ブランコ
ぎーこ、ぎーこ、古びた音がする。
辺りは真っ暗、星も、月も隠れるこの不気味な夜に都心から離れた寂れた公園にいるなんて警察官に補導でもされそうなのに少女はそんなことには構わない。
なんていったって、生まれてはじめて好きな人に告白をしたのだから。そして…生まれてはじめての失恋をしたのだから。
ゆらゆらとブランコを揺らす少女の横顔は悲壮感にあふれている。少女の赤く腫れた大きな目からは涙がながれ、ピンクの頬を、赤くふっくらとした唇を通り地面へと次々に落ちていく。
そうして吸い込まれるように地面へと染み込んだ涙は一体どこへ消えていくんだろうか、同じように私もどこかへ消えていってしまいたいと昔の歌人のようなことを考えながらブランコをこぎ続ける。
ふとした瞬間に否が応でも思い出してしまう言葉。
「勘違いしてんじゃねぇよ」「きもちわるいんだよ」「もう、付きまとわないでくれ」そんな言葉が頭のなかでぐるぐると駈けていく。言葉がナイフとなって少女を傷つける。
ぎーこ、ぎーこ、少女の心の悲鳴のようにブランコは鳴り続ける。
それから何年もたってからそこは壊されることになったが結局それは中止となった。何人もの男性の命が失われたからだ。御払いをしても公園を壊そうとするかぎりそれは止まることがないので仕方なく、工事を中止にしたのである。
ぎーこ、ぎーこ、今も音は鳴り続ける。