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「とぉ~きっ★」
次の日の食堂で美香が、斗基の背中に抱きつく。
「何?おごってくれんの?」
「ひどーい!私は斗基に会いに来ただけですぅ」
「俺には会いに来てくれないの?」
隣にいた聡介が半泣きで美香を見る。
「斗基一筋だもん」
斗基の腕をとって、とびきりの笑顔を振りむく。
「女はみんな斗基に甘すぎるよ!!」
「気を落とすなよ、聡介クン」
そう言いながら、斗基は聡介の肩に手を置いた。
さりげなく美香の腕をどかしながら。
美香はもちろんその動作に気付いていた。
その後も聡介をからかって美香を相手にはしなかった。
シュンとして、美香はその場から立ち去って行った。
チャーハンを口いっぱいに頬張りながら、斗基は携帯電話を操作する。
聡介はその姿を見て女とメールでもしてるんだなっと悔しい思いをしながら、味噌汁をすすった。
「今日ってサークル行かなきゃだめ?」
「デート?」
「デートってほどじゃ。カラオケ行こうって誘われてさ」
「いちごちゃんの劇のビデオ見るんじゃなかったっけ?」
それを聞くとすぐさま携帯電話に向かう。
「うん、行かないとな」
「美香ちゃんが聞いたら泣くよ。この会話聞いていたら」
ゴホゴホと斗基がむせ、携帯電話を危うく落としそうになる。
「かわいそうじゃないか。あんなあからさまに距離置いたら。美香ちゃんの何が気に食わないの?そりゃ・・・あのまつ毛は本物じゃないと思うけど」
「別に化粧の濃さの問題じゃないって」
息を整えて、涙目の目をこする。
「だったら優しくしてあげなよ。女の子みんなに優しいくせに」
「美香にだって優しくしてるよ。」
気のない素振りをしてまたチャーハンを口に運んだ。
本当は聡介の言う通りだった。
美香にだけは距離を置いていた。
他の女の子の場合は、斗基に接するのはあくまでも仲のいい友達、それか遊び相手。
しかし、美香だけは本当に斗基に惹かれて近寄ってくる。
それを斗基自身・・・いやサークルの部員はみんな気付いている事だ。
自分の事を本気で愛そうとしている人を斗基は遠ざけたかった。
美香の事が嫌いなわけではない・・・だが、その愛があるために距離をとってしまうのだ。
自分は愛される資格なんてないのだと言い聞かせながら。