拍手幻月《バレンタインデー・ホワイトデー》
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《バレンタイン・デー》
「はい、バレンタインデーのチョコレート」
「バレンタイン?」
「そう。バレンタイン」
「だから何だ?」
「私のいた世界だとね、この日にお世話になった人にチョコをあげるのですよ。義理や本命や友チョコや色々?
とりあえずゼノにはお世話になってるっぽいから、一応チョコ」
「あまり感謝されてる気もしないけどな」
「そうそう。一ヵ月後にはホワイトデーって言ってね。バレンタインでーのお礼を上げる日なのね」
「押し売りか?」
「女の子の気持ちが押し売りかい。なんて無粋な男の子。もてないぞー」
「アンタしか知らないだろう。こんな面妖な行事は」
「甘い! チョコよりも甘い!」
「チョコもビターがあるだろ?」
「蕩けそうな程甘いわ!」
「人の話しを聞け!」
「既に広め済みだから、ゼノは色々と貰うと思うよー」
「はぁ?」
「この世界に産まれて21年。私が何もしなかったとでも?」
「胸を張って言う事か?」
「というわけで、お返しガンバ! 男性は三倍返しっていうのが相場だからね!」
「ぼったくりか!?」
「女の子の気持ちだって」
「暴れていいか?」
「口座から引くけど、いい?」
「………なんだ? 俺が苛められる日なのか? っと待て。アンタのその後ろにあるものは何だ??」
「友達から貰ったの。私もお返しが大変なんだけどね。気持ちだからやっぱ嬉しいよね」
「……あっちに置いてあるのが俺のだよな? 何で俺より多い!?」
「大丈夫大丈夫。もらえない男の子もいるから、ゼノは多いって」
「それはフォローか?」
「ううん。ただの事実」
《ホワイト・デー》
「バレンタインも大量だったけど、ホワイトデーも大量だね。お返しが」
「お前には負けるけどな」
「そう? 最終的にゼノと同じぐらいじゃない?」
「……俺宛のは、多少は廃棄があったからな」
「廃棄?? 何で???」
「色々だ(お前に近づくなとか、呪いがかけられてたなんて言えるか)」
「まぁ、理由があるとは思うんだけど」
「当たり前だ」
「ふぅん。じゃ、私は配りに行ってくるね」
「待て。俺も行く。どうせ配り先は被ってるんだ。一緒に回っても同じだろ?」
「そう?? ゼノってよく人に呼び止められるでしょ。時間かかるんじゃない?」
「(お前関連でな)…大丈夫だ」
「あれ? 猩々緋の色がゼノを取り巻いて……」
「全開はしてない」
「そういう問題じゃないでしょ」
「ならお前も使って相殺しろ」
「だから根本的に違うよね。寧ろお返し配るのに、何でそんな物騒なモノを纏わなきゃ駄目なのか意味がわかりません!」
「意味がわからなくてもヤレ」
「嫌です」
「わかった」
「あれ? あっさり」
「やらなくてもいいから、俺がこれを使う事を黙認しろ」
「…ゼノに戦闘態勢に入られてたら、先生が泣いちゃうよ?」
「泣かせとけ」
「ゼノって俺様だよね。何で?」
「目的があるからな」
「目的?」
「あぁ(…蹴散らす役目がな)」
「穏便に済むの?」
「勿論(…近づかないから実力行使に出る必要は無いしな)」
「ふぅん。胡散臭い」
「なら、お前が隣りを歩けばいいだけの話しだろ」
「そうなんだけどね。でも、学園で魔力を迸らせる護り人って初なんじゃない?」
「半壊させてもいいんだけどな」
「面倒からそれは勘弁して」
「面倒じゃなければいいのか?」
「駄目です。地球はそういうのには無縁だったんだから、そういう物騒な事言わないの。驚いちゃうでしょ」
「気が向いたらな」
「はいはい。じゃ、配りに行こっか」
「あぁ(……いつ渡すか。すっかりタイミングを見誤ったな)」
《おまけ》
「どうしたの?」
「…一通り、礼は終わったな」
「一緒に回ったでしょ?」
「あぁ」
「じゃ、帰ろー。お父さんが早く帰ってくるって言ってたし」
「あの舅め」
「何か言った??」
「いや、何一つ言ってない」
「ふぅん。ゼノって相変わらず変なの」
「お前には負けるだろ」
「そう? 最近独り言多いゼノには負けるよ」
「……そんなに多いか?」
「うん」
「あー…」
「どうしたの?」
「俺からのお返しは、いらないのか?」
「ずっとそれ気にしたの?」
「………」
「別にいいのに。ゼノからはいつもお世話になってるから、気にしなくていいよ」
「少しは気にしろよ」
「そなの?」
「あぁ」
「つまり?」
「俺からもあるって事だろ!」
「短気」
「照れてるだけだろうが!」
「自分で言っちゃうんだ」
「………」
「ありがとね」
「あぁ」
「開けてもいい?」
「部屋で開けてくれ…」