダマルの目に突っ込んで、眼球を二つ破壊した。

 同時にワダマルの眼球内で指先に力を入れて、そこから重力魔法を送り込む。

 簡単にワダマルの首は折れた。

 そして、次の瞬間、ワダマルを遠くへ蹴り飛ばす。

 ミホにも近づいて、同じようにミホも遠くへ蹴り飛ばした。


 残り4。

 体と右拳に重力魔法を纏い、ケリドの近くへ瞬間移動する。

 そしてケリドの治りきっていない右腕、骨が見えているところめがけて強めに殴り飛ばす。

 ケリドの目から光が消える。

 この感触なら脊髄と首の骨まで折れたはずだ。


 残りは3。

 エスカのところへ重力魔法で高速で移動する。

 顔を殴って地面に叩きつける。

 数回顔を殴ると鼻が折れ、歯も折れていく。

 ただ、エスカは笑っていた。

 そして、こちらへ目を潰そうと手を槍にして、突いてきた。

 サッと避け、重力魔法で首を折る。

 女性だからか、眼球を潰さなくても簡単に首は折れた

 そして、子宮が破裂するように腹を思いっきり蹴って、また遠くへ飛ばす。


 残りは2。

 ガルドロストは硬い。

 あの鎧は魔力で編んだものだが、俺の今の魔力放出で壊せるようなものではない。

 ただ、あの鎧には隙間がある。

 そこから魔力を通して、中に重力魔法を一気に掛けていく。

 ボキ、ボキ、と二回音がした。

 腕と足それぞれ二本を折った。

 中の人物は見たことが無いが、ガルドロストの内部は比較的脆い。

 だから鎧の能力にしたのだろう。ただ、外部から魔力を流し込まれて中で魔法を使われると弱い。

 簡単に重力魔法で首が折れる。

 そして、重力魔法で他の5人と同じように遠くへ飛ばす。


 残りは1。

 アザドムドが魔力を限界まで高めている。

 龍族に会った時に見せた魔力量だ。

 凄いと思う。

 これほどアザドムドが化けるとは思わなかった。

 ただ――〝まだ足りない、もっと強くなれ〟――そう思う。

 瞬間的にアザドムド横へ重力魔法を使いながら移動し、目を潰そうとする。

 が、アザドムドはギリギリでかわして、こちらを殴ってきた。

 ワダマルでの動きを見て、学習したか――。

 殴ってきた腕を掴んで、人の地で見た柔道の技を利用して腕を折った。

 骨が飛び出る。

 一瞬動きが止まったアザドムドの目をワダマルにやったようにして潰し、重力魔法で首を折って、遠くへアザドムドを蹴り飛ばした。


 その場に残ったのはゼムドだけだ。


〝さて、龍族に会いに行くか〟


 そう思って、その場から飛び去った。


************************


 アザドムドはゼムドにやられたダメージで動けなくなっていた。

 完全に首が折られている。しかも、内出血で口の中に血が溜まっている。

 動けない。

 魔族でもここまでダメージを与えられると、魔核から魔力の補給が出来ないし、口の中に血が溜まっているせいで大気中の魔素を吸収することができないから、急回復はできない。

 普段なら多少のダメージでは痛みを感じないが、ここまでダメージを受けると神経が損傷したせいで、強烈な痛みを感じる。


〝クソが!!〟


 せっかく魔力の絶対値が上がったのに、ゼムドと闘ったら全く手も足も出なかった。

 おまけにゼムドは普段闘うよりも魔力を放出していない。

 頭にくる。


 なんだあの動きは?

 一瞬で懐まで移動しやがった。


 ゼムドは魔力量が高い代わりに、接近戦は苦手だ……。

 あれだけ魔力量が高ければ、適当に距離を取って、強力な魔法を多段的に起動すればいいだけだからだ。

 無駄に相手との距離を詰めて戦う必要がない。

 にもかかわらず、今回は6人相手に、ほぼ接近戦で勝ちやがった。

 魔法を起動させようとしたが、間に合わないので殴ったが、変な技で腕もやられた。


 両方とも人の国で覚えたのか……。


 〝クソッ!! クソッ!!〟

 頭にくる。


 龍どもめ。

 あの爬虫類、何が勝てる、だ――。

 あの時のゼムドの魔力放出量でこの移動魔法を使われたら、6人全員、ほぼ瞬殺じゃねぇか。

 龍みたいなでかくてトロい連中なんて、全く歯が立たねぇぞ。

 クソが……。

 あのトカゲ、いつか殺してやる……。


 中位種の魔族がこちらへ数十体近づいてくるのが分かる。

 死に掛けの上位種を喰うつもりなのだろう。


 ゼムドが龍種に話していたことが思い出される。

 これが〝人を守りたい理由か〟と思う。

 珍しい技の知識があるなら、たしかに人からそれを吸収するのは悪くない。

 だからゼムドは人を守ったのか?

