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第三章 宴会奉行


その後、石田さんに桜が勝利できるはずもなく、着物にペイント弾をもらい、俺達はあえなく敗北となった。

勝負がつき、吹雪も本格的になりそうになってきたため屋敷に戻る際、桜は半ば自分のせいで負けてしまったという後悔と、町にいけないという悔しさもあいまってか、話しかけても終始砂糖と間違えて塩を舐めてしまった子供の様な表情を浮かべていた。

「なぁ……いい加減その表情何とかしたらどうだ?顔面の筋肉が引きつってもとに戻せなくなるぞ?」

「……」

返事無し、落ち込むとは思っていたが、まさかここまでとは。

いや……これは石田さんに対しての怒りが原因か……。


俺の頭を打ち抜いた桜も桜だが、石田さんも石田さんだ……あきらめずに石田さんに向かって引いた桜の弾丸を割と本気で回避したあとで、背後からマシンピストルの洗礼を浴びせて全身をインクまみれにするとは……。

「少し大人げなかったんじゃないか?石田さん」

「う……」

石田さんに小声でそう呟いてみると、石田さんは背中を一度震わせる。

「……しかし、万が一にも桜様が町に行くようなことになっては」

「だからって主人の背中をインクまみれにするこたないだろ……あんたならハンドガンでも十分対応できただろうになぜマシンガン六十発全弾打ち切った?」

「……つい、昔の血が騒いでしまいまして……」

「あんたなぁ……」

石田さんの返答に呆れながら、背中にピンク色のクリームを塗りたくられたようになっている桜をもう一度見る。

……あれじゃお嬢様じゃなくてタールマンだ……。

背後に漂う負のオーラもあいまって、その威圧感は相当濃いものになっている。

こりゃ背後からだけならホラー映画に抜擢できそうだ。

「なぁなぁ……なして桜ちゃんはあんなに怒ってるんだ?」

何も知らない長山とカザミネは桜のとなりから離れるようにして俺のそばまで来て、そう耳打ちをする。

「な……なんかすごい怖いっさ」

「あぁ……石田さんに銃乱射されてご立腹なのさ」

「……ですから故意では……」

「どちらにせよ、ありゃなんかご機嫌取りしとかねぇと怖ぇかもよ?」

「そう……でしょうか?」

「ああいうタイプは、怒ると怖いっさ。そりゃもう謝る程度じゃすまないくらいに」

石田さんは恐る恐る顔を上げて桜を見る。

既に桜は十メートル先位を早足で歩いており、こちらを一度も振り向こうともしない。

とうとう石田さんは黙りこくってしまい、先ほどの戦いで見せた神代の牙獣の如き眼光はどこへやら。

餌を取り上げられた子犬のような目をして、俺の方を見つめてくる。

そんな助けを求めるような顔をされても、そう何度も桜の機嫌を直すことを思いつくわけじゃないっての。

「ん~……あ!私にいい考えがあるっさ!」

と、不意にカザミネが指を鳴らして閃く。

「ん?どんなアイデアだ?」

この際アイデアが少しでもあるんだったら聞こうじゃないか。

「困った時は宴会を開けばいいんさよ!」

「おぉ!そりゃいいなカザミネちゃん!」

「宴会……ですか?」

「そうさ、嫌なこと辛いこと!そんなたまりにたまった体に悪い心の不純物は、どんちゃん騒ぎのピッピロピーでスカッとドバっと空の彼方へおさらばするっさ!そうすれば、桜ちゃんだって背中についたインクなんてちっこいこと、記憶の彼方におさらばするっさ」

……時々こいつが何を言っているか分からなくなることがあるが。

とりあえずは、騒いで忘れさせようってことである。

「なるほど……パーティーか!いいんじゃねぇの石田さん。本当の家族じゃねえけど、俺達は今桜ちゃんの家族みたいなもんだろ?だからまぁ家族水入らずみてぇな感じでさ?桜ちゃん、きっと家族みんなでパーティーとかしたことないからすっごい喜ぶと思うぜ?」

