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番外編2



「え?プール?」

「そう!大磯にある、あの超有名巨大プール!!

 ねぇ、ゆめぇ、行こぅよぉ~!!」



ゆめは困ったように眉間にしわを寄せ、首を傾けた。

言いにくいけど、実は断りたいときにゆめが見せる仕草だ。



ゆめはこう見えて結構頑固だし、嫌なことはきちんと断るし、自分が納得してなければ人に流されたりしない。


このまま押し続けてはやばい!

絶対に希望とは違う方向に話が流れてしまう!



わたしは志津子に視線でヘルプ!を訴えた。



「実は、チケットを買っちゃったのよ。

 ラジオショッピングで格安で売ってたから、受験勉強の気晴らしに一日ぐらいって思って。

 それに私たち、3人でプールになんて行ったことないじゃない?

 だから高校生活の記念に行ってみたくて…だめかしら?」



うまい!

わたしは心の中で拍手を送った。


何でも直球勝負な私と違い、志津子は人の心理をよく読んでる。

ゆめは感情的なことに弱いから、きっと戸惑いながらも了承してくれるに違いない。

案の定、あまり乗り気ではないものの、行く気になってくれたようだった。



「…行ってもいいけど、でも私、水着とか持ってなくて…」

「それも!みんなで買いに行きたいの!

 そういう女同士のショッピング、楽しくない?

 お互いの水着の選びっこしよ~よ!」



いろはさんを交えた会談(?)で考えた誘い文句。

でもわたしが言うとかなりうそ臭い。


わたしは自他共に認める、女捨てちゃってる系だからね!

正直、ファッションになぞちっとも興味がない。

水着なんざ、スクール水着で十分だと思ってるぐらいだ。


そんなわたしが水着欲しがるか!?って突っ込まれたら、返す言葉もないんだけど。

…目覚めた、とか言ってみる?




でもそんな心配杞憂に終わったみたい。

ゆめがうれしそうに瞳をきらきらさせて、「それもいいね」って言った。

そういう時、普段見せている大人びた、ちょっと警戒したような表情が、ぐっと幼くて魅力的になる。

ホント、ゆめってかわいい!


早くゆめがにーちゃんと結婚して、ほんとの姉妹になってくれたら良いのになぁ~。

お姉ちゃんと呼んで、抱きつきたい!!



そのためには、何が何でもにーちゃんにがんばってもらわねば!

私は気持ちを新たに、この作戦の成功のため努力することを改めて誓った。



「じゃ、水着、いつ買いに行く?」

「明後日でどう?

 明日、私三者面談が入ってるから」

「…そういえば、ゆめも明日じゃない?

 お母さん、来てくれるの?」



ゆめは寂しそうに首を横に振った。

彼女の家は、未だに複雑だ。



「これまでも来てくれたことなかったし、今更なんだけど…

 どうしても仕事の都合がつかないって言ったら、代わりの人って聞かれて。

 申し訳ないんだけど、龍さんが都合つけて行ってくれることになって…」


恥ずかしそうに頬を染めるゆめは、ホント、恋する乙女だ。

妹の私に遠慮してか聞いても「そんなんじゃない」って言うんだけど。

にーちゃんのこと好きってゆめが言ってくれたら、私が町内パレードするぐらい喜ぶってなんでわかってくれないんだろ?

う~ん、もどかしい。



…でもさ、ゆめの保護者気取りって…にーちゃん、なんか方向性ミスってないか?

きっと誰にもまかせたくなかったんだろうけどさ~。

なんだか、私の野望の足を引っ張ってるのがにーちゃんじゃないかって気がしてきた。


わたしだったら、好きな人に成績見られて、学校での話されるのって、ヤだな。

でも、ゆめは成績も素行も良いから、さして恥じることもないんだろうな。

うらやましいなぁ~。


…私なんか…かーちゃんのお説教がコワイ……私もにーちゃんに頼もうかなぁ…?



あぁ、いかんいかん!

むやみに落ち込むところだった!




「とりあえず、明後日。

 場所は、原宿辺り見てみる?」

「そうしよう!…って、よくわからんけど」

「私、わからないからお任せします」



とりあえず、計画は順調!

あとはどうやってゆめにセクシーな水着を着させるか、だな。






「ねぇ、いろはさん、どうやったらゆめにセクシー水着買わせることができると思う?」


計画の第一段階が終了し、ボスに経過を説明し終わってから聞いてみた。

うーん、と唸ってから、「そうねぇ…」と宙を仰ぐいろはさん。


もともと消極的なゆめのことだから、見事なプロポーションを惜しげもなく見せるためという目的を悟られたら絶対に買わないだろう。

…てか、絶対にプール来ないし!

でもあんまり普通すぎるとパンチが効かないし、ゆめに似合ってかつにーちゃんをノックアウトできるものでないと困るわけで。

課題としては難しい。


個人的にはビキニが良いなぁ~。

体育で一緒に着替えるときにチラッと見えたゆめの胸は、とっても豊かでやわらかそうで、女の私でももふもふしたくなる感じだったし。



「そういえば、龍さんってどんな水着が好きなんでしょうね?

やっぱり、ビキニとか?」

「男と女では好む水着が違うっていうもんね~」

「龍が好きかどうかわからないけど、昔の彼女はビキニ率が高かったような…」

「にーちゃんの彼女って、みんなセクシー系だったもんね~

 熱いっつぅかさ、ホットな女?」

「…でもさ、案外見慣れない清純派が案外ぐっとくるのかもしれないよね?」

「まぁ、確かに。

 だいたい、ゆめちゃんに食指が動いたこと自体、龍にしてみればレアなのよ。

 ゆめちゃんみたいなタイプとは絶対に付き合わなかったし。

 今回の場合ゆめちゃんのセクシーボディを見せ付けて煽ることだけじゃなくて、

 他の男がゆめちゃんにちょっかいかけることによって、

 嫉妬心を煽りたいってとこもあるし…

 …ちょっと龍の態度が安心目線過ぎるって言うか、ねぇ?」

「確かに。龍さんってゆめが大人しいからって安心しきってるとこありますよね?」

「そうそう」


何気ににーちゃんの評価は低い。



「じゃあ、最近流行のちょっと子悪魔系でいってみますか?

 でも、あんまりどぎつい色似合わないし」

「…ゆめ、背もあるし、ハワイアン系の水着が案外かわいいかもよ?

 淡い色がよく似合いそうだし」

「それもいいかもねぇ~」

「白なんていいんじゃね?」

「いいねぇ!濡れると透けるやつとか?」

「…それはダメだろ、オヤジめ!!

 …って、とりあえず”清純ですがすごいんです”系探してきて?」

「らじゃであります!」



私と志津子は大きな使命を申し渡され、さっと敬礼した。












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