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夏の休みの前

来ていただいてありがとうございます。




「夏期試験成績発表」


こんな掲示物がクローバー学園の職員室前の廊下の壁に張り出された。たくさんの生徒達が見に来て、とても賑わっている。


「ちょっと!どういうことよ?どうしてお義姉様が成績上位者なの?それにどうしてアーチボルト殿下といつも親しげなのよ!」

アマンダが私の後ろから豊かな金色の髪を振り乱して食って掛かって来た。うわっ、いつもは綺麗な青い目が血走ってる……。

「成績上位者って……。恥ずかしいからそんなこと大声で言わないでよ……!」

私はアマンダの口を塞いで物陰へ連れて行った。


学園は学年ごとに50位までの成績の名前を試験ごとに掲示板に張り出すけど、私は今回48位……。ギリギリ名前が載る位の順位なの。すっごくすっごく頑張って今回初めて名前が載ったのよ。そのことはとても嬉しかったわ!試験が終わるまで我慢してたお菓子を祝杯で一箱開けちゃうくらいにはね!


でもね、学園で成績上位って言ったら、トップ10まで。せめて20位以内に入ってなければ上位なんて言えないのよ?恥ずかしすぎるわ。私はアマンダにそのことを小声で説明して聞かせた。



クローバー学園の一学年は大体100人位。一年生から三年生。15歳から18歳までの主に貴族の子女達が在籍してる。春期、夏期、秋期、冬期の四つの期間に分かれていて、それぞれに試験や、学習発表会などがある。今は夏の試験が終わったところだ。これから三十日ほどの休み期間に入り、その後の秋には学習発表会がある。



「あと、アーチボルト殿下はみんなに優しい方だから。私が特別親しいわけじゃないからね」

「でも!アーチボルト殿下は私には声もかけて下さらないわ!」

アマンダはすぐに反論してくる。そして声が大きい。キンキン頭に響く声なのよね。

「別にあなたが殿下と親しくする必要はないでしょう?殿下が私に声をかけて下さったのは私がエバーグリーン家を継ぐって思われていたからよ。今は違うけどね」


「……そうよ!お義姉様はもう私のエバーグリーン家とは関係のない人なんだから、引っ込んでいてよね!」

「……はぁ……。あなたと違って私には成績に将来の就職が掛かってるんだから、必死なの。余計なことしてる暇は無いのよ」

「そう……そうよね!お義姉様って惨めよね!お可哀そう!惨めが移っちゃうわ!もう話しかけてこないでよね!」

そう言うとアマンダは走り去っていったわ。

「廊下を走るのは校則違反でマナー違反よ?」

聞いちゃいないわね……。それに自分から話しかけてきたんだってば。何がしたいの?あの子。私はどっと疲れたわ……。


後で聞いた話によると、アマンダは一年生の掲示板の成績発表の張り紙に自分の名前が無かったことを教師に問い詰めたそうだ。つまり、アマンダの成績はそれ以下ということだ。あと、アーチボルト殿下に声をかけてもらおうと三年生の教室棟の近くでウロウロしていて、高位貴族のご令嬢達に注意をされたそう。数少ない友人からそのことを聞かされた私は顔から火が出そうな程恥ずかしかった。もう、いい加減にしてよね。


「あなたも大変なのね……」

友人の同情の視線が更に私の恥ずかしさを倍増させた。勉強に集中させて欲しい。どうしよう。このまま放っておいても大丈夫かしら……。







今日も裏庭のマーロの木は手のひらサイズの青々とした葉っぱを風に揺らしてる。うん、元気だわ。木精さん達も元気に飛び回ってる。


「ねえ、エルシェは夏の休みはどうするの?」

夏休みも近いある日、いつも通り裏庭のベンチで本を読んでいたら、アーチボルト殿下が声をかけてこられた。

「えっと、寮に残って勉強するか、叔母の家に戻るかまだ考え中です」

「ならさ、王家の領地の一つに友人達を招くから、君もおいでよ」

「せっかくですが……」

とんでもない。そんなところへ行けないわ。私は貴族でもないし、すでにエバーグリーン家の者でも無いのよ。ご令嬢様方に何て言われるか!考えただけでゾッとしちゃう。


けれど、アーチボルト殿下は引いてくれなかった。

「ユースティンも来るんだよ?残念がるだろうな」

なんでユースティン様が残念がるの?そんなことある訳ないじゃない。ユースティン様は私の中ではお友達だと勝手に思ってるけど、王子様なのよ?

「申し訳ありませんが、秋の学習発表の準備もありますので」

そうよ!何とか良い発表をして評価を上げて、奨学金の返済額を減額してもらえるようにしなくちゃなのよ。


「そうかぁ……、あそこには品種の違うマーロの林があって、君の家とは違う感じの光が見えることがあるんだよね。学習発表の参考になると思うんだよ?それに品種改良や樹液の商品化の研究施設も近くにあるから、そこで手伝ってくれれば給料も出せるんだけど」


「行きます!是非行かせていただきます!!」


「そう?良かった!」

殿下はお喜びになって帰って行かれたわ。


それにしても品種の違うマーロの木があるなんて!どんな木精さんがいるのかしら?どんな子なんだろう?早く会ってみたい。研究施設にも興味があるわ!どんな研究をしてるのかしら?学習発表の準備も出来るかもしれなくて、働くこともできるなんて最高じゃない!


……なんて飛びついた私って、何て現金なのかしら……。後ですごく反省したわ……。お声をかけていただけるのは嬉しいけど、まだ誤解は続いてるのね。早く誤解を解かなくちゃ駄目よね。


でもユースティン様にお休みの間も会えると思うとちょっと嬉しくなっちゃった。あの方は最近の私の癒しなの……。




ここまでお読みいただいてありがとうございます。

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