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脚本が刷り終わり4人が山積みの紙束を持って部室へ戻るとそこには、蓮田と誠がいた。
「お疲れ~!差し入れ持ってきたわよ」
誠が両手にビニール袋を掲げた。
「あら、今日は何~?」
「この時期には、苺がありますから苺大福です」
蓮田がパックを開ける。
「いつも悪いわねぇ~。ご両親によろしくお伝えしといてね」
「いえいえ」
蓮田の家は、大学近くの老舗の和菓子屋だ。
よくこうやって差し入れを持ってくる。
「苺~・・・?」
斗基が顔をしかめる。
「斗基さんにはちゃんと普通の大福持ってきましたよ」
白い大福が2つ入っている小分けのパックを手渡す。
「さすがハス。分かってるな」
「去年持ってきて散々文句言われたんで忘れるわけないっすよ」
「ハスも苦労者だなぁー。俺と一緒」
聡介がポンポンと蓮田の肩に手を置く。
「斗基は苺も食べられないの?」
いちごが不思議そうに大福を頬張る斗基を見る。
「食べられなくもないけどー・・・なんつーかぁー・・」
「アレルギーみたいなもんだよな」
答えにくそうにしている斗基に聡介が助け舟を出す。
もちろんあくまでも自然に。
その会話に誰も違和感など持たなかった。
「珍しいわよねぇ」
誠がおいしそうに苺大福にかぶりつく。
「本当よね。あと何だっけ?」
奈央子が何気なく聞くとすぐに答えが返ってきた。
「キャベツとレタス」
「何で聡介が答えるんだよ!」
「あんたらやっぱりホ・・・」
「「それ以上言わないでください!違いますから!」」
「ハモりすぎ~」
いちごがケラケラ笑いだす。
「2人っていつから一緒にいるの?」
「一緒って・・・だから~奈央子さん?付き合ってるわけじゃ・・・」
斗基がげんなりする。
「中学からの仲っす」
「お前もリアルっぽく言うから勘違いされるんだろうが!」
いちごはますます笑う。
「じゃあ、聡介は斗基の中学時代の演技も見たことあるんだ?」
奈央子は真面目な質問とは裏腹にさっきからニヤニヤしっぱなしだ。
「ありますよ。昔から憎たらしいほど女にキャーキャー言われて・・・」
「まぁモテたのは認めるけどね」
「私が聞いてるのは演技のことなんですけど?」
「あぁ、昔は・・・・」
聡介の口が止まった。
斗基は聡介の頭に浮かんでることが手に取るように分かった。
―俺の中学時代の演技なんて、あいつ無しじゃ語れない。
2人の顔が一瞬曇ったのをいちごは見逃していなかった。
「何かあったの?」
遠慮がちに質問をする。
「いいや。思い出に浸ってただけ。昔はあんまり役にはまりきれてなかったよな?照れちゃって」
「うるせー!くっせー台詞言う役ばっかりだったからだろう。俺は清純な王子様は似合いません」
「確かに・・」
「おい、いちごチャン?納得するところじゃなくてよ?」
またいちごは笑いだした。
しかし、心の中では何かを確信していた。