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伝説という名を背負い投げする魔・女 ・0

相変わらずな男前な女性が主人公。今回はファンタジー+恋愛な小ネタ。

年齢はお互い数千歳とかそういうレベル。

外見年齢はルックは20才。白髪銀眼。

アーテルは20代後半。黒髪金眼。

外見、色等の描写は無し。

魔女ルックスルーナエ。

魔王アーテル。

そんな二人の旅模様の序章。

多分、魔王は魔女が大好き。寧ろ愛してる?






 今から遠くない過去に、最強の名を頂く魔女が在った。

 形無き魔力は無尽蔵。

 尽きる事のない魔力を代償に、様々なものを生み出す。


 200年程蘇った魔王も呆気ないほど。寧ろ可哀想になるぐらいにあっさりと瞬殺され昇天した。今では魔女の下僕に下ったという話しだが、真相は定かではない。

 だが、それ以降魔族が人界で悪事を働く事は激減したし、魔王は復活していないのだろうという話で落ち着いた。


 そしてその伝説の魔女の生死も……。




 

 不明。








 伝説の魔女に関する事も今ではあやふやな情報しかなく、その存在が実在したのかどうかすら、今となっては口伝で語り継がれる程度のもの。

 ただ、一目その姿を視界に収めたものは魔女の虜になってしまう。という別の意味でも伝説と名高い美女だという噂――である。














「くしゅ」


 競り上がってきたものが口から音として飛び出した後、突然襲ってきた悪寒に首を傾げた。今日の陽気はそれ程寒いというものではない。

 風邪をひくような鍛え方もしていないし、それ以前に薄着とは程遠いような格好だ。

 被ってはいないものの、フード付きの外套の生地は特殊仕様。温暖寒冷関係無しに常温を保つという優れもの。


「風邪か? 貴様がひくはずないか」

「少しは心配しなよ。まぁ、アンタに心配されたら悪化するけど」

「貴様を心配する程俺は落ちぶれてない」

 頭一つ分程違う男たちが睨み合うが、すぐさまその視線は逸らされ、二人同じにとてつもない寒気が襲ってきたとばかりに自身の身体を擦りだす。

「真似しないでよ」

「それはこちらの台詞だ」

 今度は睨み合う事なく、背の低い方の男がもう一人の男に背を向け、さっさと歩き出した。これ以上は一緒に居たくないとばかりに。

「待て。俺も貴様などと共に在りたくはないが、なければいけない理由があるだろう」

「知らないよ。俺には関係ないし」

「元を質せば貴様の落ち度だ」

「殺されなかっただけありがたく思え。も・と・ま・お・う・さ・ま」

「ハッ。今も魔王だ。そこまで耄碌したのか。伝説と名高い美女という噂が蔓延っている男女オトコオンナが」


「「……」」


 足を止め、後を振り向くと魔王――と呼んだ男を睨み付けた。その眼差しは強烈で、それだけで心臓の弱い者は死んでしまいそうな程強いもの。


「……止めた。アンタを殺せば俺の力が失われる。作り出すのに千年程かかるのは流石にメンド」

「相変わらず化け物か……限りなく本音だが冗談だ。俺でも千年じゃ作りだせん」

 肩を竦める魔王から面倒そうに視線を外すと、見渡す限り緑一杯の視界にうんざりとしたように目を細めた。

 緑は嫌いじゃないが、こういう生活を5年程続ければ見飽きてしまう。そろそろ街の明かりが恋しいと口に出してみれば、魔王から額を小突かれそうになった。

 ちなみに、軽くではない。

 大岩を粉砕出来るようなデコピンを紙一重で避けると、それに合わせて右拳を交差させるように繰り出す。が、魔王の障壁によってあっさりと阻まれた。


「チッ。障壁か」

「舌打ちをするな。一応女だろう男女」

「頭の悪い元魔王だな」

「貴様にだけは言われたくない」

「……ハァ。何度目の会話だろうな。まぁいいや。俺の名は……ルックっていう立派なものがあるんだけどな。何時になったら覚えてくれるのかな元魔王様」

「随分と省略されてるがな。そして現魔王だ」

「はいはい」

 魔王の言葉にルックは肩を竦めた後。

「分かってるよ。アーテル様?」

「……」

 ルックの言葉に、魔王――アーテルは闇色の瞳に物騒な輝きを宿しながら、ルックを見下ろした。

「貴様は本当に殺したくなる性格をしているな」

「殺せないくせに」

 フフ、と笑いを漏らすルック目掛けて、アーテルの魔力が襲い掛かるが寸前で止まる。それを分かっていたかのように避けようともしないルックに、アーテルの機嫌は尚更降下するが、そんなものは知った事じゃないとばかりにルックはアーテルを置いて歩き出す。

 今度は歩みを止める事無く、その距離は段々と離れていく。

 遠ざかるルックの後姿を視界に収めながら、アーテルは息を吐く。



「あぁ。殺せないさ。俺に……殺せるわけが無い」



 体中の空気を入れ替えるように吐き出した息とともに、何とも言い難い感情を秘めた音も吐き出した。

 その間もルックの背は離れ、今となってはその姿を捉える事さえ難しい。が、二人は離れられない。

 ルックとアーテルの間に生まれた、呪いに等しい絆によって……離れる事は出来ない。






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