再会の少女
無事を喜び合っている四人の姿を眺めながら、和樹はそっと息を吐き出した。
余裕を感じさせてはいたものの、実は内心それなりに緊張していたのである。
そもそもリオの様子は面識のある者が交代で見ていたのだが、まさか自分の番の時に目が覚めるとは、というところだったのだ。
まあそのお陰である程度の必須知識は教えることが出来たわけだし、二人の時でしか話せないだろうことを話すことも出来た。
それを考えれば、悪いことでもなかったのだろう。
何にせよ、フィーネ達と再会することによって、無事警戒心を薄れさせることが出来たようで何よりである。
勿論未だ残ってはいるが、それは必要最低限という感じであり、無駄にあった分はかなり薄れさすことが出来た……はずだ。
「警戒心を薄れさせておけば、落としやすい、ということですか……和樹さんのこの如才なさには、やはり危機感を覚えるべきでしょうか? ……いえ、私では満足させることが出来ない部分を補うことの出来る人材を得られるということを考えれば、或いは?」
「或いは、じゃねえよ。大体足りない部分ってなんだ」
「勿論ロリ的な方面ですが?」
何を当たり前のことを、とでも言いたげな雪姫に、溜息を吐き出す。
こっちはこっちでいつも通り過ぎて自重をして欲しいのだが、どうせ無理なので最近は諦めるということを覚えてきた。
まあそんな戯言はともかくとして――
「というわけで新人が増えることになったわけだが、ちゃんと自重しておけよ? 特にそこの馬鹿二人」
「言われてるにゃよ、筋肉馬鹿?」
「俺じゃなくてそっちの知識馬鹿だろ?」
「失敬だね、僕はちゃんと自重ってものを知っているさ。ただ、話を聞いた限りでは色々と興味深い感じではあるからね……話すのが楽しみではあるかな」
「だからそれを自重しなさい、と言われているのよ?」
やっぱり駄目な気もするが、いざとなれば強制的に黙らせるしかないだろう。
そんな思考が自然と出てくるあたり、マルク達とも親しくなったというか慣れたという感じではあるものの……さて。
「ところで、リオが新しく増えるってのはいいんすけど、俺達と一緒に動くことになるんすか?」
「一応そのつもりではあるな。実力的にはちょっと頭一つか二つ抜けた感じになるが、マルク達と一緒に行動するには色々と知らないことが多いだろうし……何より、フィーネ達と一緒の方が安心出来るだろうしな」
「……がんば、る」
「何とかフォロー出来るように頑張ってみます」
「頼もしいが、自分のことが疎かにならないようにな?」
最近では随分と任せることが出来るようにはなってきたものの、フィーネでさえ一瞬の油断が命取りになりかねないのが現状だ。
その点ではリオの方がまだマシであり、リオならばランク三程度の魔物相手ならば、仮に直撃を食らったところで問題にはならないだろう。
むしろ逆に相手を挽肉に変える可能性の方が高い。
もっともそれはそれでまた別の問題があるし、単独で任せることが出来ないという意味では同じだが。
何にせよ、双方共に放っておくわけにはいかなかった。
「むむ……? 何やら話が分かってねえのはリオだけみてえですけど……リオは何かやらされるです? ……まあ、一応とはいえ、助けてもらった恩もありやがるですから、拒否するつもりはねえですが」
「ああ、そういえば、既に話は纏っている、みたいな体で話していますが、そもそも本人の意思確認すらしていませんでしたね」
「とはいえ、実質的に選択の余地なんかないしな。行く当てもないだろ?」
「む……? 確かに、住んでた場所は壊れちまったですし、他に当てなんてねえですが……でも、他を探せばいいだけです?」
「……それは駄、目」