「たまにはまともなことを言うんだな、お前たち」

正直本気で驚いた。

「……確かに、いい案ですねカザミネ様」

石田さんもどうやら納得したらしく、表情が少し柔らかくなる。

「はっはっは、礼はいらないよ石田さん!私は桜ちゃんを喜ばせようと思っただけだからねい!」

「かしこまりました。では、さっそく戻って準備に取り掛からせていただきます」

そういうと石田さんは屋敷へと戻る道から外れ、村の方向へと走って行ってしまった。

「ふむ……なら俺も付き合うとするか。長山、桜の身辺警護は頼んだぞ」

「ん?珍しいなお前が率先して遊びに付き合おうとするなんて。いつもなら護衛効率が悪くなる~とか言うくせに……」

「そうさねぇ……なんか今日のシンくん変っさ……」

「あ、カザミネちゃんもそう思う?」

「うん。なんというかはじめてあった時よりも優しそうになったっていうか……」

「ほほう……」

なにやらいやらしい顔をして長山はカザミネからこちらに向き直り、満面の笑みを作る。

全くこいつらは、どうしてこいつらは変なところでやけに勘がいいのだろうか。

しかし……桜が自分の寿命があと少ししかないことを知っているなんてことを長山もカザミネも知る必要はないから

「……気のせいだ。ただ、何もすることがないんだったら、ただ時間を無駄にするのはもったいないと考えているだけだ」

「……ふ~ん」

「……なんだよ」

「べつにぃ?まぁまぁ、桜の事は私に任しておきんしゃい♪しっかり護衛してあげるから、君は彼女が最高に楽しめるように石田さんのお手伝いに行ってくるっさ!」

「カザミネちゃん~?護衛するの俺なんだけど」

「赤い人!細かいことは気にしちゃいかんさ」

「はぁ……頼んだぞ、二人とも」

「任務了解」

「はいは~い」

相変わらずの不安を掻き立てるような返事二つ分にため息を漏らし、俺は石田さんの後を追いかけた。    

                        ◆

村人がにぎわい、道行く人が一様に白い息を吐きながら会話を楽しんでいる商店街。

雪月花村の北東に位置するその場所は、夕方時と言うこともあってかにぎわっていた。

「……随分とにぎわってるな。人口千人程度の村とは思えない」

「地区ごとに役割が決まっていましてね、食品や娯楽はこの商店街でしか購入できませんから、この時間帯は村人が一斉に集まるのです」

「なるほどな……だから少しばかり道が広く作られているのか」

「えぇ、店舗が点在すると、場所によって売上等が不平等になってしまいますからね。

一か所に集めて役割を別々に与えれば、あとは自身が怠らなければ、収入はほぼ均等になる……大戦後、みな平等にするためにと初代領主が考案したのですよ」

俺の隣を歩く石田さんは、どこか懐かしそうな表情をする。

「……社会主義、か」

「えぇ……。まぁ今では冬月家が莫大な遺産を持っているため完全とは言えませんが……当時は達成していたのですよ……理想論と笑われた楽園が」

「?」

その石田さんの含みのある言葉に少し首を傾げ、もう少し深く話を聞こうとすると。

「石田さん、お久しぶりねぇ♪」

色艶のある声が背後から響き、石田さんを呼び止めた。

「?」

振り返ると、そこには酔っぱらいがいた。

「……あらあら、守護者さんもいたの。これは珍しい組み合わせね?」

「お久しぶりです ミコトさま」

「また酔っているのか……お前」

「当然♪ お酒は命よ…だから私は伊吹 命っていう名前なの……安綱で首を斬らないでね?」

「切ったら呪われそうだ……」

「おやおや、お知り合いのようですね?」

「まぁな……この前ちょっとあってな」

「ほほう」

「ふふ、彼に一目ぼれしちゃった♪」

「……またいい加減なことを」

「あら、割と本気よ?」

うふふと悪戯っぽくミコトは笑い、持っていたヒョウタンを取り出し、酒を飲む。

その姿は淑やかな外見からは想像もできないほど豪快で、目を少しとろんとさせて幸せそうな表情をする。

「……お酒はほどほどにした方がよろしいですよミコト様」

「いいのよ、すべては星の動くまま……。結果には必ず原因があるというけれど、私の死因にお酒は関係ないって星たちが言ってるわ、だから私はお酒を飲むの」

誰に対してもそんな返答を返しているのかお前は……。

星とか良く分からないとか昨日俺の前で暴露しておいて、よくもまあいけしゃあしゃあといい加減なことが言えるものだこの酔っ払いは。

「そうですか、そうとは知れず失礼を働きました」

しかし石田さんはそんなミコトの言葉にも俺達と同じように紳士的に振る舞う。

その姿にミコトも満足したのか、ヒョウタンのふたをしめて肩にかかった髪を払うと、本題を話し始めた。

「あなた達、何か面白そうなことをするんでしょ?星たちがそういっているわ」

「……よくご存知ですねぇ、流石はミコト様。今夜は桜様の為にささやかなパーティーを開く予定なのです」

「そう……。実は私、一つ忠告があって来たのよ」

「忠告ですか?」

「ええ、カードが不吉なものを今日引き当てた……。出たのは正義と死神……」

また良くわけの分からないことを。

本当にこいつは冥界とか冥王星とかからの電波を受信してるんじゃないのか?