 それと同時に思い出される。


 ゼムドが鳥や人を守っているのを見て、最初に感じたのは怒りだった。

 大地を守るのは分かる。

 たしかに俺たちの魔力で汚染してしまうと結局、自分達の生活が不便になる。

 ただ、あんなゴミみたいな生き物を、あのゼムドが見せたこともないほどの魔力で護っていたのが不愉快だった。


 俺は弱い奴は嫌いだが、強い奴は認める。

 ゼムドだけは認めてやってもいい……。

 ゼムドが3000前につまらなそうな顔をしたから、だから、他のメンバーを纏めて、あいつが笑うようにしてやろうと思った。

 闘いが好きなら、俺達で相手になってやろうと思ったが、届かなかった。

 ただ、あの場では龍がゼムドを殺そうとしているのが分かった。

 怒りで限界が外れ、強くなったのだろう……。

 3000年間、無駄にゼムドと組み手をしていたのが、それを助けた面もあるのかもしれない。


 ゼムドが楽しめるなら、あの場で闘っても良かったが、ゼムドはあの場で闘いたくはなかったはずだ。

 だから、闘うのは止めた。


 それに、あの鳥に質問に答えれば助けてやるといった質問をしたが、どう返答しようが殺そうと思っていた。

 ゼムドにあの鳥どもがちょっかいを出したなら、罰を与えねばならない。

 ゼムドは、鳥ごときが手を出していい相手ではない。

 許せない。


 しかし、ゼムドはあの鳥たちを護った。


 未だに意味が分からない……。


 ――ゼムドに従って人の地へ行くしかないのか……。


 音が近づいてくる。


 中位種はもうすぐそこまで来ていた。


***********************


 ワダマルは岩山に叩きつけられて動けなくなっていた。


 さすがにゼムド殿は凄いでござる。

 拙者もそれなりに修業は続けていたが、まさかあの懐具合から逃げられて反撃されるとは思わなかったでござる。

 いやいや、もっと拙者も精進せねばなるまい。

 それにしても、ゼムド殿が使ったあの魔法が、どういうものなのか分からないでござる。

 起き上がったら試してみようと思うが、まだ回復に時間が掛かるでござる。


 ワダマルの周囲にも弱った魔族をかぎつけて上位種が一体近づいていた。


***********************


 ケリドは回復を急いでいた。

 腕を1本、龍にやったのと、さらにそこをゼムドに殴られたせいで、思ったよりダメージがでかい。

 中位種が近づいてきている。急がないとそれなりに致命傷になりえる。

 そう思って、余計なことを考えずに、脊髄と首の骨の修復に意識を集中していった。


***********************


 エスカは笑っていた。


 やはりいい!!

 ゼムドしかいない!!

 発情期にある女性の腹を迷わず蹴り上げて、子宮を破壊してくれるような男じゃないとダメだ!!

 絶対にゼムドは手に入れる!!

 他の女には渡さない。

 ゼムドに近づく女は、今まで通り全て殺す。

 ゼムドに抱えられていた女も殺す。


 エスカにも中位種たちが近づいてきていた。


***********************


 ガルドロストは動けなくなっていた。

 中位種が近づいてくるが、中位種ではこの鎧を破れない。

 それよりも上位種が1体この状況に気づいているのがまずい。

 回復が間に合わないと死ぬ。

 いそがねば。

 そう思って体を休める。


***********************


 ミホは一気に目が覚めた。

 周囲に魔族の死骸が転がっている。

 100体ほどいる。


 よく分からないが、ゼムドに首の骨を折られ掛けたあたりからの記憶が無い。

 まぁ、いつも全力で戦うと意識が無くなるけど。

 多分、この魔族の死骸は自分がやったのだと思う。

 どうでもいいけどー。


 それより、ゼムドが使ってきた魔法が気になるー。

 あの距離で上から押さえつけられるような感覚の後、首にダメージが出たー。

 今までのゼムドが使ったことのない魔法かー。

 あれは厄介だなぁー。

 動きを完全に止められた状態でタコ殴りにされてしまうー。

 人の街で覚えたのだろうかー?


「人の国に行きたいわけじゃないんだけどなぁー」


 そう呟いて、いつものアジトの場所へ飛んで行った。


*******************


 ゼムドは龍の住まう土地へ到着し、ファルデザートと会話を始めていた。


 ファルデザートが驚愕して質問する。


「じゃあ、六人を半死にして、魔族どものいる場所へ放り投げて来たのか?」


「そうだ。いつものことだ。あいつらも何か技術の向上があれば、俺に戦いと挑むし、俺も何か思いつけばあいつらで技を試す。この三千年間、それを繰り返してきた。魔族は瀕死になると生命維持のために寿命を削って、回復を急ごうとする。半殺しにして、魔族のいるところに放り込んでおけば回復は早まるだろう。それぞれのダメージ具合から、死なないような魔族がいるところへは放り投げたから死にはしないだろう。また喰らった技の解析も早まるずだ。魔族特有の強烈な生存本能が機能して、回復後に相手を上回ろうとする」


