【第5章】御前会議は戦場だ
【前書き】「名前」という呪い、あるいは祝福
この物語は、“名前”に翻弄された三人の男の話です。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。
歴史の教科書で知らぬ者はいない戦国の三英傑――
……ではなく、現代にそのままの名前で生まれてしまった三人の、ちょっと情けなくて、だけどやたらと燃える話です。
大人になると、名前というものはアイデンティティになり、呪いにもなります。
誰かと同じ名前だった、というだけで笑われたり、期待されたり、勝手にドラマを背負わされたり。
そしてそれに抗うように、あるいは開き直るように、人は“物語”を始めるのかもしれません。
この物語は、SNSから始まり、牛丼屋を経て、空港で捕まり、内閣総理大臣になり、アプリを開発し、そして世界を“ちょっとだけ”変える話です。
アホみたいにバカバカしいけれど、本人たちはいたって本気です。
あなたがもし、今の世界にちょっとだけ“退屈”を感じているなら。
あるいは、“名ばかりの肩書き”にうんざりしているなら。
少しだけ、彼らと一緒に戦国の風を感じてみてください。
だって――
“信長”って名前、燃やさずにはいられないでしょ?
【第5章】御前会議は戦場だ
「おはようございます、総理!」
永田町、総理大臣執務室。
高級な革張りの椅子に、足をドカンと乗せていたのは――
織田信長、令和の新総理である。
「……なあ、これ、座り心地悪くね?」
「史実に倣って、火縄銃用の木箱を椅子にリメイクしました!」
「その“史実”いらねぇよ!」
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官僚たちが揃った御前会議は、まさに“戦場”だった。
「次の予算案ですが、現行の財政構造に則って……」
「いらん。天下布武予算にしろ」
「て、天下布武予算とは……?」
「戦国風の学校を作る。生徒は槍持って登校。テストは合戦形式。
教師は“軍師”って呼ぶ」
「……あの、それは教育基本法に……」
「燃やすぞ?」
「ご検討いただきありがとうございます!」
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秀吉は内閣官房副長官として、メディア対策を担当していた。
「NHKの新番組、全部“歴史”カテゴリで統一しようぜ! 連続テレビ小説『農民』!」
「民放では“合戦リアリティーショー”とかどう?」
「“相席本能寺”とか、“徹子の部下”とか、“報道関ヶ原”とかもいける!」
国民の半数が、“面白ければ政治OK”という謎の境地に達していった。
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一方の家康は、財務・法務・厚労すべてを“寝ながら”取り仕切っていた。
「全部、寝ながら根回し済みです。人事も、派閥も、法案も、予算も」
「いや、お前が一番“戦国”してるよ……」
「本能寺の変を防ぐには、最初から信長の部下じゃなく“上司”になっておくのがベストですから」
「地味に怖い発想すんな!」
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だが、そんな中。
政界最古の謎組織――**“院政クラブ”**が動き出した。
そのリーダーは、元老・源氏山征四郎(94歳)。
「信長を止めろ。あやつは火をつけすぎる……!」
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夜。信長の執務室に、1通のFAXが届く。
《本能寺で待つ》
「マジかよ……また燃えるのかよ……」
彼は静かに背広を脱ぎ、羽織袴に着替えた。
「よし、お前ら。合戦の時間だ」
⸻
御前会議は、戦場だ。
言葉が刀。議事録が戦史。書類が飛び交い、ハンコが砲撃される。
だが、信長は知っていた。
この国の“面白さ”を、本気で変えるには――
戦うしかないのだ。
(つづく)
もう一つ小説有るんで、面白かったら読んでみてください。中高生には少し難しいかも知れませんが。笑い路線も増えたので読みやすくなると思います。
1作目も、改編しました。恋愛あり、アクション有りの壮大なSF神話です。目指せファイブスター!目指せナウシカ!
此方の戦国武将同姓同名は最初からお笑い路線です。
読んでくれてありがとうございました。