【第3章】戦国リターンズ
【前書き】「名前」という呪い、あるいは祝福
この物語は、“名前”に翻弄された三人の男の話です。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。
歴史の教科書で知らぬ者はいない戦国の三英傑――
……ではなく、現代にそのままの名前で生まれてしまった三人の、ちょっと情けなくて、だけどやたらと燃える話です。
大人になると、名前というものはアイデンティティになり、呪いにもなります。
誰かと同じ名前だった、というだけで笑われたり、期待されたり、勝手にドラマを背負わされたり。
そしてそれに抗うように、あるいは開き直るように、人は“物語”を始めるのかもしれません。
この物語は、SNSから始まり、牛丼屋を経て、空港で捕まり、内閣総理大臣になり、アプリを開発し、そして世界を“ちょっとだけ”変える話です。
アホみたいにバカバカしいけれど、本人たちはいたって本気です。
あなたがもし、今の世界にちょっとだけ“退屈”を感じているなら。
あるいは、“名ばかりの肩書き”にうんざりしているなら。
少しだけ、彼らと一緒に戦国の風を感じてみてください。
だって――
“信長”って名前、燃やさずにはいられないでしょ?
帰国して最初にしたことは、回転寿司だった。
「はぁ……シャリってこんなに美味かったか……」
信長が涙を流しながら、えんがわを頬張っていた。
「日本に生まれてよかった」と呟く秀吉に、家康は醤油を2滴だけ垂らして言った。
「……だが我々はまだ、敗者だ」
「重いな、その一言」
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空港での“銃騒動”の結果、彼らは「軽犯罪」扱いとなり、ニュースに少しだけ名前が載った。
《信長・秀吉・家康、トンチキな夢で渡米》
ネットでは一瞬だけバズったが、数日後には忘れられた。
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彼らは都内のボロアパートに転がり込んで、ひとつの部屋をシェアするようになった。
「今日からこの部屋が、我らの“本能寺”だ」
「だから燃やすのやめてくれ」
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数週間が過ぎたころ、家康が奇妙な提案を持ち出した。
「なあ、お前ら、“戦国”やらないか」
「は?」
「本当に、俺たちが“信長”“秀吉”“家康”として、もう一度天下を目指すんだよ。
ただし、現代風に」
「現代風……? 信長ドットJP とか作るのか?」
「いや、YouTubeやる」
「マジか」
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翌日から、彼らは“歴史系YouTuber”として活動を始めた。
最初の動画タイトルはこうだった:
【検証】本能寺の変ってマジで燃えたの? ガチで燃やしてみた(※警察来た)
【実録】関ヶ原の戦いを東京ドームで再現してみたら怒られた
【対談】徳川家康(本人)×マックの店長、現代の戦国を語る
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結果は、まさかの大バズり。
3人の風貌とノリが「本当に本人っぽい」と話題になり、登録者数は1か月で30万人を突破した。
「まさか、“天下”がSNSの中にあるとはな」
「な、信長。日本って、攻め方次第で取れるんだよ」
「それなりに本気で、感動してる自分がいるわ……」
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だがその直後、1通の封筒が届いた。
差出人は――内閣府・特別歴史諮問機関。
中にあったのは、たった一文。
『君たちに、もう一度、国を治めてもらいたい』
信長、秀吉、家康、思わず声を揃えた。
「戦国、再興かよ!!!」
(つづく)
もう一つ小説有るんで、面白かったら読んでみてください。中高生には少し難しいかも知れませんが。笑い路線も増えたので読みやすくなると思います。
1作目も、改編しました。恋愛あり、アクション有りの壮大なSF神話です。目指せファイブスター!目指せナウシカ!
此方の戦国武将同姓同名は最初からお笑い路線です。
読んでくれてありがとうございました。