*第2部 1
もう桜は散り、緑の葉が青々と茂り始める。
まだ春の余韻に浸りたいのを逆なでするように・・・。
そんな桜の変わる表情を、斗基はわざと見ない振りをして大学へと足を運んだ。
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映画研究サークルは、ほとんど映画観賞をするサークルである。
しかい、新学期が始まると10月に控える学園祭の準備を始めなければならない。
準備というのは、毎年自作の映画を放映するためのものだ。
長年の歴史が基づき、大学生の味を出しつつなかなか本格的な映画を撮り続けて毎年好評となっている。
普段は週1なのだが、この時期からは来れる日はなるべく来る!が代々の決まりごと。
もちろん役者に抜擢された者は強制的に参加を促される。
その中でも特に奈央子は、1年生の頃から助監督や脚本を任されており忙しいことこの上ない。
それをやりがいとして感じている奈央子だから出来るのだけれども。
斗基はその奈央子の大変さを間近で見ているのにも(しかも毎年主役級の役を演じてるのにも)関わらず、バイト三昧。
聡介に毎日のように説教されて、引っ張られてくるのが例年。
それが今年は・・・
「アリスみたいじゃなく、完全オリジナルでもいいと思うんだよ。奈央子さんの才能があればさ」
率先してアイディアを出しているではないか。
奈央子を筆頭にそれぞれ目を丸くして斗基を見る。
いちごや新入生は何のことなく、真剣に斗基の話に耳を傾けている。
それを見て聡介は分かりやすい奴だと苦笑する。
「でも主人公は女の子の方がいいな。うん・・・その方がうけるよ」
それぞれの考えなど知る由もなく、斗基はどんどん話を広げていく。
「・・・斗基?」
「ん?何すか?」
「いや・・・ストーリーだけど―・・・私が全部オリジナルで考えろと?」
奈央子が恐る恐る尋ねる。
「奈央子さんやってくれないの?」
答えは案の定。
「・・・やっぱり?」
「俺も協力するからさ!!」
「斗基が協力~?!あのギリギリに追い詰められなければやらない斗基が?!こんなに早くから???雪でも降るんじゃないの・・・」
「俺は昔からやってましたよ」
「どこがだよ!」
「おい!聡介、なんか言ったか~?」
去年、無理やり引きずり込んだのを昨日のことのように思い出す聡介。
―やる気が出ている斗基なんて・・・高校生以来か?
斗基の生き生きとした姿に、嬉しさがこみ上げると同時に不安が心の隅で疼く。
聡介は、この矛盾さに顔を上げられないでいた。