「……ふふ、まぁ信じるか信じないかは別として、気をつけなさいね?守護者さん。あなたは、いつ死んでもおかしくないんだから」

「そんなことは百も承知だ」

「そう……」

命は少しだけ嬉しそうな表情をして、くるりと背中から伸びた飾りを揺らして反対方向に向き直る。

「それじゃあね、守護者さん。また会いに来てくれるとうれしいな」

背中を向けたままでも笑っていることが分かるほど命は嬉しそうな声でそう呟くように俺に言葉を伝え、しんしんと降る雪の中をまるでガーベラの花が揺れるかのように美しく、雪の中に紛れていった。

「相変わらず、変な奴だ」

「しかし、あなたの事をわざわざ心配してくれる、優しいお方じゃないですか」

「まぁ……。悪い奴じゃないことは認める」

ミコトの後姿を見つめながらそう言葉を紡ぐと、石田は少し表情を緩めてまた歩き出す。

その姿はどこか達観したような表情であり、まるでミコトの発言に対して何かを知っているような表情にも見えた。

「……」

しかし、あくまで気がするのだけであるため、俺はその疑問を口にすることはせずに、無言のまま石田さんの隣に続き、また白い雪に覆われた人行き交う商店街を、ミコトと反対の方向へと歩いて行った。

                       

                       ◆

「ふあ~~、い~きかえるっさ~!?」

屋敷に戻った私とカザミネは、雪合戦の疲れと汚れを落とすため、まっさきに浴場へと直行した。

龍人君も誘ったのだけど、なぜか外せない用事があるとかで、さっさと食堂の方へと向かってしまい、仕方なく私たちが先に入ることになった。

シンくんもそうだったけど。 本土の方の日本人は、一人で温泉に入る方が好きなんだろうか?

本では、温泉っていうのはみんなで入るものだって書いてあったはずんだけど……。

「まだ怒ってるっさ?桜」

不意に、隣のカザミネが声をかけてくる。

「ふえ?」

「町に行けなくなっちゃったこと。まだショックなのかい?」

「あぁ、その事。 うぅん。初めは確かにすっごい惜しくて悔しかったけど。なんかよくよく考えてみれば、今日みんなで雪合戦が出来てとっても楽しかったから、なんだかもう満足だよ……これ以上望んだら、神様に怒られちゃう」

「…桜、そんなことは…」

「はい、この話は終~わり」

カザミネの言葉を遮り、私は肩までお湯の中につかる。

小さな波紋が温泉の中に広がり、私は何とも無しにその波紋を目で追ってみた。

いつもなら波紋がただ広がっていくだけだった温泉……だけど今日は、その波紋はカザミネにぶつかって変な形になって広がっていく。

「ほ~」

「どうしたっさ?私の顔に何かついてるかい?」

「ううん……。ただ、思えば友達と一緒にお風呂入るの初めてだよ」

「そうかい?じゃあ私が初お風呂友達ってことさ!」

「そういうことだね」

「それはうれしいっさね」

純粋な微笑みっていうのは多分こういう笑顔の事を言うんだろう。

カザミネは邪気のない笑顔を見せてくれる。

だけど……その子供の様な笑顔の中には……どこか寂しそうな表情が隠れている気がした。

「……そういえば、カザミネはお父さんとお母さんと一緒に暮らしてるの?」

この村に暮らしている時点で、親と離れ離れになることはまずありえないと分かっていながら、私はなぜかそんなことを聞いた。しかし。

「暮らしてないよ~」

さも当然のように、カザミネは頭に乗せた手拭いで浮き袋を作りながらそう言った。

「え……」

「私は物心のつく前に、雪月花の森の中に捨てられてたんさ。おかしな話なんさけどねぇ、まだあの時の事は覚えているっさ。 雪がたくさん降ってて、辺り一面は木ばっかりで、私は唯々泣いてた。そんな時に、村の狩人が私を助けてくれたんさ」

「……へぇ、じゃあ今はその人と一緒に?」

「それが、そうじゃないさ。その人は私が一人で生きていく術を教えたら、あっという間に消えてしまって……それからはず~っと一人ぼっちっさ」

「……そんな。寂しくなかったの?」

「いやいやぁ、この村の人たちはみんな優しいし、部外者の私もまるで家族のように接してくれるっさ。 だからあんまり悲しくはなかったよ?あ、でも……同じ位の友人がいないのはやっぱり少しさみしぃかなぁ……。これからは森にも狩りに行けなくなるし……そうなるとしばらくは一人ぼっちさ」

「……だったら!カザミネ、私と友達になってよ!」

「はい?」

一瞬きょとんとした顔をして、カザミネは私の顔を目をぱちくりさせながら見る。

「一人よりも二人、二人よりも三人!私だって、シンくんたちが来るまでは石田と二人きりで寂しかったけど、今は全然寂しくない……だから、カザミネも私たちと友達になれば寂しくなくなるよ!!……あ、もちろん、カザミネが良かったらの話だけど」

