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流れ詩
この話は、私がなろうサイト様で連載している「砂漠の蝶」と裏表の作品です。単体でもお楽しみいただけるようになっていますが、よろしければ拙作「砂漠の蝶」も読んで頂けると幸いです。
貴き花は雪を想う その賤しさ故に
美しき花は雪を想う その醜さ故に
清き雪は花を想う その穢さ故に
高き雪は花を想う その低さ故に
花は愚直に雪を待つ その身が枯れることを知りながら
雪は無様に花を待つ その身が融けることを知りながら
触れ合うことさえ叶わぬのなら 囁き合うことさえ果たせぬのなら
この身に何の意味があろう この世に何の意味があろう
花を愛すは人の業
雪を愛でるも人の業
花は花で無くなり 雪は雪であることを辞め
伸ばした先にあるものは 求め続けた至高の存在
これはいずれの記録にも残らず いずこの書物にも記されない
忘れ去られた物語
これはいずれの記憶にも残り いずこの旋律にものせられた
刻みこまれた物語