それはつまりまた街に戻るということなのだから、駄目なのは当然だ。
実際のところ、既に昨日の犯人は捕まり処分されてはいる……ということになってはいるが、だからといってリオが街に行くのは自殺行為だろう。
昨日は隠蔽を施したからこそ堂々とリオを背負いながらでも街中を歩けたわけだが、リオ一人で行けば間違いなく騒ぎになる。
まあ、そこら辺のことも、きちんと説明し、納得させる必要があるだろう。
だが何にせよ――
「とりあえず、何をするのかに関しては実際にやってみせた方が早そうだな。今日は普通に討伐する予定だったし、ちょうどいいだろ」
「ですね。準備の方は、既に出来てますよね?」
「あ、はい、俺達の方は一応やっておきましたけど……リオは、どうします?」
「別にいらないんじゃねえの? 昨日の見た限りでは、防具も武器も必要なそうだし……ああでも、解体用のナイフぐらいは用意しといた方がいいか?」
実のところ、リオが目覚めたのは遅く、既に本来ならば討伐に向かっているような時間だ。
リオが目覚めなそうだったので、どうするかは微妙なところだったのだが、行けるのであればそうした方がいいだろう。
まだ色々と、入用ではあるのだ。
「まあ使うかは分からんが、一応用意しといてくれ」
「……ん」
「おや……? フィーネが率先して動くのは、珍しいですね」
「戦闘とかならともかく、この段階から積極的に動くっていうのは確かに珍しいですね……いつもこうなら、助かるんですけど」
「ま、フィーネらしいだろ。んじゃ俺達は荷台の準備でもしてようぜ」
そうして動き出すと、リオだけが手持ち無沙汰な様子で、若干おろおろとしていた。
まあ時間が押している以上、テオ達に構っていられる余裕はないだろうし、何やらマルク達も何処か行く予定なのか、動き始めている。
自分一人だけが何もしておらず、何処か居心地が悪いのだろう。
周囲をきょろきょろと眺めた後、助けを請うような視線を和樹は向けられ、苦笑を浮かべる。
「そうだな、することはない可能性もあるが、一応リオもテオ達に付いて行ってくれ。そのうち同じことをやってもらうかもしれないし、今のうちに見といて損はないだろ」
「わ、分かったです! 行ってくるです!」
言うや否や、既に部屋を出ようとしていたテオ達の後を急いで追いかけていった。
その後姿を眺めながら、再度苦笑を浮かべ、さて、と呟く。
「それじゃ、俺達も行くとするか」
「はい」
最近ではまた討伐も行なうようになってきたが、ペースとしては、テオ達の訓練をメインでやる日と、討伐をメインで行なう日とを交互にやる感じだ。
その中で、時々休みを入れるようにしており……これは実はマルク達に言われ始めたことである。
確かに言われて気付いたが、かなり無茶の利く和樹達と違い、テオ達はそこまで無理をすることは出来ないのだ。
本人達は問題ないと言うが、こういう時の本人達の言ほど信用できないものはない。
今のところは週休一日制的な感じでやってはいるが、マルク達に言わせればまだ休みが足りないとのことであり、和樹達もそう思う。
そのうちここら辺はもっと調整が必要だろう。
閑話休題。
準備を終え、屋敷を後にした和樹達は、森の外に出ると、まずはいつも通りの討伐をこなしてみせることにした。
もっとも、和樹達のやることなど大したことはない。
魔物が既にリポップしていればそのまま倒し、していなければするまで待つか、或いは適当な場所へと散策していく。
どの道魔物と戦うことにはなるが、それだって一撃で終わってしまうのだ。
その程度のことを誇るのは、さすがに無理な話であろう。
さらには、最近では索敵さえも、テオ達と居るときは和樹達は自分でやっていないのである。