ちょっと勢い余って一人でしゃべりすぎてしまい、それに気が付いて慌てて私は口を止める。

しかし。

「……良いのかい?そんな今日出会ったばっかりなのに?」

カザミネはどこか困ったような表情を浮かべて私に語る。

「もちろん。だって、カザミネはシンくんと龍人君の友達でしょ?だったら私の友達だもん」

「……そうかい……友達か……」

何故だろう、カザミネの言葉は少し嬉しそうで、どこか戸惑っているようにも見えた。

意外な一面だ。

まるで、初めて友達と言うものができた様な……。

「……そういう事なら、お言葉に甘えさせてもらおうかね」

そんな彼女の第一印象からは分からない、遠慮気味な見ているこっちがこそばがゆくなる反応の中、カザミネは弱々しくそう答え。


「……うん、よろしくね!カザミネ!!」

私はその隙をついてカザミネに飛びかかる。

「う!?うおわっ!なななな何するっさ !」

「えへへへー」

先ほどの開幕射撃のお返しである。


                  ◆

さて、宴会と言ってもどんなことをすればいいのか分からない。

とりあえずカザミネはおいしいものと酒を用意すればいいと言ってはいたが。

当然のこと俺達は未成年。

酒を飲むわけにはいかず、仕方なく桜の好きなコーラを大量購入し、宴会を開くべく城へと戻って行く。

まぁ、詳しいことは長山とカザミネに任せてしまえば問題ないはずだ。


そう思案し、俺は城の扉を開ける。


と。

「あ、おかえりー!えっとね。皆さんに報告があるので聞いてくださーい!」

風呂上りか、ペイント弾だらけだった髪はいつもの白銀に戻っており、着ている服は銀色から紺色の星の模様が入った着物へと変わっていた。

ペイント弾が落ちたら怒っていたことも忘れてしまったのか、何かはしゃいだような様子で俺と石田さんに声をかける。

「?どうしたんだ?」

「えーとですね!これから、カザミネが私たちの仲間の一員になりまーす!」

「?」

ちょっと何を言っているのか分からないな。

「だから!カザミネは今日から私達のお友達!いつでもここに遊びに来ても良いって事で!」

「なっ!?桜様!?」

突然の発表に、驚愕の声を上げたのは石田さんだった。

「何を言っているのですか桜様!?ここは戦場になるかもしれないのですよ?カザミネ様も巻き込まれるかもしれません!危険すぎます!何のために村人の立ち入りを禁じたと思ってるんですか」

「石田さん、不審者がうろつく森で一人でいるよりは安全さね?」

石田さんのセリフに、カザミネは相変わらずの悪戯っぽい笑みでそう語る。

「うっ」

「それに、私は一応医師免許も持ってるからねぇ、君たちも傷ついた時に適切な処置ができる人間が必要になってくると思うんよ!なぁに心配することはないっさ!女一匹狩人カザミネ!そうそう簡単に死んだりしないっさ!」

「……」

カザミネは力強くない胸をはり、石田さんを説得する。

「深紅様ぁ……」

なにやら犬のような目でこちらに助け船を求める石田さん。

しかし。

「ね、シンくんもいいと思うよね!?ね!」

「悪いがカザミネの意見には同感だ……桜の看護ではいつ死んでもおかしくないし、かといって俺達も医療の知識はゼロに等しい。医学の心得がある者が近くにいるのは心強い」

一瞬桜の方から鋭い視線を感じたが無視。

「!?」

残念ながら今回は桜に一票を投じさせてもらおう。

「さぁ観念しなさい石田!三対一だよ!」

果たしてそういう問題なのかどうかはさておいて、悲しきかなどうやら長山は頭数に入っていないようだ。

石田さんは苛められっこのような悔しいんだか悲しいんだか分からない独特のしかめっ面を見せ、しばらく何か反論しようと口をパクパクさせるも、結局出たのは大きなため息一つ。

