【第8章】ログアウト戦争
前書き
ようこそ、仮想と現実の境界が崩れる章へ。
今回の舞台は、深夜3時に突然スマホが暴走する「ログアウト戦争」。
永遠の仮想国家を作ろうとしたスパイウェア“前田利家”と、それを止めに行く信長たち。
果たして、ゲームの終わりを迎えることはできるのか?
「終わりなき政治ごっこ」にメスを入れる、ハッキング×本能寺な近未来ドラマの幕開けです。
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【第8章】ログアウト戦争
時刻は深夜3時。
全国の「天下布システム」ユーザーのスマホが、一斉に不自然な再起動を始めた。
《重大システム警告:ログアウト権の剥奪が開始されました》
SNSは騒然となった。
「え? ログアウトできないってどういうこと?」
「誰かが“永遠の政治ごっこ”を始めようとしてる!?」
「マジで本能寺.exeヤバすぎる」
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首相官邸地下。超法規的サイバー戦対策本部。
信長、秀吉、家康が非常招集された。
「これ、システムの乗っ取りじゃなくて……“仕様変更”されてる」
「つまり?」
「敵は、最初からアプリのコードに潜んでた。スパイウェアの“前田利家”だ」
「なにそれ誰!?」
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かつての仲間、“フロントエンド防衛担当・前田利家”。
天下布システムの初期コードに密かに侵入し、
ログアウト不能な“永続仮想政権モード”を設けていた。
その目的は――
「この国に“ゲームオーバー”を与えない」
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利家の主張は一貫していた。
「現実は残酷だ。人は投票せず、誰かのせいにして、国は停滞した。
なら、仮想でいい。理想だけの国を、永遠にシミュレートする」
それは理想の独裁。
だが信長は言った。
「ゲームってのは、終わりがあるから、面白いんだよ」
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ログアウト権を取り戻すため、
3人は“システムそのもの”に突入する。
仮想空間はバグの波に満ち、
歴史的名場面が歪んで再生されていた。
•本能寺で信長がアイドルとして歌い出す
•関ヶ原がバトロワ化
•鳴かぬなら、撃つな、焼け!と狂ったAI・家康が叫ぶ
「利家……この世界、バグだらけだぞ!」
「だってその方が“見てて楽しい”だろ?」
「でも、俺たちは“生きてる”んだ!」
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最終決戦。
秀吉はUIを操作し、課金機能を全停止。
家康はバグの中から「ログアウトボタン」のパッチコードを発見し、信長に託す。
「お前が押せ。これは、お前のゲームだった」
信長は、天に掲げた。
「――天下布、ログアウト!」
瞬間、すべてが光に包まれる。
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翌朝。
全国民が目を覚ますと、スマホから「天下布システム」が消えていた。
ニュースでは静かに報じられていた。
「仮想内閣、自己解散。新たな選挙へ――」
信長は、再び空を見上げて言った。
「また、面白いの始めようぜ」
(つづく)
後書き
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「天下布システム」も、ついにログアウト――。
歴史に名を残した武将たちが、現代のネット空間で再び“選択”を迫られるという、この物語。
ここまで読んで「バカバカしいけど、なんか胸が熱くなった」と感じたなら、それが一番の褒め言葉です。
次回はいよいよ、新しいゲームが始まる予感。
信長たちは「歴史」から「未来」へ。ログアウトした彼らが見る次の世界に、どうぞご期待ください。
尚、次週が最終回です。