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無限奇想集  作者: δ
3/5

2:童話的世界観

*ねこの世界

後世どのようなシナリオが事実として語られるかはともかく、その異変を初めて異変と認識したのは、ある種のねこであった。彼らは、その独特の世界認識に基づいてそれを異変だと判断したが、その独特の行動原理に則ってそれを無視した。彼らからすれば、それは異変は異変でも、コイノボリが縄を振り切って飛び去っていった程度の異変でしかなく、したがって何らかの対処が必要だとは考えもしなかったのだ。もっとも、考えたところで、実際に行動に移すことはなかっただろう。ねこというのは、元来そういう生き物なのだ。ねこの手を借りたいときには、その点に留意する必要がある。


*決闘

気が遠くなるほどの昔に生きていたという読心術師。彼らは時に決闘をした。互いの思考を読みあい、フレーム問題、無限ループ。結局その場に向かい合ったまま立ち尽くす。

その一部は現在でも残っており、その姿からその場所に寺門が造られることもある(東大寺南大門の物が有名)。また、TSUTAYAなどの出入口にも時たま見られる。


*電柱と私

ある晩、散歩に出た私は公園で落ち込んでいる電柱を見つけ、相談にのる。電柱の語る壮大な夢に、私はぐいぐい引き込まれていく。そのうちに電柱が、大切な何かを探しに行くと言い出す。そうして二人のあてどのない旅がはじまる。


*嘘

街を歩いている時に、段ボール箱にネコが入っているのを見かける。なんとなく近づいて、家で飼えないだろうか、などと考えていると突然声が聴こえる。

「おい」

『なんだい』

「すこしは驚けよ」

『どうして』

「だってお前、ネコが喋るか?普通」

『普通とか、よくわかんない』

「お前変わってるな」

「よく言われるぜ」

「お前には聞いてねえよ」

「お前には言ってねえよ」

「五月蝿いな、喧嘩なら外でやれよ」

「ほっとけよ、キリがないだろ」

『ちょっとまって、なんか多くない?』

「ま、全部俺の作り話なんだけどな」そういって彼は鍵のかかっていない小窓を開けて出て行ってしまう。わりと上機嫌らしい。あとに残された僕は、床の小皿をひろい、そういえばカップ麺に湯を入れたままだったことを思い出してがっかりする。


*夜明け

目の前には、無限の広さの机が広がっている。無限の縁にたたずむ僕。かといって、なにも始まりはしない。しっぽのあるサイコロから、目が全部落ちてしまう。針のない時計が鳴り響く、その時が朝の六時半、夢の終わりだ。

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