1:言葉遊びの非日常
*朝食シリアス
丘の上に小さな家があった。若い夫婦に、子供がひとり。日曜日の朝八時、三人はそろって朝食をとる。牛乳にひたったシリアスを口に運ぶと三人とも途端に無口になり、思い思いに食べ終わってから話すことについて思索をめぐらす。父親は転勤の可能性について、母親は祖母の病状について、そして息子は今日が自分の誕生日であることに誰も言及しない現状について。
*オレオ詐欺
オレオレ詐欺と勘違いして振り込んだところ、自宅に大量のOREOが送りつけられる。返品に応じてくれない。しかたなく近所におすそ分けして回ると、「オレオの人」などという奇怪な二つ名で呼ばれるようになる。やがて自宅にOREOがすっかりなくなってしまうと、どういうわけか寂しくなり、ポケットに財布をねじこんで駆け出す。
*エウス滝雄
『ん…、タキオ』
「え?」
『エウスタキオ。「エウゥゥゥス!タキオォォ!」のエウスタキオ』
「逆じゃないん」
『いや、プロレスラなんだ』
「お、おぅ」
『で、いっつもエウス被って試合出てんの』
「マジ?恥ずかしないんかな」
『まぁ、プロレスやしな』
「え、で絶対エウス脱がないとか?」
『いや、結構脱ぐよ。てか試合中とかこうやって脱いでくるくる回して観客席とかに投げちゃう』
「うわー、ハイテンションやな」
『で観客もさ、ひろって持って帰ったりするんだよね』
「それ絶対家帰ってから『何でエウスなんか持って帰ってきたんやろ』ってなるって」
『あー、わかるわかる』
補足
エウスタキオは実在の人物ですが、エウス滝雄は架空の人物であり、エウスなどという謎の物体も存在しません。いや、存在するかもしれないけれど、耳かき一杯分さえも関係ありません。あ、エウス滝雄の本名は滝山四郎です。