テオ達の訓練を兼ねてのことではあるが、ほぼ何もしていないことに変わりはないのだ。
当然と言うべきか、解体の方もテオ達に任せており、特に最近では和樹達の出る幕がないほどにその腕前は上達していた。
「なるほど、随分と手馴れてやがるですね……」
そしてそんなテオ達の姿を眺めながら、リオは感心したように頷いていた。
その姿は、先ほどカズキが一撃でそれを、外傷の一つもなく倒した時よりも遥かに熱心である。
見る人が見れば、明らかにそちらの方が凄くはあるのだが、そもそもリオはカズキであればその程度のことが可能なことなど知ってはいたし、自身が得意とするのも、どちらかといえば戦闘方面だ。
だからこそ、自分にはない技術、出来ないことの出来る者に感心を払うのは当然のことと言えるだろう。
「手際がよく、見てる限りでは無駄もないように見えるです……凄えですね……」
だがそんな風にされることを経験したことがなかったテオ達としては、それは何処か面映く感じるものであった。
嬉しくないわけではないのだが……過大評価を受けているような、落ち着かないような気持ちにさせられるのである。
現在カズキ達の屋敷に留まっている者達を一つのグループとするならば、テオ達は間違いなく一番下っ端だ。
見上げる壁の高さを知るどころか、見上げていたのが壁だったのだということにすらも最近知った有様であり、手が届くとか以前の問題である。
勿論褒められたりすることはあるのだが、それはあくまでも上に居る人間が、頑張っているなと微笑ましく見守るようなものであり、心の底から褒められたと感じたことはない。
そのことを悔しく思えばこそ、認められようと頑張ってはいるものの……テオ達の一つ上となるのは、マルク達――レベル五の冒険者なのである。
その差というのは、実力をつければつけるほどにより強く感じるものであり、追いつける気などは欠片もしない。
そんな状況であれば、自信などが得られるはずもなく……だから尚更嬉しく、また照れくささも覚えるのだ。
「あー、いや、まあ……毎日のようにやってたし、このぐらい普通じゃないか?」
口ではそう言いながらも、テオは頬が緩んでしまうのは止められない。
横目で眺めてみれば、フィーネやラウルも同様のようであった。
「……ん、慣れ?」
「まあ、だな。つか、この程度のことで驚いてたら、雪姫さんの見たら腰抜かすぜ?」
とはいえ、当然のように、それで腕が鈍ることはない。
むしろ、いつもよりも調子がいいような気さえするのだから、我ながら現金なものだと、テオはこっそりと苦笑を浮かべた。
と。
「そういえば、今のテオの言葉で思い出したけど、僕達ってカズキ達が戦ってるのはよく見るけど、解体とかしてるのは見たことないよね?」
「……そういえば、言われてみればそうね」
「確かに、その通りにゃ。まあ、見るまでもない気がするけどにゃ」
「オレはどうでもいいがな」
声にちらりと視線を向ければ、そこにはマルク達が暇そうにしながら、床に座っていた。
いや、実際暇なのだろう。
そもそも、暇だからこそ、わざわざこんなところに来ているのだから。
テオ達と共に何やら準備をしていたマルク達であるが、どうやら共に来る事が目的であったらしい。
しかも珍しく、四人全員だ。
以前から時折見学に来ることはあっても、全員というのは本当に珍しい……というよりは、もしかしたら初めてかもしれない。
まあ今回はどちらかといえば、リオを見に、ということなのだろうが。
そしてその目的が果たされるのも、おそらくはそう遠いことではないだろう。
そうこうしているうちに解体も終わり、足元に転がる綺麗にばらした素材やら肉やらを眺めた後で、テオは一つ息を吐き出す。
