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      10


いちごが来るとすぐにパイプ椅子を並べるメンバー達。


「じゃあ、さっそく始めます!」


奈央子の掛け声であっという間に上映会が始まる。



今日の斗基の隣は聡介だった。

いちごは、斗基達の右斜め前の方で、誠と蓮田に囲まれていた。



―あいつらさっそく・・。



「面白くなさそうな顔してる」


聡介が、斗基の心を読み取るように呟く。


「は?!もう始まるんだから静かにしてろよ!!」


図星をつかれたように取り乱す斗基。

その姿を温かい目で聡介は見ていた。







画面は、ステージを映し出す。

まだ幕は下がったままで、隅の方に“ロミオとジュリエット”と紙に書いてある。



しばらくすると幕が上がった。



真っ暗なステージにスポットライトが当たる。

そこには、ジュリエット風な格好をしたいちごが立っていた。

そして駆け寄るロミオ。一見男性だが、線の細さを見ると女性だろう。


【あぁ、ロミオ・・・どうしてあなたはロミオなの?】



―なんだ、これ?



ジュリエットの有名なセリフ。

誰もが1度は聞いたことがあるフレーズでもある。


斗基も、もちろん聞いた事があるし、本を読んだ事があるのでストーリーもセリフも知っていた。

いちごは次々とセリフを口にしていく。

どれも斗基にとっては、何度も読み返してセリフもほとんど頭に入っていうるはずなのに・・・

次の場面やセリフが出てこない。

先を考える余裕がないのだ。



―こんな切ないジュリエット見たことがない。



いちごが演じるジュリエットは、本当にロミオが愛しいと伝わってくる。

どこが感じられる切なさが胸を打つ。



―ステージに立った時の存在感・・・これは・・・



「桜良を見てるみたいだ。」


意識もなく漏らしていた。

聡介がその言葉を聞いて驚いて斗基を見たが、気付く様子はない。

ただひたすら、画面に見入っていた。










『斗基・・・どうしてあなたは斗基なの?』

『何の真似だよ』

『サクラリエット」

『はぁ??』

『ジュリエットの気持ちが今なら分かる気がする』

『え?』



―お前はいつも勝手だ。

 俺の心をかき乱す。



『人を愛するって事を知ったからよ・・・ねぇ斗基?』











ぼぉっと見入っているとあっという間に画面は消える。


すぐに奈央子が拍手をした。

それにつられて、一斉に拍手が起こる。

いちごは照れくさそうに立って、お辞儀をした。


「いやぁ、すごいわ!いちご!感動した!」


奈央子は半分泣きながらいちごの手を掴んだ。


「ヒロインは決まったも同然だわ」


誠がにこにこといちごを見上げる。


「ちょっと!気が早いよぉ」


赤い顔をしながら誠をたたく振りをした。


「どんな映画にしようかわくわくしてきた!11月まであと約半年!頑張りましょう!!!」


オー!!!


奈央子の掲げた拳にみんなも拳を挙げる。

斗基だけが、出遅れて拳を掲げたのだった。



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