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よくあるかもしれない異世界召喚――初代勇者編3



 わんこのアルティーラにびびりまくった人たちは奥に引っ込み、変わりにちょっと弱腰な人たち――って言っていいのかは微妙だけど、とりあえず腰の低い人たちが私の前へと並ぶ。

 格好を見ると、明らかに神官とかそっち系?

 さっきの横柄な人たちは成金っぽかったし態度はでかかったしで、多分貴族だろうとは思うんだけど。


「勇者様。先ほどは…先ほどは本当に、本当に、本当に…」


 ……え? 反省の溜め中?

 ちょっと若めっていうか、かなり若い人たちが今にも首を吊りそうな悲壮感を漂わせながら声を震わせる。

 

「…は?」


 震わせるだけなら良かったんだけど、つい間抜けな声が漏れる程見事な土下座をって…アルティーラはわんこだけど、こんな間抜けな声は出さないよ!

 しまった。折角のアルティーラにこんな唖然としたお馬鹿な表情を浮かばせるなんて。


 あぁ。けど痛そう。

 ゴンッと音を響かせ、神官っぽい人は額を床へと擦り合わせる。これ、石畳だよね。痛いんじゃないかなぁ。

 案の定ゴリゴリと擦り合わせた額からは血が滲み、すっごく痛そうな傷が出来上がる。


「…別に、アンタの態度が気になったんじゃないし。そんなふうに怪我なんてするもんじゃないだろ」


 脱・剣呑なかっこいいアルティーラ。

 そしてこんにちは。いつものわんこなアルティーラ。


 少し困ったように笑いながら、私は右手の平を額へと翳す。ここは異世界。そしてさっきの人たちの言う事が本当なら、私はきっと魔法が使える……はず!

 なんたってアルティーラだからね。

 アルティーラの得意な魔法の一つ。【癒しの風】。アルティーラは複雑な言葉が嫌いらしく、わかりやすい単純な名前を自分の魔法としてた。

 ふわり、と身体の中から風が流れ、私を取り巻く。おぉぉ。これが魔法ね。初体験のはずなのに、何故か私の感覚はこれを当たり前だと受け止めてる。

 流石はアルティーラのコスプレ。

 ちょっと違うかもしれないけど、深くは考えない。


 私から溢れ出した魔力の風は、額の傷を見事に癒す。この辺りは古代人種の反則業なんだけど、アルティーラの魔力によって傷を癒すから、癒された本人の生命力が損なわれる事はない。

 ちなみに、古代人種は属性の恩恵があるから、自動回復機能付き。魔力はほぼ無尽蔵。そんなチートキャラなアルティーラ。

 見えないけどね。そんなチートキャラには。



「私の魔力が……損なわれていない」


 神官の人が驚いたように声をあげた。

 というと、回復系の魔法は本人の魔力とかが損なわれるんだ。この世界って。ん…つまりそれって……。

 ちょっとミスったかも。

 なんて私が後悔する間もなく、今度は神官の人が神様でも見るようなキラキラとした眼差しを向けてくる。


「女神の使い…」


 そしてぼそりと呟く。

 

「女神の使い?」


 一応何それって、とばかりに漏らしてみたけど、神官のキラキラとした輝きは一切損なわれない。

 しかも、私の敬愛するとかなんとか言ってるし。


 あー…やっぱ勢いで魔法使ったのはまずかったかも。

 でも。でもっ。アルティーラの魔法は使ってみたかった! うん。だって、折角アルティーラ(もどき)になったんだもん!!








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