12
「-・・・き。斗基?」
「え?」
「聞いてる?」
「あぁ、ごめん。聞いてたよ」
「私・・・ベラベラ話し過ぎたよね。ごめん」
「いや、全然?ほら、電車来たよ」
―いつの間に駅に着いていたんだ?
電車に座りこみ、空いている席に腰を下ろす。
いちごはまだ済まなそうな顔をしていた。
「別に聞いてなかったわけじゃないよ?」
「すごく遠くを見つめて違う事考えてたみたいだったから」
「そういうわけじゃないよ。いちごにも憧れている人がいたって事に驚いていたんだよ」
「どうして?」
「なんとなく。自分は自分。意志がしっかりしてそうだったから。」
「それは斗基もだよ」
「・・・・」
「ん?何?」
「いや・・・」
いちごは不思議そうに斗基を見つめる。
「初めてしっかりしてるなんて言われたから・・・拍子抜け?」
「嘘~!私はしっかりしているように見えてるけど」
「どこが?」
「昨日話した感じとか。アリスのウサギ役をやってるあたりとか・・・斗基でもそういうの気になるんだね。」
笑う仕草を見るとどうしても斗基は、目を細めてしまう。
いちごはほほ笑みながら続けた。
「斗基とは昔っからいる友達みたいな感覚だなぁ~。こういうの初めて」
「そ?それはいちごが話しやすいから俺もつられるんだよ」
「私は話すの大好きだもん。まぁ、斗基には負けるけど?」
「ハイ?」
「女の子と話すの得意なんでしょ~?誠が言ってた」
今度は、いたずらっ子のようなワクワクしたような顔で斗基を伺う。
斗基は苦笑しながら
「いや・・・それは・・ねぇ?」
「焦ってる、焦ってる~!あ。もう降りなきゃ。じゃあまたね!」
ついさっきまで話していた話題は、どうでもいいかのように颯爽といちごは降りて行った。
笑顔で窓越しに手を振り、いちごの背中は通り過ぎて行った。
1人になり、目をつぶると浮かんでくるのは先ほどのいちご。
無邪気に笑う姿
真剣な眼差し
人懐っこい性格
それだけでも斗基の胸が疼くのにとどめでも刺すつもりなのだろうか?
“一護 桜良さんって言うの”
―あれは反則だろう・・・。まさか桜良を知ってるなんて。
窓を見ると、夕焼けの空に桜の花びらが舞っていた。
まるで、忘れないでと呼びかけるように。
これで第1部は終了となります。
大分ながーい話となる予定ですがこれからもご愛読願えたらなと思います。
第1部は斗基の過去・そして今が少しずつ分かってきたという所ですかね。
斗基の成長をこれから少しずつ書いていきたいですね。
斗基くんよろしくね!!笑