そして。

「……どうせ、何を言ってもお考えを変えるつもりはないのでしょうね?」

折れた。

「もちろん、これは雪月花村当主の決定よ」

石田さんの呆れたような声に対し、桜は先ほどのおかえしとばかりに自信満々に胸を張り高らかに宣言をする。

中々な独裁者ぶりを発揮する桜。 

やれやれ、この行く先がアウグストゥスになるか、はたまたネロになるか……。


そんなくだらないことを考えながら、敗北者となった石田さんの様子を見ると、まだどこか納得していないような表情のまま。

「はぁ、ならば歓迎会を催さなければなりませんね」

そう呟き石田さんは一人厨房へと向かう。

宴会を開くいい口実ができたという事で自分を納得させた様だ。

ふてくされ気味にとぼとぼと歩く姿が、エサを取り上げられた犬を連想させる


しかし、今回の「雪合戦」しかり、今のあの姿しかり存外あの人も子供っぽいところがあるよなぁ……。


最近気づいたことだが、石田さんは、桜の前だけはやけに笑ったり怒ったり表情を隠そうとはしない。

普段は極めて丁寧かつ無表情……。会話の合間に見せる微笑さえも薄い氷を張ったみたいな冷酷さと緊張感があり……常に隙を見せない。


それが主に仕える者としての在り方なのかもしれないし、現に石田さんは主をたて、自らは影に徹するという生き方を実践している。

完璧すぎるくらいに。


だからこそ、桜の前で見せる慌てたり怒ったりという姿はとても新鮮だった。

桜がそうするように命じているのか、はたまた本人の自覚は無いのかは知らないが、こうして二人のやり取りを観察するのは中々に面白い。


きっと、親父が生きていれば……俺も今頃はあんな感じだったのだろうな。


そう思ってしまうと何故だか二人がほほえましく見えるのだ。

「シンくん」

「ん?あぁ、なんだ?」

我に返ると、桜が俺の袖を引いて上目づかいでこちらを見ている。

「……歓迎会するの?」

「みたいだな」

桜のご機嫌取りという名目での宴会よりはカザミネの歓迎会と言った方がまだましだろう。

「はー♪」

見る見るうちに顔がほころんでいく桜。

「もしかして桜……こういってみんなでお祝いって」

「うん!初めてだよ!やったー!」

このはしゃぎよう、どちらが歓迎される側なのか分かったもんじゃないな。

「あ!こうしちゃいられない。カザミネの歓迎会するなら、内装とかもお祝い用に準備しなきゃ!ちょっとシンくんも手伝ってー!」

おいおいおい、お前は当主でしょうが……という突っ込みは置いておき、

せわしなくかけていく桜を追いかける。

当主を働かせている時点で職務怠慢?

いやいや、いくら俺でも、あんなに楽しそうにかけていく少女を止める程無粋ではないもので。

せめて怪我をしないように、三歩下がっていそいそと付いていくのであった。

                   ◆

宴会会場にあてがわれた部屋は談話室。

いつもならオレンジ色の明かりが爛々と輝いているこの部屋だが、桜の計らいにより照明は全てオフとなっており、代わりに置かれたアロマキャンドルがユラユラと揺れながらうっすらと部屋を映し出している。

飾り付けと言っても、そんなに大したものができるわけではなく。

アラビアンナイトのランプの精の様に、すべてが黄金白金色になったり、シャンデリアの大きさが二倍になったりは当然せず。

(まぁ、そういうものを少しばかり期待していた自分がここに居たりするわけではあるが)

至って普通。

例えるならば一般の民家のクリスマス。

金色銀色のビーズを糸で繋げた飾り物が、子供のお遊戯会の時に作られるわっかでできた飾り物よろしく天井の隅から隅までゆるい放物線を描きながら飾られ、

さらに等間隔に、トナカイの形をしたガラス細工をつるしていく。

所要時間三十分。

存外、たったこれだけの装飾でも部屋の雰囲気とは変わるもので、談話室はこじゃれたバーに変貌を遂げていた。


手伝った人間は二人、俺こと不知火深紅と相棒である長山龍人。

当然、開始三分での桜のイメージを受けるにあたって、自らの脳内でイメージされる宴会会場と異なることに気付いたのだが、雪月花村当主がこれが宴会会場だというのであるから、きっとこれが名家の間での由緒正しき宴会会場なのだろうと人類中間層の俺達は二人同時に言葉を飲み込んだ。