我ながら上手く出来たものだと頷きながら、カズキへと声を掛けた。
「解体の方、終わりました」
「ああ、ありがとな。さて、とりあえずこれで今日のノルマは終わったわけだが……どうするか」
いつもならここで、時間が早ければテオ達の鍛錬の時間になったりもするのだが、今日はリオが居る。
そもそも今日は半ばリオにやることを見せるためにやっていたのでもあり、そういう意味でどうするか、ということだろう。
さらに見せるために続けるか、ここから先もいつも通りにするか、或いは――
「まあ僕達はいつも通りカズキさん達に任せますけど……そろそろテオに何かやらせてみてもいいんじゃないですか?」
「そうっすね。マルクさん達も暇そうっすし、俺達はそれでも構わないっす」
「ふむ……」
「……そういや、今ふと思ったっていうか、前から疑問には思ってたんだけどよ……なんでオメエらってわざわざそんな言葉遣いしてんだ?」
「え?」
唐突に発されたその言葉は、テオ達に向けられたものであった。
反射的に首を傾げ……しかしすぐに何を言われたのかを理解する。
同時に、確かにそう思うのも無理はないだろうと思い、テオの口元に苦笑が浮んだ。
「そういえば、そうにゃね。もう結構長いこと一緒に居るにゃよね?」
基本冒険者というものは、敬語とかはあまり使わないものである。
さすがに初対面ぐらいは使おうとはするが、何せ立場が立場だ。
自然とそういったものとは縁遠くなるものであり、顔見知りとなった程度の段階で、普通はそういったことは気にせず話すようになる。
それはランクが上だろうが、実力が上だろうが関係のないことであり――
「あー、それっすか。まあ確かに、もう普通に話していいとは言われてるんすけど……」
「……いまさ、ら?」
「いや、そんな感じなのは確かなんだけど、フィーネが言うのはちょっと腑に落ちないかな……」
だがフィーネの言う通りではあった。
何となく今更のような気もするし、これで慣れてしまった、というのもある。
当然恐れ多い、というのもあり……要は、あまり変える気がしない、というのがその理由なのであった。
「まあ、別に無理をしてるわけでもないですしね。止めろっていうなら、少し頑張ってみますけど」
「いや、オレは別にどっちでも構わねえよ。喋り方で何が変わるわけでもねえしな」
「まあ、そうにゃね、無理してないんにゃら……本当に無理してないにゃ?」
言葉と視線の向く先に居るのは、ラウルだ。
それに、うぐっ、と言葉を詰まらせる。
確かに、その言葉遣いは、間違いなく無理をしているそれであった。
「まあ、そうだね、そういう口癖の人も世の中には居るには居るけど……明らかにラウルはそうじゃないしね」
「そうね……大変なら、止めちゃっていいのよ?」
「……いえ、お気遣いありがとうっす。でも、これはこれで慣れてきたってのも嘘じゃないっすし、まあ、こんなのもありかなとか最近では思うようにもなってるんで、大丈夫っす」
その言葉は、おそらく半分程度は社交辞令的なものが含まれていただろうが、残りの半分が本音だったのだろうことも事実だろう。
そしてラウルがそういう選択をするというのならば、テオが何かを言うことはない。
ただ、少しだけホッとしたというのも事実ではあった。
何せラウルまで普通に話すようになってしまったら、残りは自分だけとなってしまう。
そこでラウルが止めると言ってしまったら、さすがになら自分もとは言い出しにくいし、きっと疎外感のようなものも感じていただろう。
まあそんなことを言っていないで、いっそのこと止めてしまうというのも手ではあるのだが。
そうすれば、丁寧に喋るのは雪姫だけということになる。
喋り方が被る事も……いや、被るか?
