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そして二日後サークルは再開された。

奈央子はたっぷり寝た様子で、髪も目もいつも通り生き生きしていた。



「じゃあ、さっきあらすじを説明した通りこの話でいこうと思います。いつも勝手に決めて悪いけど今回は私も最後だしわがままに付き合って」


メンバーは誰も愚痴を言わずに代わりに拍手で奈央子の意見に同意した。


「どうも、どうも。じゃあ明日までにこの脚本刷って来るから。斗基!脚本直した?」


珍しく1番後ろに座っている斗基を探して呼びかける。

斗基はいつも通りの笑顔で


「少し付け加えました。」

「去年のアリスのウサギのセリフよかったから、今年も期待してるわよ。」

「期待には応えられたと思いますよ」

「相変わらず自信たっぷりだことー」


笑いが起きる。

斗基も笑ってはいるが、いつものように調子よく笑えてはいなかった。


先ほどの言葉に嘘はなかった。

付け足した台詞は実際その立場にたったからこそ出た台詞。

死んだ者を思う気持ちの台詞。


「配役なんだけれどもー・・・私はこの話の女の子のイメージはいちごなのよね」


奈央子が1番前に座っていたいちごにウインクをする。


「えぇ?!私・・・ですか?」

「そう。入ったばかりとか言わないでよ。演技経験はあのジュリエットで分かってるんだから。一途に思う女の子の役、ぴったりなの」

「いや・・でもぉ・・・」


いちごは顔を赤くして手を横に振る。


「みんなはどう思う?」

「いいと思うよ。あの演技、それにいちごにピッタリな役じゃない。」


誠が率先して発言をする。

それに便乗するように


「俺もいいと思います!!」


蓮田も手を挙げて続けた。

他のメンバーもいいと思うと徒然に言った。

ただ、美香だけは表情を固くしていた。


「じゃあ、いちごお願いできないかしら?」

「・・・やれるだけやってみます」

「そんなやる気なさげなら困るんだけど?」


奈央子の眼鏡が光ったようにいちごは見えた。


「ハ、はい!やります!頑張ります!!」


ただならぬ恐怖を感じて立ち上がっていちごは叫ぶように言葉を放つ。


「それでよし♪あと、男の子の役なんだけどー・・・」


奈央子が斗基の方に目をやる。


「斗基でいいじゃん」


奈央子が言うよりも早く、副部長の野木―野木のぎ 勇太ゆうたが言う。

普段あまり口出ししない彼だからこそ発言力があった。


「勇ちゃんが言うなら、斗基に決定ね」


奈央子が満足気に斗基を見た。


「いや、斗基じゃなくても野木さんだっていいじゃないですか」


聡介がいきなり立ち上がり発言する。

全員が聡介を一斉に見る。

その視線が痛かったのか、顔を赤くして座る。


「俺がこんな小難しい役をやれると思うか?サークル前にも演技を経験してる斗基が最適だと思うけど?それに脚本読んでそれなりにキャラは掴めてると思うし。まぁ・・・最終的にはビジュアル的にも斗基だろう」


野木はそう言って斗基の方に振り返る。


「聡介は自分でやりたいのか~?わりぃな。俺がやるから」


やっと斗基が立ち上がって笑いが起きる。

その行動を聡介は苦笑いをして見つめる。

苦笑いをするしかなかった。

自分が発言したことで、逆に斗基がやらなければならない雰囲気を作ってしまったのだから。


「じゃあ、2人で決定ね★さて、私は今から脚本刷りに入りますかね。みんな解散!!」



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