「よっし、これでカザミネを歓迎する準備はできたね、ありがとうシンくん。龍人君」

満足げに笑みを見せる桜、それと同時に。


「おやおや。桜様、随分と談話室が変わっておりますね」

厨房から石田さんが顔をのぞかせる。

ちらりと見えた厨房からは、整頓されまるで後光が差しているかのようなキッチンが覗いており、石田さんはそこからワゴンを押して談話室へと入ってくる。



白いシーツがかかっているため、どんな料理が控えているのかは分からないが、香りだけでも人を殺せそうないい匂いが一瞬にして部屋の中に建ちこめ。


【くーーーー】

「………」

「………」

「………」

誰かの腹の虫がなる。


「あ……あははははは」

「桜様」

「いや……ほら、運動したからお腹すいちゃって」

呆れたような表情を見せる一同に対して、桜は苦笑いをしながら頭を掻く。

「まぁ、流石は桜嬢……腹のなる音までも御上品だな」

「ふええ!?やめてえぇ!あんまりからかわないでー!」

恥ずかしさが決壊したのか、桜は顔を真っ赤にして俺の事をポカポカと殴り始める。

案外本気で言ったつもりだったんだが。

これがもしカザミネだったりしたら、こうはいかないに決まってる。


「いい匂いっさーーー!歓迎会はまだ始まらないのかい――!」

ほらな。

案の定ぐぎゅるるるるるなんて猛獣のような音を立てながらカザミネ様がご乱入だ。


その後の流れは御察しの通り、静寂に包まれていた城は、今宵初めて賑わいと言うものを知ることになるのであった。


                  ◆

「あひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ。敗北記念おめでとうっさー」

笑いながらジョッキを取り、カザミネはごくごくと一気にコーラを飲み干していく。

既にこれで十二杯目。 あの小さな体のどこにそんなに詰め込んでいるのか。

カザミネは次々とコーラのビンを空っぽにしていく。

「カザミネ、お前いくらなんでも飲みすぎ……」

「うるへー!私の体は今カフェインの気分なんじゃよー!?あひゃひゃひゃひゃひゃ」

だめだ……完全に理性が吹き飛んでやがる。

いや、カザミネだけならいい。

「酒を持ってこーーーい!!もっともっとじゃあああ!」

まさかの石田さんまでご乱心であり、カザミネと飲み比べ対決なるものを始めている

「石田!いい加減にしなさい!」

「お嬢様の色気程度じゃ私は落ちませんよー」

「あんだとこらーーー!!ずいぶんと生意気な口利くようになったじゃない!?」

「じゃっはっははっは!」

宴会はすでに大混乱であり、収拾がつかない事態となっている。

厳かであったはずのささやかな歓迎会はどこへやら。

これじゃあ酔ったおっさんたちの乱痴気騒ぎと大差はなく、俺は自然とため息を漏らす。


どうしてこんなことになったのだろうか?

桜と二人で戻ってきた後も、思い出すのも難しいほどいろんな騒ぎがあったが。

もはや騒ぎにもみにもまれて疲弊した頭をフル回転させて思い出すと、原因は一人の少女の乱入にあったことを思い出した。


                  ■

そも、俺達は宴会と言うものを知らない。

長山の奴のいう事は信じられないし。桜と俺は当然の如く縁がない。

そうなると自然と注目は石田さんに向くわけだが。

そもそもこの状況がすでに唯一日本人である俺たちが思い描くイメージからかけ離れたものであり。アメリカ出身の彼の脳内には、宴会=パーティーと言う、コンピューターの模範的変換能力が発揮され、冬月家にあった、パーティーが催された。


派手ではないが、しかして厳かかつ気品の漂う食事会。

口数は少なく、ただ優雅に皆がそろって食事をとり、運ばれる高級料理に舌鼓を討つ。これが上流階級のたしなみであるのかどうかは俺のような庶民が知る由もないが。

少なくとも郷に入れば郷に従え。

その言葉の通り、体をそわそわとさせて騒ぎたいオーラを出してはいるものの、カザミネと長山も大人しくしていた。

しかし。

「ごめんあそばせ」

ノックの音とともに現れたのはなんとも麗しい少女、ではなく酔いつぶれたミコトだった。

「おや?ミコト様、先ほどはどうも……してどういったご用件で?」

「えぇ、本日はお祝い事だといっておりましたので、私もお祝いをさせていただこうかと思いまして。桜様。お初にお目にかかります。あなたの守護者さんに始めてを奪われたものです」

