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失意のポルックス

作者: まほろば

 うつ病になってから、悲観的になることが増えた。

 最初にうつ病になったのは、大学一年の時だった。不安と、期待と、理想と、現実と。

 色んな事が一気に自分の中に流れ込んできて、どうしていいか分からなくなって、全部投げ出して。

 一番覚えているのは、親の車に乗せられて、自宅まで帰って来たこと。今は亡き初代犬が、尻尾を振りながら出迎えてくれたことは、はっきりと思い出せる。

 そこから先は、あんまり覚えていない。病院に行ったかもしれないし、薬も病院によって変えたかもしれないし。


 次に思い出せるのは、救急車に乗った事。

 薬が合わなくて、舌が引きつけをおこして、呼吸がしずらくて、近くの病院に救急搬送された。

 看護師さんと夜間の医師さんに診てもらって、何とか落ち着いて、一日くらい検査入院をした。

 なんだがイライラして、眠れなくて、呼吸が浅かったのを覚えているような気がする。でも、正確なことはもう思い出せない。


 次は青。病室から見える空の色。

 この日の前後のことはあまり覚えていない。でも、病室の窓から見える空が、とても綺麗だったのは斧得ている。

 俺は病院内で引きつけを起こしたらしく、重いひきつけだったが、近くに居た看護師と医師に助けられた。起きるまでずっと眠っていたらしく、起きた時に親戚の人が顔をのぞき込んでいたような気がする。


 大学に復学してからは、地獄だった。

 同級生は、白い目で俺を見るし、遠巻きにひそひそ話をしている。内容は、悪口ばかりだったけれど。

 部活に入ってから、少しずつ、明るくはなってきたけれど、それでも、どんどん前に進んでいく周りの人たちと、自分ばかりが遅れていく現実が辛くて、情けなかった。


 大学は、数年通ったけれど、結局退学してしまった。

 単位が取れない。親に叱られる。うつ病だった。てんかんもある。

 自虐的になり、内向的になり、悲観的になり、視野が狭くなっていく。

 両親がお金を払って大学に行かせてもらっている事に感謝こそすれ、不満などはなかった。ただ、自分が結果を出せないことに腹が立ち、悔しかった。

 精神科に行った。

 二度目のうつだった。



 それから二年。

 俺はまだ生きている。人生に悲観的になった。昔の自分よりはるかに内向的になった。諦観もしているし、碌な職に就けないだろうとさえ思っている。ましてや、自分が死ねば保険金が入るだろうとさえ思っている。

 未だ悩み、あがき、苦しい。生きるということは、苦しく辛いものだとはっきりわかった。

 それでも、俺は生き続ける。自分の為じゃあなく、家族のために。自分がどうなろうと知った事ではないけど。

 これが、俺の闘いだ。

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