1/5
世界と悲劇
少女が倒れている。
その身体は焼け爛れ、切り傷だらけで、土埃に汚れ、水に濡れ、痙攣を起こしている。
少年は少女の目を閉じさせ、抱きかかえる。
そのまま、どうしようもない行為の果てに、ただ虚しさが残る。
その虚しさは音も立てずに怒りへと変わり、少年はその怒りを示すように、代わりに雄叫びを上げる。
身体に炎が奔り、高熱を纏う。頭には二本の禍々しい角が顕現し、晴れて、悪魔が誕生する。
炎は少女を焼く事無く、触れないでいた。
少年は優しく少女を下ろし、怒りを形に表す。
世界は力で溢れている。
例えば風に吹かれる花でさえ、手を振うだけで焼き尽くす事が出来る。それを悲しく思っても、手を振うだけで咲き誇らせる事が出来る。
力は、世界を偽物に作り替えた。
つまり、力の持たない人間こそ本物なのである。
だが、この世界は確かに偽物で、全ての人間もまた、偽物である。
よろしくお願いします。