「ふむ……折角なのでテオさんも普通に喋るようになっても構わなかったのですが。そうすれば、私と喋り方で被る心配もなくなりますし」
「心配すんな、最初からお前とテオの喋り方はまったく被ってない」
「え? ……それはつまり、そのような心配をしなくても間違えることはない、ということですか? つまり……愛ですね!?」
「微塵も関係がない上にただの事実だ」
何やら考えていたのと同じようなことを、しかしいつも通りのやり取りの中で行なう二人の姿に、自然と口元に笑みが浮かぶ。
それは決して馬鹿にしてのものではなく、それを見ていると安心出来るといった、そんなものである。
まあ、それはともかくとして――
「とりあえず、しばらくはこのままということで。そのうち機会があったら考えるかもしれませんけど。それより、結局どうしますか? 続ける場合でも、僕達はまだ全然大丈夫ですけど」
「そうだな……続けてもいいんだが、折角だ。そこのお嬢様の力を、皆に見せてもらうとしますかね」
「ん? もしかして、リオの出番です?」
「ああ、出番だな」
その言葉を聞くや、リオは途端に顔を輝かせ始めた。
見ているのもよかったが、やはり自分の身体を動かしたほうがいい、ということなのだろう。
或いは、今度は自分の番、などと考えているのかもしれないが。
「任せるです! リオの力、見せてやるですよ!」
ただ何にせよ、張り切っていることだけは確かである。
まあそんなことは、即座に立ち上がったことや、その顔などを見れば誰にだって分かることでもあるのだろうが。
とはいえ、幾らやる気が溢れているからといって、すぐにやりたいことが出来るとは限らない。
単純に言って、まずは倒すべき魔物を探さなければならないのだ。
そして現在、その仕事の担当はテオ達ということになっている。
別にリオのやる気に水を差すつもりもないので、出来るだけ早く見つけてはやりたいが、半ば以上は運任せであるし――
「むむぅ……カズキ、アレ、は狩っちゃってもいいやつです?」
だがそうして周囲を探索しようとしていたところ、リオは唐突にそんなことを言い出した。
まさかリポップしたのを見逃したのか、と慌てて周囲を見渡すも、視界に広がるのは穏やかな平地のみだ。
森の方にも目を凝らしてみるが、やはり何の気配も、姿もなく……この場に居るのは、間違いなくテオ達のみであった。
おそらくは、何かを見間違えたのだろう。
そう思いリオの方へと視線を向け、しかしその様子から、間違っている……否、認識できていないのは自分の方だと理解した。
その顔は、明確にそこに何かが居るのだと確信しているものであったし、それが正しいのだということは、そんなリオを眺め僅かに驚きの表情を浮かべているカズキからも分かることだ。
「ほぅ……ここからあそこまで気配察知が出来るのか? となると、大分察知範囲が広いな」
「気配察知……? 何言ってるです? 別に普通に見えるじゃねえですか」
「……あー、なるほど……そっちだったか」
「見え、る……?」
何やらカズキは納得している様子で、同時に苦笑を浮かべていたが、テオとしては頭の上にクエッションマークが浮かぶ思いであった。
いや、当然言っていることは分かる。
分かるが、意味は分からない。
少なくともテオの視界の中では、地平線までの間に何も映ってはいないのである。
それが事実だというのならば、果たしてどれだけ先のものが見えているというのか。
そしてカズキの反応からすれば、それもやはり正しいのだ。
それだけでも薄っすらと垣間見えるリオの能力の高さに、口元を引き攣らせるしかない。
確かにランク三を瞬殺したところはテオも見てはいたが、逆に言うならばそこしか判断材料はないのである。
それにその程度ならば、ランク三上位にでもなれば十分可能なことだろう。
カズキが面倒なだけだったと言っていたこともあり、てっきりリオもそのぐらいなのだろうと勝手にテオは思っていたのだが――
「さすがに俺でもパッシブだけじゃ見えんな……呆れた視力というか、半ば獣じみてるな」
「んなことはどうでもいいです。で、狩っちまってもいいんですか?」
「ああ、それは問題ない。とりあえず俺も確認してみたが、周囲に他の冒険者の姿もないようだしな」
「んじゃ、ちょっと狩ってくるです。リオの力、ちゃんと見てるですよ!」
テオに認識できたのは、そう言った直後に、リオの姿が掻き消えた、ということだけであった。
ただ、当然と言うべきか、当たり前のようにカズキはどこぞへと視線を向けていたし、それは雪姫も、マルク達も同様である。
何が起きたのか理解できなかったのは、テオとラウル、それとその事実を何処となく悔しそうにしている、フィーネだけであった。
その事実に、テオは溜息を吐き出す。
どうやら、届かない位置に約一名、また追加されてしまったようであった、などと思いながら。