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拍手地味な女の子《はるちゃんと俺》





 はるちゃんとの出会いは、理事長に連れられて歩いてるはるちゃんを見た時かなー。妙にちっちゃいのが付いて回ってるなー、っていうのが感想。

 あぁ。出会いって言っても一方通行だけどねー。

 で、同じクラスでって当たり前だけどね。一クラスしかないし。

 理事長が初めて認めた異物に、俺は正直興味津々だったんだけど、いまいちきっかけが見つからなくてね。

 なんていうか。不思議になるぐらい何も出来ない子だったよねー。

 でもめげないっていうか、俺たちは皆が出来るのが当たり前だったから、ちょっとっていうかかなり新鮮だったかな。あぁ。あれがよく聞く一般人ってヤツなのかって。

 というか、皆が人目を惹く存在らしいけど、俺たちにとっちゃ当たり前だし。

 寧ろこの学校以外のヤツを見たって、顔なんて印象薄すぎて覚える気なんてないし。

 アイツ等と話して遊ぶほうが面白いしさ。

 今度は何処の会社を立て直そっかー、なんて軽く話して遊んでた。


 ソレが当たり前だった俺の日常に入り込んだ非日常。


 観察は続けていたけど、ある日副委員長が動いたのが見事なきっかけだったのかな。


 副委員長も観察を続けてて、偶々持っていた個別包装のお菓子を隣を通ったついでにあげてた。別にただ単にこれでどんな反応を返すんだろうなってその程度。

 でも、はるちゃんは頬張りながら美味しー…と、同じ年には見えない満面の笑みを浮かべ、副委員長の手ずからでチョコを頬張った。


 ……あんな裏表なんて存在しない笑顔初めて見た。


 結構吃驚?


 一般人ってのは声をかけてくるから知ってたんだけど、あんな一般人がいるのかって衝撃だったね。

 しかも観察を続けてたら、見事に裏表はないし人を妬む事もしないし、どんどんと突っ込んでいくし。

 危なっかしい…。


 カツアゲをしている不良に、天誅ーーっ。なんて叫びながら頭突きを食らわしている所を見た時なんて、流石の俺も倒れるかと思ったよねー。

 あの何処が平凡なんだか。

 乾いた笑いが出たけど、そんな笑いも初体験。

 その時思った事も始めてで、俺たちはというと顔を見合わせて、この街の不良駆除に入ったね。

 俺たちが見ていない所でこんな事があったらたまったもんじゃないし。

 心臓に悪い、っていう言葉の意味もわかったし。


 なんていうか。

 はるちゃんは俺の人生にとってはスパイスみたいなもので、何も出来ないのに目が離せないっていうか、離すのが勿体無いっていうか。

 目を離した隙を見計らうように、溝にはまってた時は衝撃だったよ。

 この高さで頭出ないんだー。

 そういやはるちゃんってホント小さいよねー。

 それにさ、はるちゃんだけが自宅通学なんだよね。

 俺たちは別邸を建ててもらってそこを寮にして、皆で自由に暮らしちゃってるけど、はるちゃんだけが自宅から通ってる。

 なんだろうな。

 それってかなり心配?

 溝にはまっちゃうような子が、一年間普通に通えただけでも奇跡なんじゃない?




「ねーねー。はるちゃんをさー。女子寮に住ませられないかなー?」


 そんな提案をしてみたけど、副委員長からは笑われた。

 既に提案済みの断られ済みだってさ。

 お菓子では簡単につれるのに、何でか他の利ってのってこないんだよねー。

 なんでだろ。

 観察し甲斐があるけどねぇ…でもさぁ。



「はーるちゃん。いっその事、一緒に暮らしちゃおっかー?」


 そうすれば24時間余す事無く観察できるし。

 危ない目にも遭わせない。

 良い考えじゃないかなーって思うんだけど、何でかはるちゃんは脱兎の如く逃げ出した。

 あれ?

 こんな時は速いんだー。

 へぇ、はじめて見た。



「…委員長。あまりリョウをからかうな。免疫がなさそうだ」


「あははー。違うよ。適当に遊ぶ相手じゃなくて、骨の髄まで観察したいんだって」


「りーくんのお嫁さんをお前にやるわけないだろ」


「あははははー。それ、最近中身が伴ってないよねー」


「……お前もな」


「面白いよねー。何も出来ない子なのに、はるちゃんがいるだけで俺たちの会話も変わっちゃう。ホント面白いよ」


「…………」


 無言の圧力をかけられたけど、軽く流しながら俺ははるちゃん用のお菓子を持って、はるちゃんを探すために教室を出る。

 これを持っておかないと捕まらないんだよね。

 最近のはるちゃんって俺に免疫が出来たのかどうなのか、俺が探しても見つからなくなってきたっていうか。見つけても逃げるっていうか。あの小さい身体を利用して隙間に入り込んで通り抜けて行くんだよね。

 だからこれ。

 お菓子をちらつかせれば、勿体無いしね!なんて言いながら食べに来る。



「はーるちゃん。一緒におやつ食べよー」


 中庭で声をかけてみればゴソゴソと音がする。

 やっぱ中庭だったか。

 今日は中庭かなって感じがしたんだよねー。


「毎回おやつにつられると思ったら大間違いだからね!!」


 ビシィっと指を突きつけるんだけど、説得力の欠片もないよねー。だって視線は袋に注がれてるし。


 でも、ま……これで近付いてきてくれるなら安いもんだけどねー。

 追いかけっこも楽しいけど、やっぱ近くで観察してたいしね。




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