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焼けた食パンにマーガリンをつけながらテレビをつける。
寝室のドアが開いた音がしたので斗基は振りむかず言った。
「牛乳とって」
「ねぇー僕の朝ごはんはぁ~?」
「食パン勝手に焼け。牛乳とって」
汰基はしばらくすると、ドンッと牛乳パックのみテーブルに置いた。
「コップは?」
「じゃあトーストにして♪」
高校3年生になったにも関わらずいつまでも変わらず我儘で子どもっぽい弟。
兄とは違う、直感で動くタイプの弟。
そんな自由さが兄には羨ましかった。
「あぁーこのお天気お姉さんタイプ♪」
斗基がトースターから食パンを取り出し皿に乗せ、汰基に渡す。
ふとテレビを見上げると、ロングヘアーの誰が見ても綺麗なアナウンサーが天気を読みあげている。
“東京は、傘を持っていく必要はありませんー・・・”
「お前って昔っからこういう美人系が好きな」
「とっきーはこういうのタイプじゃないよね」
「まぁー・・・美人だとは思うけど」
「恋敵にならなくて済むね」
―確かに。
と心の底から思う斗基だった。
例えの話であっても同じ女性をとりあったとして果たして、この予想もつかない自由人から勝ち取れる自信が珍しく斗基にはなあkった。
「ジャムないの?」
「マーマレードならあるけど」
「えぇぇ・・・ストロベリージャムがいい」
「・・・・」
「あ!ごめん。マーガリンで我慢するよ。」
汰基は少し焦ったように笑ってトーストをかじる。
この家に“苺”のものがあるわけがないのだ。
「こっちに出てくれば、こーゆー美人なお姉さんと付き合えるかな」
何を馬鹿な事を言ってるんだろうと、斗基は普段なら思うのだがこの弟だけにはきっとその野望をやってのけるんだろうと何故か確信が持てる。
「あぁー・・・ってかお前さ、彼女いなかったっけ?」
「常にいるよ。何人か。」
「・・・・ひどいな」
「だって付き合ってって言うんだもん。とっきーは最初から遊びだからさぁー楽だよね」
「そのうち女に刺されるぞ、汰基。」
「きゃは★こわーい★」
その反応には無視をして、牛乳を一気に飲み干した。
「じゃあ俺行くから。鍵は持ってるよな?」
「うん。行ってらっしゃい♪」
しっぽを書き足せば完全に主人を待つ犬のような汰基。
それを見て斗基は女ならまだしもー・・・と思いながら、家を出た。
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去年までの斗基ならば撮影に遅刻など当たり前で、こんなに軽やかに家を出たことはない。
そして、サークルメンバーさえも思っているはずがなかった。
「どうして、斗基がいるの・・・?」
奈央子は目を丸くして呟いた。
「え?だって撮影でしょ?」
「いや、まぁ・・・そうなんだけど・・・」
斗基は気にせずに台本を読み始めた。
奈央子が釈然としない様で聡介の傍へと駆け寄る。
「ねぇ、何なの?」
「モーニングコールのおかげじゃないっすか?」
聡介がいちごの方へと目線をやりながらそう答えた。