「誤解を招くようなことを言うな阿呆」

「何々何々何々!?いったい何があったっさるばとーれ!?!?」

「てめえ!桜ちゃんというものがありながらうらやましいぞおおおお!!助平ー!変態!すけこま ごげぇ!?」

拳骨からのクローバーでの三連打……。

頑丈なやつだ。カザミネはともかく、長山のやつは頭をかち割ったというのにまだ息がある。

「ったく、黙っていろ阿呆が」


「よ……容赦ないっさ……」

「あ……うげぇ」

「ねぇ石田、どういうこと?」

「桜様はまだ知らなくていいのです。爺とのお約束ですよ?」

「だから違うっていってるだろう!!」

「あらあら、怖いわねぇ。カルシウムが足りないんじゃないの?守護者さん」

「余計なお世話だ……ってか一体どっから入ってきた?」

「玄関からよ?呼んでも誰も来ない事も、鍵がかかってないことも星の導きが教えてくれたから、そのまま来ちゃった、面倒くさいし」

それを世間では不法侵入と呼ぶ。

「面倒くさいって理由だけで不法侵入をするなよ……」

「いいでしょ?この城は、基本来るものを拒むことは無いのですもの。そうよね?当主さん」


その言葉で初めて、ミコトと桜は顔を合わせる。

桜は始め突然の来訪者にきょとんとしていたが。

「そうだね!初めましてミコトさん。冬月家三代目当主、冬月桜は貴方を歓迎します」

そう嬉しそうに笑い、石田さんに席を用意させる。

「突然押しかけた私に対してこの待遇。感謝しますわ桜様」

「桜でいいよ。ミコト」

「そう。では桜。貴方とはもうお友達ね」

「お友達……!?」

一度桜は瞳を輝かせた後。

「シンくんシンくんシンくんシンくん!お友達ができたよ!」

子共みたいにはしゃぎながらわざわざ俺を布団干しの要領で叩いて報告をして来る桜。

「わかったわかったから、うれしいのは分かったから叩くな……そしてミコト、お前はちゃっかり人のグラスで酒を飲もうとするな」

「あらあら、この場は歓迎会。人と人のつながりの場でしょう?盃を交わしてこそ、日本人は初めて親友となるのよ?」

「そうなの!?」

「息を吸うように適当なことを言うな。うちの姫さんが信じちまうだろうが」

「嘘だったの!?」

「ふふふ、ごめんなさいね守護者さん。パーティーの腰を折るようなことをしてしまって……私はお酒をいただいてよろしいかしら?」

「かしこまりました」


「お前、本当は酒の匂いを嗅ぎつけて来ただけなんじゃねえのか?」

「失礼なことを言わないで守護者さん。祝いの席に酒はつきものでしょう?」

「建前も言わずにドストレートに認めちゃったよこいつ」

「まぁまぁ、せっかくの宴会なんだからいいんじゃねえの深紅?無礼講無礼講」

「そうだよシンくん。宴会なんだから」

「えん……かい?」

「む……そうか」

「ちょっとまって守護者さん。これは宴会なの?」

「ん?そうだが」

「…………」

なにやら雷に打たれたかのような表情をして、ミコトは硬直をする。

なんだ……何か変なことを言ったか俺は?


「な……」

「な?」

「………なっとらあああああああああん!!」

「ええええええええええええええええええええええええええ!?」

けたたましい怒号は、吹きすさぶ吹雪を突きぬけて村まで響くのではないかと疑うほどの魂の叫び。


そう、猛獣の咆哮とかそういうものでは決してない。


それは。酒を冒涜された酔っ払いの怒りだった。



「ど、どうしたミコト」

「これが宴会!?宴会を侮辱しているの?これは宴会ではないわ!?宴会と言うのは日本の車座から生まれた伝統的文化!庶民が上下関係なく日々の疲れを忘れて癒しを得ると同時に!人と人とのつながりを育む儀式!それと言うのにこれは何!?会話も促進しなければ!従者と主と言う身分関係の隔たりさえも感じさせてしまうこの上流貴族にのみ与えられる選ばれし者の為だけの集まりは何!?これは宴会ではないわ!貴方!そうよ守護者さんあなた日本人の誇りさえも戦争というものに売りさばいてしまったのかしら!?」


「いやいや、売りさばいてもいないし、宴会にそんな深い意味なんてあるわけがないだろうが!!?大体、ここは桜の家なんだし、郷に入れば郷に従うのが……」

「宴会とは、すでにその伝統自体確立されているの!!それを模倣するあなた達こそが郷に入る者!あなた達こそ郷に従うべきなの!貴方の掲げる日本の心は一体何なの?そして、日本酒を掲げるなら!日本酒に見合う場所を用意すべきなのよ!」

「日本酒を持ってきたのはお前だろうが!?ってかさっきからお前は何わけのわからんことを……」

「いや、訳の分からないことじゃないっさ……シンくん」

「え?」

「そうだぜ深紅。今日俺は、過去十五年間の人生を恥じた……日本人として生まれ、大きな顔で日本人だと町を歩いていた自分を今から時をかける少年になって殴りに行きたくなる衝動に駆られるほど……俺は心を洗われた。失った日本人の心を取り戻させてくれた。素晴らしい日本人としての熱意、そして日本への愛情。いうなれば彼女は……いやこのお方は!」


【宴会奉行っさ】

【宴会奉行だ】

二名の馬鹿が涙を流しながら、ミコトを崇めるように平伏をし、話をややこしくする。というかお前等、この演説に感激するくらいならもう少し俺の話をまともに聞いてくれてもいいんじゃないか?

それともあれか?俺の話はこれ以上に退屈で支離滅裂なのか?おいどうなんだ?不安になるぞこのヤロー。お前等とのコミュニケーションの取り方一から構築し直さなきゃいけないかと思うと不安で眠れねーぞどうしてくれる。

「お前等二人はまったく……なぁ桜、何とか言ってやってくれ」

くっ、こうなったら最後の砦は我らが雪月花村当主様であり、さっさとツルの一声でも怪獣の一声でもなんでもいいからさっさとこの面倒くさい空気を一周してくれ。

「素晴らしいわ」

「ほらお前等、桜もこういってることだしいい加減に……ってなに?」

「素晴らしいわミコト!私間違ってた。郷とは必ずしも場所とは限らない。むしろ、ここで日本の伝統行事にいそしむのであれば、郷に入るのは私たちの方……そんな常識も知らずにいい加減にこんなことを始めてしまった自分が情けないわ。でも………でもね、何でだろう?日本人街の当主としてこれほどの無知と醜態を曝してしまったことへの怒りよりも、それに気づかずに安穏と日本人を語ってきてしまったことへの謝罪の念よりも……その事実を、私たちに呆れるでもなく全身全霊でぶつけてきてくれたあなたへの感謝の気持ちしかないよ!」

ええええええええええええええ。

「それはね、あなたがまだ日本の心を失っていないからよ……見てみなさい、あそこにいる黒い人……まだ己の恥を認められず、ああやってくすぶっているのだから……」

何この空気、俺が悪いのか?

