表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/57

猫又と王子様・5

ティとエイラの会話。

短いです。




「俺はエイラって言うんだ。よろしくね」


 人好きのするような笑みを浮かべ、私に手を差し出してくれるのは第四王子様。あの変態王子の弟に位置するらしい。


『……』


 警戒を強めたまま下から鋭い眼差しを向けていると、エイラと名乗った少年が苦笑いを浮かべる。少年っていう年齢でもないだろうけど。


「警戒されちゃってるよね。ごめんね。変態兄上があんな暴挙に出るとは思わなかったんだよね…」


『……』


 そりゃ、生後二ヶ月の子猫に手を出すなんて思わないよね。まったくもって思わないよね。生後二ヶ月なんていったら子供もいい所でしょ。 

 あ、思い出したら寒気が。

 ぞわりと毛を逆立てた私に、エイラが眉間に皺を寄せて何かよく分からないけど辛そうな表情を浮かべる。

 やっぱり、身内に変態がいると辛いんだね。身内に変態は居なかったからわからないけど、きっと後ろ指を差されるようなものなんだろうと思う。

 少し沸いた同情心にどうしようかなと悩むんだけど、ユゥがここに連れて来た時点で多少は安心していいのかもしれない。だってユゥは、私にとってはお母さんの次に安心出来る存在だもの。

 頼れるお兄ちゃんは、妹の不利になるような事は絶対にしない。 

 それをわかっているから、私は少し肩の力を抜いてみた。


『変態は今更です。契約は取り消せません。でも、一緒にいる必要はないと思ってますよ』


 せめてもの妥協案、かな。 

 契約を結んでも、人前に姿を現したくない獣は多々いるし。迷わずに言い切れば、エイラはやっぱり苦笑を浮かべてた。

 兄弟という立場だと、やっぱり私とは見方が違うらしい。

 

「そうだね。繋がっているから、一緒に居る必要はないね。それは…」


『…ティです。知ってると思いますが』


 私の方を見て言いよどんだエイラ。名前を呼んでいいのか悩んでいそうだったから、とりあえず名乗ってみる。しかし、さっきから言葉が硬いね。

 エイラの所為じゃないから、こんな感じの悪い態度は止めなきゃって思うんだけど。


「うん。ありがとう。それは、ティちゃんの思う通りでいいと思うよ。あくまで、獣たちが結んでくれてるんだもの」


 迷わず言い切るエイラ。

 …でも、ちゃん、か。生後三ヶ月だもんね。仕方ないよね。中身がん十年経ってる人なんて言えるわけがないし。

 出そうになる溜息をグッと堪えて、私はエイラを見上げた。


『とりあえず、成人の儀を迎えるまで、私がエイラのお兄さんと会う事はないよ』


 少しくだけてみた。

 そして何故成人の儀までって?

 身を守る術を身につけるまで会うのが怖いからですよ。

 別に生前もてていたわけではないけど、あの第三王子の目はホントーに怪しかったの。何ていうか付けねらう変態チックっていうか。

 思い出すと震えがくるけど。

 ブルリ、と思い出しただけで震えた私に、ユゥが頭をすり寄せる。それに応えながら、私は横目でエイラの反応を伺ってみる。

 うん。至って普通。

 

「そうだね。俺もその方がいいと思うよ」


 しかもあっさりと同意した。迷った素振りなんて見せずに頷き、にこやかに笑いながら人差し指を一本だけ立ててみせる。


「成人の儀の後、ユゥと契約を結ばせてもらうんだ。その時、家族立会いの下で会ってみる?」


『……』


 ユゥも契約するんだ。

 そんな疑問を込めてジッと見てみたら、苦笑しながら頷いたのがわかった。うーん。甘やかされてる気がするのは何でだろう。

 別に魔力を持った獣は沢山いるんだから、猫又から二匹も出す必要はないんだよね。しかも見た目はラブリーな黒猫。肩に乗っかると王族の威厳は急降下。寧ろ愛らしく親しみが沸いてくるという猫又族効果。

 エイラは兎も角、あの第三王子は似合わないと思う…。

 心底合わないと思う。

 兄弟だから色彩もパーツも同じ様な感じだとは思うんだけどね。

 でも、やっぱり見た目って大事なんだなぁ…。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