表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/57

猫又と王子様

猫又(転生)と王子様の出会い編です。本当に出会いだけなので、ものすごく短いです。




 生まれ変わったら猫又でした。

 いやホント猫又だったんだって。


 艶やかな黒の毛並み。

 知的な金色の瞳。

 生まれながらに二つに分かれた尻尾。

 元々、由緒正しき猫又の家系に生まれたらしいから、一年後ぐらいには尻尾が分かれたらしいんだけどね。

 まぁ、兎に角そんな猫一家に生まれてから早二ヶ月。

 何故か私は生涯のパートナーになるであろう男性と向かい合っていた。ちなみに、色っぽい意味合いはまったくない。

 私が向かい合っている人物は人間。この国の第三王子様という立場。お母さんに聞いた話しだと、この国の王族はペット、というには御幣があるけど、とりあえず飼うらしい。ソレは獣だったり鳥だったり、爬虫類だったりと割と何でもあり。

 けれど一つだけ重要な事がある。

 必ず、魔力を有した存在じゃなければならないという事。

 後は相性。これはまぁ、死ぬまで一緒に居るって事で必須じゃないけど重要だよねって所かな。

 互いを認め合い、パートナーとして契約を結ぶ。何が出来るかはそれぞれ違うけど、契約を結びたがる王族としては、実のところ何でもいいのかもしれない。

 王族は魔力のある動物をパートナーとしている。

 これが、昔からの取り決めらしいから。

 

 そこまで考えて、私は顔だけは整っている王子様を高い場所から見下ろす。

 生後二ヶ月という子猫の私が、何故親元から引き離されて王子様なんていう人種と対面しているか。

 本来なら有り得ない。

 一歳の誕生日を迎えて初めて親から離れる。それまでは魔力が安定しないとか。私の場合は既に尻尾が分かれちゃったりしているから、他の猫又と一緒にしちゃ駄目なのかもしれないけどね。

 けれど今頃。王子様なんぞと向かい合っていなければお母さんや兄弟たちとぬくぬくしていられたのに、どうして私がこんな目にとばかりに右手を振り上げて座っている箪笥へと叩き付けた。


「「……」」


 次の瞬間、重なったのものは沈黙。


 それだけで苛々が収まるはずもなく、私は口をギュッと噤んだまま猫パンチを繰り出し続ける。


「不満そうだな」


「……」


 箪笥へと肉球を叩きつけて、猫パンチを繰り出している場所なんて見れば今更だと思うんだけどね。

 そうは思ったけど、口は開かない。


 どうして私がこんなに怒っているか。

 それは、目の前の──絵本から飛び出たような美形の王子様が、強制的に私をパートナーにしたから。

 私が普通の猫又だったら、こんなに腹をたてなかったのかもしれない。しかし、私は生前の記憶がしっかりとある。しかも人間のものだ。

 本来ならばお互いが話し合って結ぶ契約を、火事場泥棒のように勝手に結ばれた。それに腹をたてるのは当然だろうと思う。

 だから私は口を開かない。

 契約を結んだ相手なら、人化しなくても言葉が通じるらしいけど、そんな特典を使う気分にはなれない程、私は機嫌が悪かった。

 とはいっても、所詮見た目は可愛い子猫。

 目の前の王子様は堪えた様子などまったく無く、目の奥に冷静な光を宿しながら私を観察している。

 この淡々とした表情は、王子様の銀色の髪と良く似合う。

 瞳の色も碧色。

 ホント、眺めるだけなら申し分の無い八頭身。

 中身はか弱い子猫を無理やり親から引き離すような鬼畜だけど。


「何か変な事を考えていないか?」


 ……どうやら感は良いらしい。

 しかし、声もいいな。この王子様は。


「…ふぅ。いい加減機嫌をなおさないか?」


 けれど王子様は、私が何に対して怒っているかなんてまったく考えもしてないのか、さも当然とばかりに言い出す。


「……」


「これから長い付き合いになるのに、初日からこれだと先が思いやられる」


 先が思い遣られるのはこっちの台詞だ!

 怒鳴り散らしたくなったが、相手を喜ばせるだけのような気がして、私は辛うじて理性を総動員させて踏みとどまった。

 ひょっとしたら、ほんの少し声は漏れていたかもしれない。

 ニヤリ、と口の端を上げて笑みを浮かべるという、爽やかとは程遠い笑みを浮かべる王子様が私の目に映ったからだ。

 折角なら爽やかに笑えばいいのに。目の前の王子様だと知的にかな。間違ってもこんな悪人面で笑ってほしいなんて思わない。


「そういう声、か。知ってはいたが、目の前で聞くといいな。もっと声を出さないか?」


「………」


 悪人面から一転。今度は流し目をし出した王子様を目の前に、私はとある事を悟る。


 うん。

 変態だ。もしくは猫好きさん。

 対人間ならば色っぽい流し目だけど、それを見せた相手が生後二ヶ月な子猫だと、ただの危ない人にしか見えない。


 ジリジリと距離を詰める王子様と、退路を見つけるべく視線をさ迷わせながら後ろへと下がる私。


「早く成人すればいい。お前も、他の猫又と同じなのか?」


「………」


 口を開けばなんか残念な事しか言わない王子様を横目に、私は勢いをつけて箪笥から箪笥へと飛び移る。ここが閉めっきりの部屋じゃなくて良かった。

 お母さん。お父さん。兄弟たちよ。


 今帰るから待っててね。

 そして匿ってくれると嬉しいよ!






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