「それは寿命を捨てるということか?」


「俺たちは老衰では基本的に死ねない。必ず最後は誰かに殺される。お前たちと違って、寿命に意味があるわけじゃない。むしろ、ある時点で少しでも強くなれる方が、長期的には長生きできる可能性が高まる。お前たちとは生存環境が根本的に異なる。俺たちの寿命は10万年程度と言われているが、老衰で死ぬならもっと長く生きられるはずだ」


「……」


 ファルデザートは思う。


 なるほど、これは強くなるわけだ。しかも、この三千年は互いに技を掛けあうことで、さらに技術を磨くようなったか。

 やはりこいつらは〝危険〟だ。

 放置するわけにはいかない。


 現時点ではゼムドが頂点に立って、魔族の暴走を抑えることができるが、ゼムドの死後、あるいは他に強い魔族が発生して、そいつが世界の均衡を崩そうとするなら放っておくわけにはいかない。

 それにゼムドもまだ不安定だ。

 あのエルフが、誰かに殺されでもしたらどうなるか分からない。

 ゼムドも子供過ぎる……


 そう思っていると、ゼムドが話し始めた。


「お前が俺の今の発言を聞いて、何を考えたかは大体分かる。俺が生きているうちは世界のバランスは力で保てるだろう、ただ、その後はどうなるか分からない。だから、俺はあいつらを人の地へ連れていくことにした。あいつらのような奴らが今後も現れて、自由勝手に生きるとするなら、世界に異変が生じることになる。だが、人の世界を知って戦うこと以外の事を覚えれば、世界を壊そうとしないと思う。それに掛けてみたい」


「具体的にどうするつもりだ?」


「まず、あいつらの魔力を完全に抑える。今のままでは人の地へ近づくだけで、人が死ぬ。俺のように人へ近づいても人が死なないように魔力をコントロールさせる必要がある。戦闘時に気配を消すことは必要にもなるから、当然、魔力を抑えることはあいつらもできる。ただ、日常生活の何気ない動作で魔力を放出した時に、それで人が汚染されるようでは困る。その意識を改めてもらう必要がある」


「それにはどれくらい掛かる?」


「おそらく1~2年程度だろう。ただ、一人、男の子の魔族がいるが、こいつは問題ない。今すぐに人の地へ連れて行っても問題は起こさないだろう。しかし、こいつを教育係にして、残りの五人の意識改革をする。しばらくは人の地へ近づけさせない」


「ふむ、まぁ、それがいいのだろう。おまえがやりたいようにやれ。それよりも、お前が云う個々の尊厳とやらをどうして欲しいのか具体的に言え」


「おまえたち龍種は戦争を禁じたが、これは本来、獣族の本能を消す行為だ、奴らは戦いを好む。これを押さえつけるのは好ましくない。闘いを推奨する」


「待て。三千年前に確かに我らが戦争を禁じたが、それはそれなりに理由があってのことだ。おまえが守っている人族も世界各地に点在して、強い種から逃げるように生きていた。そのような種を保護してやる意味合いもあった。単に戦いを認めればそれらの者達が死に瀕することになる」


「いや、闘いは認めると言ったが、他種族を蹂躙するのは認めない。ただ、一方で領土の拡大については自由競争にする。具体的には、闘技大会を開く。各種族からメンバーを選抜してそのメンバー同士を戦わせて、勝ったところが負けたところから領地を奪う、あるいは金銭を奪う。ルールは適当だ。お互いが殺し合いをしたいなら殺し合いを認める。殺し合いをしたくないなら、認めない。死にそうになったら俺が守ってやってもいい」


「……」


「男の子の魔族はケリドというが、こいつは何故か魔族にしては獣族と交流がある。こいつにも協力してもらって、闘技大会を開くつもりだ。ケリドは様々な方面に詳しい。闘技場の建設から大会の運営手法まで興味を示すだろう。龍種から、何か案はあるか?」


「……いや、無い。おまえがやりたいようにやってみろ」


「あと、お前たち龍族には、各獣族の代表に、お前たち名義でこの闘技大会の参加について提起してもらう。俺のことについて知っている獣族はそれほど多いわけじゃない。お前の発言の方が影響力は大きいだろう」


 ファルデザートは、ふむ、と思う。

 まぁ、問題が起きるかもしれないが、ゼムドがやりたいというならそうしてやろうと思う。


「構わん。やってやろう。それより少し気になることがある。お前が魔族を倒す時に使ったという魔法に興味がある。それはどういう魔法だ?」


 それを聞くとゼムドは立ち上がって、魔力を放出し始めた。


「おいおい、待て。我らは別に首を折られなくても魔法を見せてもらえば理解しようとする。魔法の一つを聞くだけで、首を折られるのは敵わん」


 そう言うとゼムドは魔力を抑える。


 そして一言。


「そうか」


 ファルデザートはやれやれ、と思う。

 やはりゼムドもまだ子供だ。

 他人の立場で考えるという点では全く話にならない……。

 気を付けないとこっちもケガをしてしまうな……。


 そう思うファルデザートであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