拍手地味な女の子《政輝とはるちゃん》
あの空中散歩から何日か経ったとある日。
傍から見ると輝かしいばかりのオーラを放つ人物が壁に背をもたれ掛けさせて、何かを待っているように見えた。
あの三人と話し合いをしてからまだあんまり経ってないのに、すごい根性だなぁ。さすがお祭り部員の従兄弟。
きっとチート力だけなら委員長や緑化委員を凌駕しつつ、お祭り部員と張るのかもしれない。なんたって従兄弟だから。
とりあえず横を通り過ぎる時、お菓子をもらったお礼を言わなければと一応足を止めて見る。
「他校生のチート君こんにちわー」
「政輝だ」
「うんうん。会長さんねー」
「……本当に名前は呼ばないんだな」
何処か呆れたような表情で言われたんだけどね。
「こっちの方が覚えやすいし」
「そっちの会長はなんて呼んでるんだよ?」
「こっちの会長さん? 輝いてる人だよ??」
「………」
「前は演劇部長って呼んでたんだけどねー。三年になって部長は辞めちゃったから、呼べなくなっちゃったんだよね」
「名前で呼べばいいだろ」
「何で?」
「何で…って……え? 俺がおかしいのか?? 名前で呼んだ方が楽だろって思うのは俺だけか??」
「へぇー」
「…ものすっごく関心のなさそうな相槌だな──…あ、こんな所にパウンドケーキが」
「ありがとう!!」
「やるとは言って…いや、なんでもない。色々あるけど…あぁ。全部なのか」
はむはむはむ。
「食べてる間は大人しいんだな」
はむはむはむはむ。
「食べてる間は口を開かないんだったな」
こく。はむはむはむはむはむ。ごっくん。
「…ほら、飲み物」
「ありがとー。所でさ、前回はなんでこっちに来たの??」
「唐突だな」
「委員長たちに聞いても教えてくれないから気になった?」
「疑問系かよ…いや、答えるよ。答えるからこれも食ってろ」
こっくん。
はむはむはむ。
「……政継が最近ここの話しをするようになったから気になったんだ」
「前からしてないの?」
「ちょうど食べ終わったのか。さすが飲み物は偉大だな……じゃなくて、前とは話の種類が違いだしたというか」
「へぇー。変わらないんだけどねー」
「……無自覚か」
「あ、これも美味しー」
「………美味しくないモノがあるのか?」
「あるんじゃない?」
「……色々つっこみたいけど何でそんなに食べれるんだ?」
「食べれるから」
「なんだろうな。この、会話が成り立つようでなりたってないような感覚は…」
「初めの頃言われてたかも。今は言われなくなったけど」
「へぇ…」
♪~♪~♪~。
「あ 、今度は私だ。誰だろー」
「………」
「まだ近くにいるよー。え? んー……むぅーーー。なら行くー。ちょっと待っててね!」
「あー…用事は終わったし、俺の事は気にしなくていいぞ」
「そう? お菓子ありがとー。美味しかった! じゃーねー」
待っててねーー。
私のチョコレートケーキっっ!!
遠くで聞こえる叫び声。
「……楽しいのか?」
「まぁ…飽きないよな」
「そうか?」
「あれ、序の口だから」
「?」
「はむちゃんの食欲、あれ、片鱗すら見せてないから」
「は?」
「俺たちも吃驚だけどな」
「結構食べてたぞ??」
「それでもさ。まぁ、美味しそうに食べるのが可愛いんだけどさ」
「…女の趣味変わったか?」
「はむちゃんはそういうんじゃないよ。見てて楽しいし。ころころと動くのがいいじゃん」
「………」
お前が、そうやって執着を見せるのが珍しいっていうか初めてだよな?
とは口には出さないでおく。
「(っつーか、まぁ、あんな裏表ない表情ははじめて見たけどな。俺の顔にも無反応だし)」
とりあえず、見に来た甲斐はあったかもな。と、思わなくもない。
思わなくも無い、が。
「でさー。政輝君」
「ん?」
「はむちゃんにお菓子をあげるなら、この会に参加しような?」
「は?」
「被りすぎたらはるちゃんが飽きるだろ」
「……」
「皆で持ってくお菓子を事前に報告し合ってるんだよ。サイトはここな」
「なんだそのある意味過保護というか無駄な会は」
「やってみるとかなり楽しいよ」
「ある意味ライバルだと思ってる従兄弟が馬鹿になったと嘆くべきかふぬけたと怒るべきかどっちだ?」
「ははは。じゃ、入会手続きしておくからなー」
「じゃないだろっ!!」
「ナオ? 入会者一人追加ー。あぁ、この間の俺の従兄弟」
「だからっっ」
「ほれ、これパスワード。じゃーな!」
「なんだこの既視感っ。会話をしてるはずなのにこの成り立ってない感じはさっきのあれと同じか? 皆同じになるのか??
政つ……って本当に俺を置いていくなよなっ!!!」