よくあるかもしれない異世界召喚――初代勇者編7
「とても……とても強い方。はじめて見ましたわ」
私を呼び出してくれた一人である風の乙女が微笑を浮かべる。サイズは小さいけど、とっても美人さん。
「私の主様になって下さいませ」
美人の子が突然そんな事を言い出す。主ってさ、よくゲームにあるアレの事だよね。アルティーラの笑みは絶やしていないけど、契約はまずいと思う。
私がこの世界の住人ではないし。
「いつだってお前はこんな感じだな」
そこに、火を纏った精霊が現れた。二人の間で火花が散ったような気がするけど、多分気のせいじゃないよね。いかにも仲が悪い表情を浮かべてる。
「まさか……アナタもですか?」
「また被ったのか」
その会話から察するに、選ぶ主が毎回被っているのかな。私は一人残されてはいる状態で会話が繰り広げられているけど、お互いの表情は楽しげだから喧嘩友達というヤツだろう。
少し放置していたら、いつの間にか二人がジィッと私を見ていた。
「変わった方ですわね」
「流石俺たちが選んだ人間だ」
火の精霊の言葉に、風の乙女が反応する。
「人間に近いですが、人間ではありません!!」
また喧嘩が始まった。火種ってなくなる事はないんだなぁ。でも今回はアルティーラの話なので、ちゃんと訂正をいれておく。
「アハハ。俺は古代人種って存在で、人間とはちょっと違うかな。後、俺この世界の住人じゃないから、主は無理だよ」
ついでに、主になれない理由も言っておく。ただのコスプレイヤーだからね。
「それでも構いません。貴方様以外の主はもう考えられません」
「俺も同感ですね。アンタ以上のヤツはいない」
どうやら世界が違うのは理由にならないらしい。本当は初めて見たけどアルティーラであると自覚すると、見慣れたものへと認識が変わる。
どうやら自分はアルティーラだと強く思い込めば思い込む程、アルティーラに近づく。
大丈夫。ここは私にとっては現実じゃない。寧ろ夢の世界。
憧れのアルティーラになりきれ!
ここは地球じゃない。
なりきった所で誰もつっこまない!!
いっその事、ここまで来たんだから遣り通せ!!!
「それじゃあ……におかしいかもしれないけど、君はエンラ。貴方はフウカでどうかな?
何も知らない俺だけど、友達になってくれるんだよな」
こういう時、アルティーラはあっさりと受け入れる。笑みを浮かべ両手を差し出す。これぞ最強無敵なアルティーラの笑顔。見るだけで幸せになると定評のある笑顔だ。
見ていたら、二人とも頭を下げ、風と火を纏う。
「フウカ。素敵なお名前ですわ」
「エンラ。良き名をありがとうございます」
何故か礼を言われた。
「うーん。何か強くなってる? いっきに飛び越えたっていうか」
腕を組んで悩む素振りを見せると、フウカとエンラが同時に首を縦に振った。
「主様の力が強いからですわ」
「我々は主に名をつけてもらい、主の力をいただきます」
つまり、アルティーラ+勇者の特権で相当強くなったらしい。すごいね。異世界って。フウカとエンラの状態を見つつも、私は遠く離れた魔王城を見る。
「俺さ、これから魔王城に行って話しを聞くんだ。ついてくる?」
近所のコンビニにでも行くような軽い言い方で言う。
アルティーラらしい言い方。
「「勿論です」」
同時に言われ、私はくすりと笑いを漏らす。
「じゃ、皆で行こっか」
アルティーラは何をしてもアルティーラだ。
そのキャラ崩しは絶対しません。