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      3


弥生―藤田ふじた 弥生やよいは、いちごと隣にいても少しも話す気配がなかった。

しぶしぶといった形で、聡介の前に座った。



重苦しい雰囲気が漂う中、聡介が話し始めた。


「学部一緒なんだっけ?2人って」


いちごは何故こんなにも重苦しい空気が流れているのかも分からず、とりあえず聡介の話に乗ることにした。


「うん!サークルで最初に知り合って話してみれば学部も一緒で・・・。すっかり仲良し・・・だよね?」


隣にいる弥生の様子を伺う。


「仲良しよ。わざわざ確認とらないでよ~」

「アハハ、だよねぇ~」


弥生は、初めてこの場で言葉を発したであろう。

いちごはひとまず安心する。

だが、先ほどの斗基の言葉が気になってしまう。



『弥生がいいならね』



―そういえば、2人が話してるのって見たことないなぁ・・・。

 何か私ってば悪いことしちゃったかなぁ・・・。

 あんな言い方しないもん、斗基。



そう思いながら斗基の方を見ると、割りばしでレタスを聡介のラーメンの丼ぶりに入れようとしていた所であった。


「と・・・」

「おい!」


いちごが言うよりも早く聡介が反応する。


「自分で食べろ」

「レタス嫌いなの?」


驚いた様子でいちごは斗基を見る。

バツの悪そうな顔をしながら斗基は


「レタスとキャベツがどうも・・・」

「たいして味はしねぇーだろうが!自分で食べろよ。ってかラーメンに入れるか?普通」

「だって、聡介クン好きだろう?レタス」

「お前がいつも俺の皿に置くから食べてるだけで、別に好きでも嫌いでもねぇよ」

「冷たいなぁー。」


いつもと立場が逆転していて、思わず笑いが漏れるいちご。

するとなかなか口を開かなかった弥生が


「私の所に置いていいわよ。・・・まったく。変わらないんだから」


斗基の方を見ずにそう言い放った。

遠慮なく~っと言ったように斗基は、レタスを弥生の皿の上に置いた。


「弥生も相変わらずレタス好きだね。」

「斗基が嫌いなものは食べさせるんだもん。好きにもなるわよ」

「ならレタスとキャベツは大好きじゃん。でもあとは、嫌いなものないけど」

「苺系のもの食べられないじゃない」

「ハハ。よく覚えてるね」


2人の会話をいちごと聡介は黙って聞き入っていた。

特にいちごは、2人が余所余所しいと思えば、近くなったりの繰り返しで疑問が募っていく。





―この2人には何があったんだろう?






学食を出て、いちごが弥生についに切り出した。


「斗基と何かあったの?」


数秒してから答えは返ってきた。


「どうして?」


弥生の目はとても穏やかに笑っていた。

いちごは、その大人っぽく落ち着いた弥生の雰囲気にすごく憧れていた。

自分は子どもっぽく、落ち着いてるなんてお世辞でも言ってもらえない。密かな彼女のコンプレックスだったりもする。

しかも弥生はあの、アリス役をした卯月の妹だと知ると更に憧れが増した。

言われてみれば、キリッとした目の辺りや鼻筋が似ているような気もする。

あまり似ていない姉妹だが、それぞれ違った魅力をもった理想的な姉妹だといちごは思った。


そんな弥生は誰にでも優しく接していたのに、斗基に対してだけは黙っていた。

一方斗基も、どんな女性にも軽く話しかけるのに弥生にはわざと距離を置くような話し方をしていた。

2人が過去に何かあったのは確実と言えるだろう。



「席、勝手に座っていい?なんて聞いちゃってごめんね」

「ううん、気にしてないよ。斗基とは随分話してなかったから、かえって感謝したいぐらいよ」


悲しそうに笑う弥生。

いちごはたまらない想いでいっぱいになった。


「私はね、斗基に振られたのよ。だからーまぁ・・あんな感じなんだよね」

「え?嘘??!」

「そんな嘘ついてどうすんのよ」



―斗基に振られた?!弥生が?!!!!




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