平穏な歓迎会を望んだだけなのにあそこまで憐憫のまなざしに射抜かれなければならないの?


「いやいやいや、たかが宴会で大げさすぎだ」

「やれやれ、これだから戦闘民族は困ったものねぇ」

「天然パーマは困ったものっさ」

「黒コートは困ったものだね」

「むっつりスケベは」

「いい度胸だ」

「ぎゃーーー!?ごめんなさいごめんなさい!?お願いします筋肉こむらがえりの刑はやめてくださいぎゃあああ!?」


「もう、素直じゃないのねぇ守護者さんは。そんなに彼女と対等の立場になるのがいや?」


そう一言……ミコトはとことん意地悪な笑みを浮かべて、逃れようもない魔法の一言を俺に叩きつける。

「!?」

「……そうなの?」

「そうじゃない」

「じゃあなんで、彼女と対等な立場に立ち、身分も何も気にすることなく、一人の友人として共に一つの事を祝う……そんなことを拒むのかしら?むしろ、当主さんが望む宴会……というのはそういうものなのではなくって?守護者さん」

「……む」

こいつの言葉はまるで魔法だ。

一瞬でこの場にいた人間を味方につけ、気が付けば反論が出来ない。

俺が反抗しているのはそういう事ではない……とか、バカ二人への警戒とか……俺の反論はこいつの言葉の前ではすでに唯の言い訳にしか他人には聞こえず。

見事に宴会奉行様に従うしかなくなるのだ。

「……はぁ」

第一……。

「分かったよ。たった今お前らに、日本の心って奴を埋め込まれたよ……強引にな」

「シンくん……」

桜の望むこと……なんていわれてしまったら認めないわけにはいかないだろう。

雇われの身として。


「そう。それは良かったわ……そうと決まれば乾杯ね準備をしましょう」

賛成―と言わんばかりにあほ二人はせかせかとテーブルとかの排除を始める。

本当にノリがいいというかなんというか……。

その単純な脳の構造は少々うらやましい。

「あっはいはいはいはい!!」

そんなことを考えていると、いきなり桜は手を上げて飛び跳ねながらミコトへと発言の許可を求める。

登場早々からとんでもない地位を確立しやがったな……この宴会奉行様は。


「はい桜ちゃん」

「みんなでコーラで乾杯が良いです姉御!」

一瞬、俺の背中に寒気が走る。

「!?」

「そうね……確かに突っぱねたけど守護者さんのいう事にも一理はあるわ……郷に入れば郷に従う……乾杯の規則は宴会に無いのだから……ここは桜様に従うのが基本よねぇ……」


よし、逃げよう。

「あ、龍人君 カザミネ―」

全力で逃げれば俺に追いつくものはいない……あの扉を抜けて森へと出れば……あるいは逃げ延びれる……脚部に全神経を集中させ、俺は疾走を開始す……。

「シンくん確保―!」


桜には全部御見通しだった……。

まるで昭和漫画の大捕物のシーンのような光景を作りだし。

あえなく御用となり地面へと組み伏せられる……。

「離せ!?離せって!?」


「大丈夫だよシンくん!コーラで乾杯するだけだから……ほら、好きでしょ?黒い色」

「だからって!?黒い液体なんぞ飲めるかー!?そんな自然に存在しないような色の飲み物飲めるかぁああ!」

「何意味わからないことを言っているの守護者さん。大丈夫よ、甘くて舌が焼切れるくらい痛くなるウーロン茶だと思えばいいのよ」

「焼切れるのか!?焼切れるのか!?」


「往生際が悪いぜ深紅?いつものクールなお前はどうした?」

「やめろ!?マジでやめろそれは洒落にならん!?」

「さあさあ、観念するっさ……」


【せーの】


【かんぱーーい】


その日……俺は初めて断末魔と言うものを出した。

喉が焼けるかと思うほどの激痛と……肺へと何かが流れ込む感覚。


桜の飲ませ方が原因で、実際俺は死にかけていた。


もう二度と飲むまい。

俺は心の中でそう何度も何度も誓いながら、闇へと落ちて行った。


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