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次の日、斗基が玄関で靴を履き替えているといちごと弥生と偶然出会う。
いちごはどうしようかと1人でパニック状態になっていた。
「どこ行くの?」
斗基はそれを横目で見ながら、あえて触れず2人に尋ねる。
「え・・あの・・・」
「次の講義まで時間あるから・・・本屋行くのよ。斗基は?授業?」
「そうそう。あ、じゃあジャンプ買ってきて★」
「20にもなって・・・」
「やっちゃんは冷たいんだから。いちご、買ってきて?」
2人があまりにも普通に会話をしているので、状況がうまく把握できないでいるいちご。
現に話しかけられても数秒経ってから反応した。
「・・・・え?あぁ。うん。分かった」
「サンキュー♪じゃ、よろしく~」
斗基は笑顔で、手を振って校内へと入って行った。
弥生も笑顔で手を振る。
いちごだけは、釈然としない顔で手を振る。
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「彼氏ができた?!」
本屋へ向かう途中で、いちごが「斗基とどうなの?」と聞いて返ってきたのは驚く事実。
「そう。だからふっきれたのよ。大丈夫。」
「どんな人なの?」
いちごの心臓は突然の事なのでうるさく鳴る。
「ほわぁーんとしてる人。今度紹介するよ」
「ありがとう。ほわぁーんかぁ・・・。斗基とは違うね」
「全然違う人だよ。今考えると斗基のどこが好きだったのかわかんないのよねぇ」
弥生は迷いのない目で前を見ていた。
その横顔がとてもきれいで、いちごは思わず見入ってしまった。
「いちごは、斗基のどこが好きなの?」
「え??!!!!」
「え?って・・・・・違うの?」
またしても心臓がうるさくなる。
「私は別にー・・・ただの良い友達というかぁー・・・」
「斗基の前だといちごよく笑うよね」
「それは面白いからでぇー・・・」
「面白いだけで笑ってるのならいつも笑ってるわよ。斗基の前では笑顔が女の子っぽいのよ」
「うぅ~・・・」
「フフ。違うって思ってるならそれでいいよ」
いちごより少し背の高い弥生が、いちごの頭を撫でる。
本当の苺のように真っ赤になってしまったいちごであった。
―斗基はいい友達だよ。
うん・・・そうだよ。