拍手地味な女の子《他校生なチート》
いつものように学校を出て、ぽてぽてと歩いていてたら。
「ほぇ?」
道端に、いかにも、とばかりに置かれたお皿とお菓子の山。
「こんないかにもって罠に引っかかるわけないのにねー」
ぽりぽり。
ぼりぼり。
シャクシャク。
ハグハグ。
ごっくん。
「あ……美味し」
学校でチート集団に貰うような高級な味がするなぁ。個別包装なのも気が利いてるし。こんな道端にそのまんま置かれてたら蟻が得するよねー。
折角だからもう一個。
そんな感じで手を伸ばした瞬間、何でか網の中に居たりとかねっ。
「あれ??」
アスファルトが遠いよねー。
何でだろ?
でも上見るのは怖いなぁ。なんて思いながらちら見して、はぁ、と溜息が漏れた。こんな事をやるのはうちのチート集団で見慣れてるけど、多分うちの学校のチートじゃないんだろうなぁ。
「まぁ、いっか。お菓子食べよっと」
副委員長から貰ったお菓子も鞄の中に入ってるんだよね!
それも食べながらのんびり見学でもしようかな。
と、お空の空中散歩を楽しもうとしてたら、くるんぐるんと網が引き上げられて、ヘリの中へと移動させられた。
ここからでも景色は見えるけど、さっきよりも眺めが悪いんだよね。
まったく。
眺めが悪くなった分を補うようにして、前に座るのは明らかに他校生の多分チート。この雰囲気は間違いないと思うけど。
……最近、チートに縁があるよね。
やっぱあの学校かなぁ。
平々凡々に生きててチートに縁なんてないはずなのに。
そんな事を考えてたら、目の前のチートが口を開いた。
「あいつ等が可愛がってるっていうからどんなのかと思ったら……これか」
いかにも残念です、と言わんばかりの口調。
「………」
うん。お菓子食べよ。
無視して食べだしたら、目の前の他校生チートが邪魔しようとしたから、反射的にかぱーんと噛み付いてみた。
うーん。マズイ。
まったく。折角お菓子を食べてたのに邪魔しないでほしいよねー。
「お、お、お前! 今噛み付いただろ!?」
「………」
もぐもぐ。
はぐはぐ。
「……邪魔すると噛むのか?」
「…………」
しゃくしゃく。
ごっくん。
食べてる時には喋らないよー。けど、目の前のチートは何か私からの返事を待ってるみたいだからね。もぐもぐとしながら一回だけ首を縦に振ってみた。
「…俺を見てもなんとも思わないのか? 俺より食い物か?」
「………」
何か目の前でチートが何か言ってるけど…。
もぐもぐ。
そんな当たり前の事を今更。
むぐむぐ。
「……食い物なのか。アイツの言った通りか。慣れてるのか。しかし動じなさ過ぎじゃないか。そんなに美味いのか?」
お菓子が減りそうな不穏な言葉を聞いた気がするけど。
仕方ない。美味しいものは皆で食べなきゃね。
副委員長から貰ったチョコレートの包みを解くと、それを目の前のチートの口の中へと放り込んだ。
抵抗しようとしたから、口を押さえつけてみた。
うん。じたばたしてるねー。
あ、ぎぶあっぷ。
程よく口の中で溶けたみたいだから手を離してみたら、他校生は私の所をジトッとした目で見てきた。
どうやら、口を押さえつけるのは駄目だったらしい。
「…おまっ、お前な! 女が口を押さえつけるか!? 窒息したらどうしてくれるっっ」
「大丈夫大丈ー夫。チートだし、鼻は押さえつけてないし」
「そういう問題じゃないだろ」
「そなの?」
「…………」
♪~♪~♪~。
「地獄の番犬が吠えるような音が聞こえてきた」
変わった着信音だね。
「………あいつか。どうしてわかったんだ。早いだろ。早すぎるだろ」
ぶつぶつと言いながら電話に出る他校生。
《まさてーるくーーーん。なぁにをやっちゃってるのかなーーー》
聞こえてくるのはお祭り部員の音楽。
「あー。従兄弟か。顔がそっくりだもんねー」
《はるちゃん。もう大丈夫だからねー》
「おー。委員長の声」
《怖かったでしょ?》
「お菓子美味しかったよー」
《……》
《リョウ。目を閉じろ》
「あれ…? 緑化委員のこ…」
声。とは言えなかった。引っ張られる感覚。あー、魔法だ。
お菓子は美味しかったんだけどねー。
引っ張られる感覚がなくなってから目を開けて見たら、目の前にはあの他校生じゃなくて副委員長の顔。
「ふふ。遼さんが楽しそうで良かった」
「空の散歩も出来たしねー。あの他校生は??」
「直雅さんと彦実さんと政継さんがお話をしておりますわ」
副委員長の視線を追って見ると、揺れてるヘリが……。
まぁ、いっか。