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プロローグ
春は憂欝だ。
これでもかってぐらい桜が咲き乱れる。
見たくもないのに何で桜並木を通らなければならない所に住んでしまったのだろう。
今年もまたピンクの桜の花びらが、頬をかする。
春は憂欝だ。
苺フェアーだとか、看板を出して苺の商品がワッと増える。
たまたまコンビニに寄ると、苺のお菓子が並んでいる。
それを通り過ぎても苺のショートケーキが並んでいる。
そりゃ苺なんて1年通して見られる果物の1つだが、春は桜といっぺんに見なくちゃならないから憂欝が重なるんだ。
ほんの2年前くらいなら春が来ると、虚しさや無念さ・・・心が苦しくなるばかりだった。
だが最近は、春が来ると・・・いや桜と苺を見ると愛しさが蘇ってくる。
ああ、なんで植物にときめかなきゃならんのだ。
やっぱり憂欝だ。
言い忘れてた・・・春にはろくな事が起こった試しがない。
憂欝だ・・・。