拍手aura《もしもシリーズ①・②》
auraもしもシリーズ① 凛の性別がばれていたらの甘い感じのお話し・フェルディナント編。
スン、と鼻をならせば、下から漂う良い匂いが体中を満たしてくれる。あぁ、リーンだな。自分だって疲れてるのに、いつも俺のご飯を作ってくれる。
俺がリーンの作る料理が大好きだってわかってるから、いつだってリーンは笑顔で作ってくれるんだ。
「リーン」
俺が近付くのだってリーンは分かっているだろうけど、俺が声をかけるまで振り向かずに待っていてくれてる。
そっと抱き寄せて、耳元に唇を寄せて囁くようにリーンの名を呼ぶ。
くすぐったいのか、少しだけ肩を微かに動かすが、俺の腕の中にいるリーンは逃げようがない。
元々逃がすつもりなんてないけれど。
「リーン。今日は、何?」
「手作りパンと野菜のスープ。後は軽く炒めたウィンナーや野菜とドレッシングにマヨネーズ。挟んで食べれるよ…って、くすぐったいよ」
俺が耳元から顔を離さないものだから、話す言葉は全て耳を擽るように感じるらしい。その反応が楽しくて、可愛くて好きなんだって言えばきっと、照れ隠しで無理やり離れるんだろうな。
だからそれは言わずに、曖昧に呟きながら両腕に力を込める。
「…作れないよ?」
「もう終わりだろ。後はスープをもう少し煮込むだけ。少し――こうさせといてくれ」
でないと夢だと思いそうだ、と言えば、リーンからの抵抗はなくなる。
リーンの性別がわかった後の俺たちの火花は半端なものじゃなかった。恩恵、加護、竜還り、先祖還りが入り乱れての争奪戦。ひょっとしてシイリノエイが破滅するんじゃないだろうかと思う程、自然が荒れた。
リーンが俺を選んでくれて、それはあっさりとなりを潜めたわけだけど。
とは言っても油断なんかしないけどな。
アイツ等はまだ諦めてなんかない。
俺の腕の中からリーンを掻っ攫う気だ。きっと、生涯諦めないんだろうと思うが、俺も渡さない。
こんなに愛してるリーンを手放したら、俺が生きていけない。
「リーン。好きだ。大好きだ」
「オレも好きだよ」
少し照れたように呟くリーンに、俺はというと理性を総動員させて色々と耐える羽目になった。
これも全てリーンが可愛すぎるからだけど、流石に抱き上げた瞬間ものすごい抵抗がくるので、抱きしめるだけに留めておいた。
リーンは未だに、かなりの照れ屋だ。
auraもしもシリーズ② 凛の性別がばれていたらの甘い感じのお話し・ヒース編。
相変わらず彼女は、勉強が好き。
手先が器用だから、物を作るのも好き。
つまり簡単に言ってしまえば、彼女が熱中すれば俺と触れ合う時間が減るって事。
陛下の私兵だから、騎士団や魔法師団に所属するよりも時間は自由だ。けれど不規則。いつ呼び出されるか分からない。
まぁ、俺やフェルなんかは騎士団や魔法師団に顔を出すから、時間はほぼ決まってるけど。
帰ってきてリーンの手作りの夕食を食べて、それぞれの事に取り掛かる。俺の仕事がある場合もあるし、彼女が勉強してたりする事もある。
そんな事をやっていると、殆どリーンに触れずに過ごすなんて事も珍しくない。
触りたい。
抱きしめたい。
なのに、周りから押し付けられた書類はそれを許さない。
放り投げたいけど、放り投げればリーンは実家──何故かフェルの家──に帰るという誓約書にサインを書かされた。
俺をそんな目に遭わせた事を死ぬほど後悔させてやる。
まぁ、それは置いといて。
普段だったら彼女の意志を尊重して、リーンの邪魔をするような真似はしないんだけど……今日は俺の我慢がききそうにない。
ソファーに腰掛けながら、石に模様をいれているリーンの手から彫刻等を奪い取る。
「ヒース??」
珍しいとばかりな表情を浮かべられたけど、刃物は危ないからね。
リーンが怪我をしたら後悔してもしきれない。
「リーン不足。俺に抱きしめられててよ」
「……つまり」
「つまりも何もじっとしてて。ほら、寄りかかって」
何か言いたげのリーンの身体を優しく抱きしめ、俺はその肩に顔を埋める。
久しぶりに堪能出来るリーンの身体と匂い。
美味しそうだなぁ、なんて思うけど。
「ヒース」
タイミングよくリーンが俺の名を呼ぶ。
そうだね。 明日は早いんだっけ。
陛下の野郎…。
「じゃあ、一緒に眠ろうよ。
何もしないから、俺の腕の中で眠ってよ」
「いつも眠ってないかな?」
「眠ってない。いつの間にかリーンは端に寄っちゃうしね」
「そうだっけ」
「そうだよ。だから、リーン不足で暴走しそうな俺を助けると思って、俺にリーンを堪能させてよ」
「本当に暴走しそうだね。フェルが可哀想だから、今日はもう横になろっか」
「そうそう。フェルの為フェルの為。じゃ、眠ろうか」
そう言って、迷わずリーンを抱き上げる。勿論抵抗はあったけど、口を塞ぐよって言ったら大人しくなった。
別に、騒いでも良かったんだけどね。